2023/3/16
住宅ローンの仮審査と本審査の違いとは?各役割や、手続きの流れを紹介
監修者:竹下 昌成
多くの金融機関では、住宅ローンの融資に際して、「仮審査(事前審査)」と「本審査」を実施していますが「2回も審査を実施するのはなぜか」「仮審査と本審査はどういった点が異なるのか」といった疑問を持っている方もいるかもしれません。
本記事では、住宅ローンの借入れを検討している方に向けて、仮審査と本審査の違いを解説します。手続きの流れも詳しく紹介するので、参考にしてください。
住宅ローンの「仮審査(事前審査)」と「本審査」の違い
住宅ローンの借入れを行うには、一般的に、「仮審査(事前審査)」と「本審査」の2つを通過する必要があります。各審査の概要や役割を詳しく解説したうえで、審査でチェックされる内容も紹介します。
仮審査の概要と役割
仮審査とは、本審査の前段階で実施される簡易的な審査です。「事前審査」と呼称される場合もあります。
「購入する物件」が決まっていない状態では、金融機関側としては住宅ローンの融資に関する正式な審査を行えませんが、申込者側としても「どのくらいの金額まで借入れが可能なのか」が不明な状態では、資金の目途が立たす、購入する物件を選定できません。
こうした問題を解決するため、多くの金融機関では、簡易的な審査(仮審査)を事前に実施し、申込者に対して「借入れ可能かどうかの見込み」や「借入金額の目安」を提示しています。したがって、この時点では“買おうと検討している候補物件”でも審査は可能です。
本審査の実施前なので、あくまでも「目安」ではありますが、「どのくらいまで借入れが可能なのか」を把握できれば、購入する物件を選定しやすくなるでしょう。また、仮審査時に団体信用生命保険に加入できるかどうかも確認可能です。健康状態に不安のある方はこの段階で確認しておくとよいでしょう。
本審査の概要と役割
本審査とは、住宅ローンの融資に際して行われる「正式な審査」です。
仮審査に比べてチェックされる項目が多岐にわたり、提出する書類の内容も精査され、厳格に審査が実施されます。
具体的には、購入する物件の詳細情報の提示を求められ、「担保を設定する物件の資産価値が充分かどうか」検討が行われると認識しておきましょう。仮審査に通過しても、本審査に通過できるとは限らないことにご注意ください。
審査でチェックされる内容とは?
審査の際にチェックされる項目は金融機関によって異なりますが、一般的にどういった項目が重視されているのか傾向を紹介します。
住宅ローンの審査の際に金融機関が検討を行う項目の例を、国土交通省住宅局が2021年10月~11月に実施した「民間住宅ローンの実態に関する調査」で各金融機関が「審査の際に考慮する」と回答した割合(「:」の右側に表記)が高い順に並べたので、参考にしてください。
- 完済時年齢:98.9%
- 健康状態:98.5%
- 担保評価:97.6%
- 借入時年齢:97.1%
- 年収:95%
- 返済負担率:94.6%
- 勤続年数:94.5%
- 連帯保証:94.5%
- 金融機関の営業エリア:92.2%
- 融資可能額(購入の場合):75.8%
- 雇用形態:75.6%
- 融資可能額(借換えの場合):71.1%
- 国籍:68%
- 住宅ローン以外(カードローンなど)の債務の状況や返済履歴:62.9%
- 申込者との取引状況:44.4%
- 業種:30.1%
- 家族構成:21.9%
- 所有資産:21%
- 雇用先の規模:20.8%
- 性別:16.4%
参考:国土交通省「令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」
特に、完済時年齢が重視されているとわかります。金融機関によって異なりますが、「最終返済時が満80歳の誕生日まで」と設定されているケースが多いと理解しておきましょう。
ところで、金融機関は、住宅ローン契約を結ぶ際に、購入する物件(土地や建物)に対して「抵当権」を設定します。万が一、契約者が返済を続けられなくなった場合に、担保となっている土地や建物を売却して、住宅ローン残高の返済に充当するためです。
したがって、多くの金融機関では、物件の担保評価額に関してもチェックしています。担保評価額が低い物件の場合、融資の可否や融資額の判断に影響を及ぼすかもしれません。
また、多くの金融機関では、申込者の健康状態や、収入、勤務先に関する情報(業種、勤続年数、雇用形態、雇用先の規模など)もチェックします。
