2023/3/16(2024/3/21更新)
働けなくなったら、住宅ローンの返済はどうなる?対処法や対策をご紹介!
監修者:新井 智美
住宅ローンの借入れを検討している方は、万が一働けなくなった場合の対処法や、今からできる対策を把握しておくほうがよいでしょう。
誰でも病気やケガなどで働けなくなる可能性があります。若い時期に健康な方であっても、10年後、20年後、30年後の状況を正確に予測することは不可能です。
そこで、本記事では住宅ローンを利用して住宅を購入しようと考えている方に向けて、病気やケガなどで働けなくなった場合の対処法について解説します。今からできる対策もご紹介するのでぜひ参考にしてください。
病気やケガで働けない場合でも原則として住宅ローンの返済は続く
借入期間によって異なりますが、住宅ローンの返済は長ければ30年以上も続きます。現時点では健康だから働けなくなることはないと感じている方もいるかもしれませんが、10年後、20年後に病気やケガなどで働けなくなる可能性はゼロではありません。
住宅ローンの契約中は、原則として病気やケガなどで働けなくなったとしても返済を待ってもらえません。そのため、万が一の事態が発生した場合にどのような対処法を講じるべきかを事前に把握することが大切です。
働けなくなったことで住宅ローンの返済ができない場合の対処法
働けなくなったことで住宅ローンの返済ができない場合の対処法は、主に次の5つが挙げられます。
- 団体信用生命保険でカバーする
- 医療保険でカバーする
- 生命保険でカバーする
- 金融機関に相談する
- 家を売却する
それぞれについて、詳しく説明します。
団体信用生命保険でカバーする
団体信用生命保険(通称「団信」)とは、住宅ローンの利用者に万が一のことが発生した場合に、住宅ローン残高に相当する保険金を生命保険会社が金融機関に支払う仕組みの保険です。金融機関では、団体信用生命保険への加入を住宅ローンの借入れの条件としていることが一般的です。
団体信用生命保険に加入していれば、万が一「死亡」「高度障害状態」など一定の条件に該当する場合に住宅ローンの残債が一括返済され、債務がゼロになります。
高度障害状態と認められない病気やケガ
高度障害がどのような状態かは、加入している団体信用生命保険によって異なります。一般的な団体信用生命保険の場合、以下のケースは高度障害状態と認定されず、残債はゼロになりません。
- がん
- 生活習慣病(糖尿病、高血圧性疾患、腎疾患、肝疾患、慢性膵炎、脳血管疾患、心疾患、大動脈瘤および解離など)
なお、団体信用生命保険のプランによっては、がんや生活習慣病もカバーされる場合があり、例えばauじぶん銀行の場合は「がん50%保障団信(金利上乗せなし)」「がん100%保障団信(金利に年0.05%上乗せ)」「がん100%保障団信プレミアム(金利に年0.15%上乗せ)」などのプランを用意しています(2024年3月時点)。
ただし、プランは各金融機関によって異なるため、各金融機関のウェブサイトをご確認ください。
医療保険でカバーする
住宅ローンによって団体信用生命保険への加入を必須条件としていないケースや、病気やケガの種類によっては一般的な団体信用生命保険ではカバーされない場合もあります。
そのような場合でも、医療保険に加入していれば、所定の病気やケガで働けなくなった際に、治療費や収入減少分の補償として給付金を受取れます。
住宅ローンの残債がゼロになるわけではありませんが、返済の負担を軽減することが可能になるでしょう。
生命保険でカバーする
団体信用生命保険に加入しない場合、契約者本人が死亡、高度障害状態になった場合に、家族に負担がかからないように生命保険への加入も検討しましょう。
団体信用生命保険とは異なり、生命保険では住宅ローン残債がゼロになるわけではありませんが、保険金によって負担を軽減することが可能です。
生命保険や団体信用生命保険に加入していない状態で住宅ローンの契約者本人が死亡すると、配偶者や子どもなどの遺族が巨額の住宅ローン残債を負担することになってしまいます。
