2025/02/14(2024/01/29 公開、2025/02/14 更新)
【最新】住宅ローン控除の適用要件は?税制改正での変更点も紹介
監修者:新井智美(ファイナンシャルプランナー)

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して住宅を購入し、一定の要件を満たすことで税額控除が受けられる制度です。当初2021年をもって終了する予定でしたが、その後の税制改正により、利用できる期間が2025年まで延長される予定になっています。
この記事では、住宅ローン控除の概要や利用できる期間、そして2024年からの制度改正をふまえた最新の内容を紹介します。
現在住宅ローン控除の適用を受けている方や、これから住宅ローンを利用した住宅の購入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- ※本記事の情報は2024年12月4日時点のものです
住宅ローン控除とは「住宅借入金等特別控除」のこと
住宅ローン控除とは、正式には「住宅借入金等特別控除」という制度で、「住宅ローン減税」と呼ばれる場合もあります。
ご自身が住むための家の購入に住宅ローンを利用している場合、要件を満たせば、年末時点の住宅ローンの借入残高に応じて計算した金額を、所得税から控除できます。所得税から控除しきれなかった分は、翌年の住民税からも控除できます。
当初は控除期間が入居した年から10年間、控除額は年末時点の借入残高の1%でしたが、2021年からは控除期間が最大13年間に延び、さらに入居時期が2022年1月1日以降の場合、控除額は借入残高の0.7%となりました。
借入限度額の引下げなど、2024年からはいくつかの内容変更が予定されていたため、変更点が気になる方も多いかもしれません。
活用することで家計の負担を軽減できる可能性のある制度ですから、これからマイホームを購入する予定のある方は、住宅ローン控除の最新情報をもらさず確認しておきましょう。
住宅ローン控除の適用要件
住宅ローン控除の主な適用要件は次の通りです。
- 購入する住宅が、ご自身が居住するためのものであること
- 住宅の引き渡しや工事終了から6カ月以内に入居し、そのまま居住していること
- 住宅の床面積が50平方メートル以上であること
- 住宅の床面積の2分の1以上が、ご自身の居住用であること
- 10年以上の返済期間がある住宅ローンを利用していること
- 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
- 現行の耐震基準を満たしていること(買取再販住宅や買取再販認定住宅などを除く)
住宅の床面積に関しては、40平方メートル以上50平方メートル未満でも、住宅ローン控除が適用されます。ただし、2024年12月31日までに工事を完了し、控除を受ける年の合計所得金額が1,000万円以下の場合に限られます。
2024年からの住宅ローン控除の内容
2024年の税制改正により、2024年1月から住宅ローン控除の内容が変更されています。
対象となる住宅の制限、子育て世帯や若者夫婦世帯への支援など、2024年からの改正点をそれぞれ詳しく確認しておきましょう。
省エネ基準に満たない新築・買取再販住宅は適用外
2024年1月以降、一定の省エネ基準を満たしていない「その他の住宅」に該当する新築住宅は、住宅ローン控除の適用外になりました。
「その他の住宅」とは省エネ基準を満たさない住宅のことで、長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅を除く、一般住宅を指します。
ただし、「その他の住宅」でも、以下のどちらかを証明する書類を提出すると、「借入限度額2,000万円・控除期間10年間」が適用されます。
①2023年12月31日までに建築確認済み
②2024年6月30日までに建築完了
ただし、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅の場合、①の証明書が必須となります。2024年6月30日までに工事が終わっていても、控除を受けられない可能性があるため注意しましょう。
中古住宅は、省エネ基準を満たす住宅は3,000万円、「その他の住宅」は2,000万円を上限に控除が適用されます。