なお、返済負担率のように、申込者側が比較的容易に変更できる要素も存在します。返済負担率(返済比率)とは、「年収に対する年間返済額の割合(住宅ローン以外の借入を含む)」です。
収入が低い場合は、「借入金額を小さくする」「返済期間を長くして、年間返済額(毎月の返済額)を抑える」工夫をして、返済負担率の低減をおすすめします。
基本的に審査基準は公表されていませんが、申込資格(申込時の年齢、完済時の年齢、年収など)に関しては公表されているので、条件を満たしていると確認したうえで審査に臨みましょう。
なお、給与所得者の場合、年収とは手取り金額ではなく総支給額のことです。
住宅ローンの仮審査に通ったとしても、本審査で落ちる場合がある
上述したように、仮審査に通ったとしても、さまざまな項目が精査される本審査に通過できるとは限らないため、いくつかの金融機関で同時に仮審査を受けておくことをおすすめします。
一般的に「仮審査の承認結果」は一定期間有効(例えば、auじぶん銀行の場合は仮承認日から180日間有効)なので、複数の金融機関で仮審査の承認を得ておけば、「ある金融機関で本審査に通過しなかった場合、別の金融機関で本審査を受ける」対応が可能だと覚えておきましょう。
住宅ローンの仮審査への申込みから本審査が完了するまでの流れ
以下、auじぶん銀行を例に、住宅ローンの仮審査への申込みから本審査が完了するまでの流れをご紹介します。
金融機関によっては手続きの流れが異なる可能性があるので、各金融機関のウェブサイトで詳細を確認してください。
仮審査に必要な書類と手続きの流れ
以下は、仮審査の手続きを行うために必要な情報、および、事前に用意しておくべき資料の例です。
- 勤務先に関する情報:ご自身の年収や、会社名、所在地、資本金などがわかる資料
- 家族に関する情報:配偶者や同居している家族の年齢などがわかる資料
- 連帯保証人に関する情報:連帯保証人になる方の氏名、住所などがわかる資料(「ペアローン」や「収入合算」を利用する場合)
- 担保提供に関する情報:対象物件の担保設定がわかる資料
- 物件に関する情報:物件の所在地、建物の構造、面積などがわかる資料
- 資金計画に関する情報:建物購入費や諸費用、自己資金などがわかる資料
- 現在の住宅ローンに関する情報:現在の借入状況がわかる資料(住宅ローンの借換えを行う場合)
- 住宅ローン以外の借入れに関する情報:借入先、借入金額などがわかる資料(住宅ローン以外の借入れがある場合)
以上の資料を準備したうえで、以下の手順で仮審査の手続きを進めましょう。
1.「住宅ローンマイページ」の登録を行う
2.マイページにログインしたうえで、必要事項を入力し、仮審査と団体信用生命保険の申込みを行う
3.数日で仮審査が完了し、Eメールで結果が通知されるので、ログインして承認結果を確認する。内容に問題が無ければ、本審査に進む
本審査に必要な書類と手続きの流れ
下表に、給与所得者で確定申告をしていないお客さまで、マンションを購入する場合の本審査までに提出する必要がある書類の例をまとめました。
本人確認書類 | 世帯全員の住民票の写し、運転免許証またはパスポート、健康保険証、特別永住者証明書または在留カード(外国籍で永住許可を得ている場合) |
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収入関連書類 | 直近の源泉徴収票、直近の住民税決定通知書または課税証明書 |
物件関連書類 | 売買契約書(全ページ)、重要事項説明書(全ページ)、間取図(パンフレット、チラシなど) |
さらに、auじぶん銀行の場合、借入金額が5,000万円を超える場合は、健康診断結果証明書を提出しなければなりません。
「給与所得者なのか、個人事業主なのか」「新規借入れなのか、借換えなのか」「新築住宅なのか、中古住宅なのか」など、申込者の事情や物件の種類によって用意する書類が異なるため、各金融機関のウェブサイトなどで必ずご確認ください。
必要な書類を準備したら、以下の手順で本審査の手続きを進めましょう。なお、申込時期によっては、本審査が完了するまでに通常よりも時間を要する場合があるケースにご注意ください。
- ※以下はauじぶん銀行の場合の事例です。
1.仮審査の結果画面にある「上記内容で本審査のお申込みに進む」ボタンを押下する
2.必要書類をアップロードする(郵送またはFAXでも提出可能)
