2023/3/16
「一般団信」に入れない病気とは?引受範囲が広い「ワイド団信」も解説!
監修者:竹下 昌成
団体信用生命保険(団信)とは、債権者である金融機関を保険契約者および保険金受取人とし、融資を受ける債務者(住宅ローン利用者)を被保険者とする保険契約です。住宅ローンの借入れを行う際は、基本的に団体信用生命保険への加入を求められます。
団体信用生命保険に加入する際は、引受保険会社に対して健康状態を告知する必要があります。持病がある方は「自分は団体信用生命保険に加入できないので、住宅ローンの借入れはできない」と諦めてしまうかもしれません。
しかし、一般的な団体信用生命保険(「一般団信」)よりも引受条件が広い「ワイド団信」なら、持病があっても加入できる可能性があります。
本記事では、住宅ローンの借入れを検討している方に向けて、一般団信に入れない病気を紹介したうえで、ワイド団信がどういったものかを解説するので、参考にしてください。
住宅ローンの「団体信用生命保険(団信)」とは?
住宅ローンを調べている方は、各種パンフレットやウェブサイトを閲覧したり、家族や友人や知人などと会話をしたりした際に、「団体信用生命保険(団信)」の単語を見聞きした経験があるのではないでしょうか。
単語を知っていても、意味を正確に理解していない場合もあるでしょう。まずは団体信用生命保険(団信)の概要と特徴を詳しく説明します。そのうえで、加入条件も紹介するので、申込みを行う前にしっかりと把握しておきましょう。
団体信用生命保険(団信)の概要と特徴
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの契約者に万が一の事態(「死亡する」「高度障害状態になる」など)が発生した場合に、生命保険会社が住宅ローン残高に相当する保険金を金融機関に支払う保険です。基本的に住宅ローンの借入れを行う際は、金融機関側から「団体信用生命保険への加入」を融資の条件として提示されます。
団体信用生命保険への加入は、金融機関側にとっては「契約者が死亡・高度障害状態になった際、貸し倒れリスクを回避できる」メリットがあり、契約者側にとっても「万が一のことが起こった際、家族に残債を背負わせずに済む」メリットがあると覚えておきましょう。
金融機関によっては、「死亡」や「高度障害状態」のケースだけではなく、さまざまな疾病(「がん」「心疾患」「脳疾患」など)になった場合にカバーするプランも取り扱われています。詳細は、各金融機関のウェブサイトを確認してください。
団体信用生命保険(団信)の加入条件
以下は、団体信用生命保険の加入条件です。
- 住宅ローンの「新規借入れ」または「借換え」を行うこと
- 健康状態(持病の有無、既往歴など)を基に、引受保険会社が加入を認めること
一般的に団体信用生命保険に加入できるのは、住宅ローンを新規に借入れるタイミング、または、借換えを行うタイミングに限られます。加入後のプラン変更はできません。住宅ローンの返済は長期間続くものなので、慎重にプランを選択しましょう。
なお、通常の生命保険と同様に、加入に際して健康状態を正確に告知しなければなりません。
借入金額が高額な場合や、保険会社が必要と判断した場合は、所定の健康診断結果証明書(原本)の提出を求められる可能性があります。誰でも加入できるわけではなく、健康状態によっては加入できない可能性がある点にご注意ください。
住宅ローンの団体信用生命保険(団信)に入れない可能性がある方とは?
上述したように、団体信用生命保険には誰でも加入できるわけではなく、健康上の理由で加入を断られる場合があります。
団体信用生命保険への加入の可否は引受保険会社によって判断されますが、審査基準は公開されていません。
具体的には、「申込時点で特定の病気にかかっている方」および「傷病歴がある方」に関しては、団体信用生命保険に加入できない可能性があると認識しておきましょう。
なお、保険会社は、保険金を支払う際に過去の通院歴や病歴などを詳細に調査します。万が一虚偽の告知をして加入をした場合、保険金の支払いが行われない場合があります。だからこそ、ありのままの健康状態を告知してください。
また、ご自身が団信に加入できるかどうか不安な場合は、住宅ローンの仮審査時点で団信の審査も同時に行ってもらえないか相談してみましょう。
住宅ローンの団体信用生命保険(団信)に入れない場合の対処方法
健康上の理由で団体信用生命保険に加入できない場合は、「一般団信ではなくワイド団信を利用する」などといった方法を検討しましょう。
一般団信ではなくワイド団信を利用する
金融機関によっては、一般的な団体信用生命保険(一般団信)よりも引受基準が緩和された「ワイド団信」を取り扱っている場合があります。
ワイド団信に関しても、一般団信と同様に、加入の可否は引受保険会社によって判断されるため、健康状態によっては加入を断られる可能性もありますが、一般団信を利用できない方はワイド団信の審査を受けるのもよいでしょう。
「ワイド団信」とは?