子育て世帯・若者夫婦世帯の借入限度額は現状維持
子育て世帯・若者夫婦世帯の借入限度額の縮小は、2024年の税制改正の結果、縮小が見送られました。2024年も、引き続き、2023年と同じ借入限度額が適用されています。
対象となるのは、12月31日までに住宅へ入居した次の世帯です。
①19歳未満の子どもがいる世帯
②夫婦のうちいずれかが40歳未満の世帯
一定の省エネ性能を満たさない「その他の住宅」は適用外です。
(新築住宅もしくは買取再販住宅)*1
住宅の環境性能 | 入居時期における借入限度額 | 控除期間 | |
---|---|---|---|
2022年・2023年 | 2024年・2025年 | ||
長期優良住宅・低炭素住宅 |
5,000万円 |
4,500万円 |
13年間 |
ZEH水準省エネ住宅 |
4,500万円 |
3,500万円 |
|
省エネ基準適合住宅 |
4,000万円 |
3,000万円 |
|
その他の住宅 |
3,000万円 |
0円 |
- *1 宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた居住用家屋。
その他の住宅とは、省エネ基準を満たさない住宅のことで、2024年以降に新築として建築確認を受けたものについては、住宅ローン控除の対象外になります。
また、2023年末までに新築として建築確認を受けた住宅に、2024年および2025年に居住する場合は、借入限度額が2,000万円、控除期間は10年になります。
(中古住宅)
住宅の環境性能 | 入居時期における借入限度額 | 控除期間 | |
---|---|---|---|
2022年・2023年 | 2024年・2025年 | ||
長期優良住宅・低炭素住宅 |
3,000万円 |
10年間 |
|
ZEH水準省エネ住宅 |
|||
省エネ基準適合住宅 |
|||
その他の住宅 |
2,000万円 |
新築住宅に対する床面積要件の緩和措置を延長
住宅の床面積の要件は「50平方メートル以上」ですが、住宅ローン控除の適用を受ける年の合計所得金額1,000万円以下の方が新築住宅を購入する場合は、「40平方メートル以上」に緩和されます。
床面積の緩和措置は2023年末までとされていましたが、2024年12月31日まで延長されました。
先述の通り、2024年12月31日までに工事を完了した住宅に限られますが、適用対象となる住宅が広がるため、控除を受けられる可能性が高まるでしょう。
控除額の計算方法
控除額の計算方法はいたってシンプルで、その年の年末の借入残高に0.7%を乗じた額です。
上で紹介した要件をすべて満たし、長期優良住宅を購入している場合で、年末の借入残高が2,300万円だった場合、「2,300万円×0.7%」=16万1,000円がその年の所得税額から減額されます。
具体的に以下のケースで計算してみましょう。
- 年収600万円(給与収入)
- 妻は専業主婦で中学生の子どもが1人
- 配偶者控除および基礎控除以外の控除はなし
- 社会保険料控除額は年収の15%として計算
まず、給与収入の場合、収入から給与所得控除額が差引かれます。年収600万円の給与所得控除額は164万円ですので、600万円から164万円を差引いた436万円が給与所得金額です。
そしてこれからさらに社会保険料控除(600万円×15%=90万円)、配偶者控除(38万円)、基礎控除(48万円)を引くと、436万円-(90万円+38万円+48万円)=260万円となり、これが課税所得金額になります。
260万円の課税所得金額に対する所得税額は、16万2,500円ですので、ここから住宅ローン控除額(16万1,000円)が控除され、最終的な所得税額は1,500円になります。
住民税からの控除
ただし、年収やその年の年末の借入残高によっては所得税から全額差引けない可能性もあります。
例えば上のケースで、年末の借入残高が3,000万円だった場合を考えてみましょう。年末の借入残高が3,000万円だった場合、その年の住宅ローン控除額は21万円です。
しかし、所得税額は16万2,500円ですので、住宅ローン控除額を所得税額から差引いても4万7,500円残ってしまいます。
その場合は、住民税から控除できますが、控除できる上限が決められている点に注意しましょう。住民税から控除できる額の上限は以下の2つのうち少ない金額です。