金融機関に相談する
金融機関によっては、病気やケガなどで働けなくなった場合に個別に相談を受付けてくれることもあります。
しかし、すべての金融機関が返済に関する緩和措置を講じるわけではないため、上述した「団体信用生命保険」「医療保険」「生命保険」に加入し、万が一の事態に備えることが重要です。
家を売却する
一般的な団体信用生命保険に加入したものの、それではカバーされない疾患で働けなくなり、金融機関に相談しても返済に関する緩和措置を受けられない場合は、家を売却することも選択肢の一つとして考える必要があります。
なお、住宅ローン残債が売却代金を超える場合は「抵当権」を設定している金融機関の合意を得て売却する「任意売却」を選択する必要があります。しかし、「任意売却」をしても、住宅ローンの返済が無くなるわけではありません。住宅ローンの残債がある以上、返済をし続ける必要があることを認識しておきましょう。
万が一働けなくなった場合に備えて、今からできる対策
万が一働けなくなった場合に備えて、住宅ローンの借入れ時にできる対策もあります。以下は、その一例です。
- 無理なく返済できる借入額に設定する
- 返済期間を可能な限り短くする
- 売却しやすい物件を選択する
それぞれについて、詳しく説明します。
無理なく返済できる借入額に設定する
無理なく住宅ローンの返済を行うためには、「返済比率」を20~25%以下に設定するのが理想とされています。返済比率とは「年収に占める年間返済額の割合」を表す数値であり、理想的な返済比率を計算する際には「額面年収」ではなく「手取り年収」が用いられます。
例えば手取り年収500万円の方の場合、年間返済額が100万円(毎月の返済額が83,333円)を超えないように住宅ローンの契約時に借入額を調整するのがおすすめです。
あらかじめ各金融機関のウェブサイト上で提供されているシミュレーターで「毎月の返済額」などから逆算し、どのくらいの借入額が妥当なのかを把握しましょう。
返済期間を可能な限り短くする
住宅ローンを借入れる際には、35年などの長期の返済期間を設定することも可能です。しかし、一般的に年齢が上がるにつれて病気になりやすくなるのでご注意ください。
万が一20年後、30年後に病気やケガなどで働けなくなるリスクを低減したいのであれば、可能な限り返済期間を短くしましょう。
なお、返済期間を短くすればするほど月々の返済額は高くなります。将来のリスクを軽減するために月々の負担が大きくなりすぎては元も子もありません。無理のない返済になるよう、調整してください。
売却しやすい物件を選択する
病気やケガなどで働けなくなった場合、最終的に家を売却するという決断を迫られる可能性があります。そのような事態に直面することも想定して、交通面での利便性が高いエリアなど、売却しやすい物件を購入するとよいでしょう。
条件が悪い物件は高い価格では売却できず、住宅ローン残債を下回る価格でしか売却できない可能性があります。
上述したように、売却価格が住宅ローン残債を下回っていても金融機関の同意を得て任意売却をすることは可能です。しかし、その場合は残った債務の返済を続けなければなりません。不動産業者に相談したうえで、なるべく条件のよい物件を探しましょう。
働けなくなった場合のことも考えたうえで住宅ローンを利用しよう
厚生労働省の「令和3年簡易生命表」 によると、男性の平均寿命は81.47年、女性の平均寿命は87.57年です。ただし、寿命を迎える日まで元気に仕事を続けられるわけではなく、年齢が上がるにつれて病気やケガで働けなくなるリスクが増す可能性があります。
住宅ローンの借入れを行うのであれば、万が一の事態に備えて「団体信用生命保険」「医療保険」「生命保険」への加入や、「無理なく返済できる借入額に設定する」「返済期間を可能な限り短くする」「売却しやすい物件を選択する」といった対策を講じましょう。
なお、住宅ローンの借入れに関して不明な点がある場合は、自己判断するのではなく金融機関の窓口やファイナンシャルプランナーなどの専門家にご質問・ご相談ください。