3.7~10日で本審査が完了し、Eメールで通知が届くので、マイページにログインして結果を確認する
本審査通過後は、申込者自身で不動産業者に連絡を行ったうえで、引渡日(=借入日)、売買契約や請負契約の残代金などの支払金額と振込先、引渡日当日の立会い決済の有無などを確認しましょう。
そして、住宅ローンマイページにログインして、契約内容(借入希望日、借入金額、金利タイプなど)や、振込をする支払金額、振込先の情報をご入力ください。「電話での意思確認の実施」「司法書士との面談」をしてから、借入日当日に振込が実施されます。
最終的に、売主による入金確認や、登記(所有権の移転、抵当権の設定)を経て、一連の住宅購入手続きが完了すると把握しておきましょう。
詳細は、auじぶん銀行ウェブサイトの「住宅ローン」のページをご覧ください。
住宅ローンの仮審査に落ちた場合に考えられる原因と対処方法
仮審査に通過できない場合、本審査の申込みを行えません。油断せずに準備したうえで手続きを進めましょう。
以下では、住宅ローンの仮審査に落ちた場合に考えられる原因を紹介します。対処方法も解説するので、参考にしてください。
提出書類に不備がある
住宅ローンの仮審査の際に必要な書類は、金融機関によって異なります。正しく書類を用意、提出しなければ、仮審査に通過できません。
ある金融機関では不要とされている書類であっても、別の金融機関では提出を求められる可能性があります。複数の金融機関で同時に仮審査を受ける場合は、金融機関ごとに「どういった書類が必要なのか」を確認したうえで申込みを行いましょう。
完済時年齢や年収が基準を満たしていない
基本的に住宅ローンの審査基準は非公表とされていますが、金融機関によっては申込条件を公表しているケースがあるので、あらかじめウェブサイトを確認しましょう。
例えば、auじぶん銀行の場合、「住宅ローンの最終返済時が満80歳の誕生日まで」「前年度の年収(自営業の場合は申告所得)が200万円以上」などといった利用条件があります。
なお、完済時の年齢が基準をオーバーしてしまう場合は「借入期間を短くする」、収入が低い場合は「高収入な職場に転職してしばらく待つ」「副業をして収入をアップする」「配偶者のほうが高収入な場合配偶者に契約者になってもらう、ペアローンや収入合算にする」といった対策を講じましょう。
借入で延滞した過去がある
信用情報機関のデータベース上に「延滞」の事実が登録されている場合、不利になるケースもあるのでご注意ください。
スマートフォン端末を分割払いで購入したり、カーローンやカードローンなどを利用したりして支払いが遅れてしまうと、信用情報機関に「延滞」の旨が記録される可能性があります。
「未払いがあった事実」は、料金を完済してからも数年間登録され続けるので、日ごろから期日までに支払いを済ませるよう心がけましょう。
また、利用しなくてもクレジットカードのキャッシング枠やカードローンの限度枠も年間返済額に算入する金融機関もあります。不要な限度枠があれば解約しておきましょう。
住宅ローンの本審査に備えて、仮審査をスムーズに進めよう
住宅ローンの借入れを行うためには、一般的に「仮審査」と「本審査」の2段階の審査プロセスを通過しなければなりません。
仮審査は簡易的な審査で、申込者に対して「住宅ローンの借入れが可能なのか」「どのくらいの金額まで借入れが可能なのか」目安を示す役割があります。
仮審査によって借入金額の目安が示されると、申込者は購入物件の選択が可能になると理解しておきましょう。目安がなければ、そもそも申込者側は購入する物件の選定ができず、希望する物件が提示されなければ、金融機関側も正式な審査を行えません。
購入する物件を選定したら、本審査に進みます。本審査では、仮審査よりも厳格にさまざまな要素をチェックされるため、「仮審査に通過したのに、本審査に落ちる」ケースもあるためご注意ください。
審査が通過した際の状況から変化してはいけません。仮審査の後に他の借入を増やしたり延滞したり、転職したりということがないように注意しましょう
金融機関によって、仮審査および本審査の手続きの流れ、および、用意する書類は異なります。各金融機関のウェブサイトを閲覧し、不明な点がある場合は電話などで問い合わせたうえで、無理のない計画で申込みを行いましょう。
住宅ローンは融資されるまで油断できません。審査に落ちた場合に備えて、必ず売買契約は“ローン特約”(融資に通らなければ契約は白紙撤回)がついているかどうかも確認しましょう。