- 所得税額から差引けなかった金額
- 課税所得金額(所得税)の5%(ただし9万7,500円が上限)
そのため、上のケースで差引けなかった金額全額の4万7,500円が、翌年の住民税額から差引かれることになります。
年末の借入残高によっては住民税から差引いてもさらに残ってしまうケースもありますが、その部分については控除対象とはならず、翌年への繰り越しもできません。
住宅ローン控除を受けるには確定申告が必要
住宅ローン控除を受けるには、住宅へ入居した翌年に確定申告をする必要があります。会社に勤めていて普段は確定申告をしない方も、住宅ローン控除を受けるためには、初年度のみ確定申告が必須です。
ここでは、住宅ローン控除を受けるための手続きの流れやポイントを紹介します。
1年目:入居翌年に確定申告
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年分の所得や税金を税務署へ申告し、税金の過不足を還付・納税する手続きのことです。毎年2月16日~3月15日の期間に行われます。
住宅ローン控除の適用を受けるためには、住宅へ入居した翌年に確定申告を行わなければなりません。1年目は必要書類が多く、住宅の種類によってはさらに増える可能性もあるため、早めの準備が大切です。
住宅ローン控除:1年目の確定申告の主な必要書類
書類 |
入手先 |
源泉徴収票 |
勤め先 |
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 |
税務署や国税庁のウェブサイト |
住宅ローン借入金の年末残高等証明書 |
住宅ローンを契約している金融機関 |
登記事項証明書 |
法務局 |
不動産売買契約書(請負契約書)の写し |
不動産会社 |
本人確認書類のコピー |
自治体の役所など |
一定の耐震基準を満たす中古住宅の場合は、「耐震基準適合証明書」または「住宅性能評価書」の写しを提出します。認定長期優良住宅・低炭素住宅・省エネ住宅に該当するなら、「認定通知書」の写しまたは「性能証明書」などが必要です。いずれも不動産会社に発行を依頼しましょう。
確定申告は、税務署の窓口への書類の提出または郵送によって、またはパソコンやスマートフォンから電子申告で手続きできます。
2年目以降
会社員であれば、2年目以降、会社の年末調整で住宅ローン控除の手続きが可能です。
金融機関からの「住宅ローン借入金の年末残高等証明書」と、初年度の確定申告で税務署から交付された「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」を用意して、会社に提出しましょう。
自営業者や個人事業主は、会社員のように年末調整を受けないため、2年目以降も確定申告にて控除を受けます。
必要書類は「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と「住宅ローン借入金の年末残高等証明書」の2枚のみのため、1年目よりも書類をそろえる負担は減るでしょう。
他の控除との関係性
住宅ローン控除は、医療費控除や寄付金控除(ふるさと納税)、生命保険料控除など、他の所得控除と併用できます。
ふるさと納税でワンストップ特例制度を利用した場合のみ注意が必要です。ワンストップ特例制度は、会社員などが確定申告をせずにふるさと納税の寄付金控除を受けられる便利な制度です。しかし、確定申告をすると、ワンストップ特例制度の適用が無効になります。
会社員で住宅ローン控除を受ける予定があるなら、確定申告が必要な1年目はワンストップ特例制度を利用しない、または利用した場合は確定申告で寄付金控除を再申告する必要があることを覚えておきましょう。
住宅ローン控除を活用するには正しい知識と準備が大切
住宅ローン控除の内容は、毎年の税制改正で少しずつ変わっています。現状では省エネ住宅に該当すれば13年間の控除が受けられますが、今後の見直しによっては10年に戻る可能性も否定できません。
特に2024年からは省エネ住宅でなければ対象にならないことや、子育て支援による優遇策が設けられた点は大きな改正と言えるでしょう。
今後の市場の動向や、景気の動きによってはさらに内容が変わる可能性もありますので、今後の制度改正の動きに注目しておく必要がありそうです。