ワイド団信とは、一般団信よりも引受条件が緩和された団体信用生命保険です。
「現在、病気の治療をしている」「既往歴がある」事情を抱えている方でも加入しやすいように設計されています。
以下、「ワイド団信の特徴」を詳しく説明したうえで、「auじぶん銀行が取り扱っているワイド団信で引受実績がある病気」の例を紹介します。
ワイド団信の特徴
上述したように、ワイド団信は、一般団信よりも引受条件が緩和されているため、例えば、「高血圧症」「糖尿病」「肝機能障害」といった病気の方でも加入できる場合があります。
しかし、住宅ローン適用金利の上乗せが行われることにご注意ください。上乗せされる金利は金融機関によって異なりますが、auじぶん銀行の場合は適用金利に年0.3%上乗せされると覚えておきましょう。
auじぶん銀行が取り扱っているワイド団信で引受実績がある病気
下表に、auじぶん銀行が取り扱っているワイド団信で、過去に引受実績のある病気、状態の例をまとめました。ワイド団信への加入可否は総合的に判断され、病名だけで決定されるものではなく、以下の例はあくまで一例ですが参考にしてください。
カテゴリー | 病気・状態の例 |
---|---|
代謝異常による病気 | 糖尿病、脂質異常症(高脂血症・高コレステロール血症)、高尿酸血症、痛風など |
心臓・血圧に関連した病気 | 狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房細動、期外収縮、心臓弁膜症、高血圧症、血栓性静脈炎(静脈血栓症)など |
脳に関連した病気 | 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、脳動脈瘤(脳動脈解離)、てんかん、ギランバレー症候群など |
精神・神経に関連した病気 | うつ病・うつ状態、自律神経失調症、適応障害、不安障害、強迫性障害、パニック障害、睡眠障害、神経症など |
食道・胃・腸に関連した病気 | 潰瘍性大腸炎、クローン病、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸ポリープなど |
肝臓・胆道・膵臓に関連した病気 | 肝炎・ウイルス肝炎(B型肝炎・C型肝炎)、肝機能障害、脂肪肝、胆石、胆嚢ポリープなど |
腎臓・尿路に関連した病気 | 腎炎・糸球体腎炎、IgA腎症、腎臓機能障害、腎臓結石、蛋白尿、ネフローゼ症候群など |
呼吸器に関連した病気 | 喘息、気管支炎、肺炎、肺血栓塞栓症、結核、睡眠時無呼吸症候群など |
目・耳・鼻に関連した病気 | 緑内障、白内障、網膜剥離、難聴、副鼻腔炎など |
ホルモン・免疫異常による病気 | バセドウ病(甲状腺機能亢進症)、甲状腺機能低下症、リウマチ性疾患、橋本病、全身性エリテマトーデスなど |
血液・造血器に関連した病気・異常 | 貧血、赤血球・白血球の数値異常など |
女性特有の病気・状態 | 子宮筋腫、卵巣嚢腫、子宮頸部異形成、子宮内膜炎、妊娠など |
一般団信に入れない場合は、ワイド団信で住宅ローンを利用しよう
住宅ローンの借入れを行う際は、基本的に金融機関から団体信用生命保険への加入を求められます。「高血圧症」「糖尿病」「肝機能障害」といった病気の方は、団体信用生命保険に加入できない場合があるため、「住宅ローンを組むのを諦めて、一括で購入できる金額の貯蓄ができるまで待とう」と考える方もいるかもしれません。
しかし、「一般団信」に加入できなかったとしても、引受条件が緩和されている「ワイド団信」なら加入が認められる可能性があります。配偶者の健康状態に問題がなければ、配偶者が契約者となって住宅ローンを組むことも選択肢のひとつです。
住宅ローンおよび団体信用生命保険の申込みを行う際は、あらかじめ各金融機関のウェブサイトを閲覧し、内容を把握しておきましょう。そのうえで、不明な点がある場合は、一人で悩み続けるのではなく、金融機関や引受保険会社の窓口に相談してください。
なお、住宅ローンを繰上返済して完済すると団信も消滅します。繰上返済を考える場合はその時の年齢や健康状態も考慮して検討しましょう。