住宅取得の諸費用を考慮した住宅ローンの選び方についてFPが解説
執筆者:佐藤名ゝ美(ファイナンシャルコーチ)
2021年1月7日
住宅購入の際に必要となるのは、物件そのものの代金だけではありません。不動産取引や登記関係、住宅ローンの借り入れなど、各種手続きにまつわる「諸費用」が別途必要です。
諸費用は物件価格の数%から10%前後が目安と言われます。数字に開きがあるのは、戸建かマンションか、新築か中古かなど、物件の状況によってかからないものがあるためです。また、住宅ローン関連の費用は、金融機関によって取り扱いに差が出るものでもあります。
今回は、住宅取得の際にかかる費用について、それぞれの意味や金額の内訳について解説します。
住宅取得の諸費用とは。その種類と金額の内訳も紹介
まずは、諸費用にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
≪物件取得時≫
- 印紙税
『売買契約書』および『建築工事請負契約書』を交わす際には、収入印紙の貼付が義務付けられています。
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 30,000円 |
上記金額は2022(令和4)年3月31日までに作成される契約書に対する税額です(2020年11月20日現在)。本則税率に対して50%の軽減税率が適用されています。
- 消費税
建築価格の10%です。なお、土地および個人から購入する中古住宅については非課税の対象となります。
- 仲介手数料
不動産を売買する際に仲介を請け負った不動産業者へ支払う手数料です。宅地建物取引業法により定められた上限額の範囲内で設定されます。
売買価格(税抜) | 上限額 |
---|---|
200万円以下 | 売買価格×5%+消費税 |
200万円超400万円以下 | 売買価格×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売買価格×3%+6万円+消費税 |
≪住宅ローン借入時≫
- 事務手数料
金融機関に支払う事務取扱です。金額は金融機関により異なり、借入額に関わらず「3万円」「5万円」「10万円」などのように定額を負担する場合と、住宅ローンの借入額に対して「1.5%」「2%」など一定の率を負担する場合に分かれます。なお、この事務手数料にも別途消費税がかかります。
- 保証料
保証会社に支払う手数料です。金額は保証会社により設定が異なり、「住宅ローン借入時に一括で支払う方法」「金利に上乗せする形で月々支払う方法」があります。また、保証料が不要な住宅ローンもあります。具体的な金額は、金融機関および保証会社別に確認する必要があります。
- 印紙税
ローン契約書(正式名称:金銭消費貸借契約書)を交わす際には、収入印紙の貼付が義務付けられています。
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 |
≪登記時≫
- 登録免許税(所有権の登記)
不動産を取得したら、所有権を公にするために、所有権の移転登記(売買の場合)や保存登記(新築の場合)を行う必要があります。この登記手続きの際に納めるのが登録免許税です。税額は、課税標準(固定資産税評価額等)に以下の税率を掛けて求めます。
税率 | 軽減税率(※) | ||
---|---|---|---|
移転 登記 |
土地 | 1,000分の20 | 1,000分の15(売買による取得のみ適用) |
建物 | 1,000分の20 | 要件を満たした物件は1,000分の3 うち認定長期優良住宅(新築・戸建)は1,000分の2 うち認定低炭素住宅(新築)、認定長期優良住宅(新築・共同)、一定のリフォーム済の住宅(中古)は1,000分の1 |
|
保存 登記 |
建物 | 1,000分の4 | 要件を満たした物件は1,000分の1.5 うち認定長期優良住宅および認定低炭素住宅は1,000分の1 |
- ※軽減税率は、土地の移転登記について2021年3月31日まで、その他の登記については2022年3月31日までの登記に対して適用されます(2020年11月20日現在)。
- 登録免許税(抵当権の設定)
住宅ローンを借り入れる際、抵当権(万一、債務不履行となった場合に備えて物件の売却代金で優先的に弁済を受ける権利)を設定することは、融資条件の一つとなります。この手続きの際も登録免許税の納付が必要です。税額は、借入額に1,000分の4(要件を満たした住宅は1,000分の1/2022年3月31日まで)の税率を掛けた金額です。
- 司法書士報酬
登記の手続きは、原則として司法書士に依頼します。報酬額は、手続きの詳細や司法書士によって異なります。ご依頼の司法書士事務所にご確認ください。
≪入居前後≫
- 火災・地震保険料
物件の所在地や建物の規模や構造、補償範囲などによって異なります。また、最長10年(地震は5年)までの長期契約にすると割引率が大きくなります。具体的な金額については、保険会社に見積りを依頼してください。
- 水道加入金
住宅を新築し、新たに水道を設置する場合は、市町村の水道局へ水道加入金を納めなければなりません。金額は、市町村や水道口径によって異なりますので、お住まいの地域の水道局にご確認ください。
- 不動産取得税
不動産を取得した後、数ヶ月経つと、都道府県から不動産取得税の納付書が届きます。税額は、課税標準額(税額計算の基礎となる金額)に3%(2021年3月31日までに取得分の宅地および家屋についての軽減税率/本則は4%)を掛けた金額です。
課税標準額は、固定資産税評価額を基準に土地・建物それぞれに計算されますが、一定要件を満たすことにより大幅な軽減(土地は1/2に、建物は最大1,300万円の控除)を受けられます。ただし、軽減を受けるには申請が必要です。マイホーム取得の場合、軽減を受けられる可能性が非常に高いため、必ず内容を確認して都道府県税事務所に申請してください。
- 引越し費用等
新居のインテリアや引越し荷物の移動、ご近所への挨拶にもある程度のお金がかかるでしょう。金額はご家庭によりさまざまです。必要な金額は早めに見積もって準備を進めておきましょう。
事務手数料・諸費用の内訳借入金額と事務手数料・諸費用の相場を提示
諸費用の中でも、最も私たちの頭を悩ませるのが住宅ローン借り入れ時の事務手数料かもしれません。事務手数料を「定額」としている金融機関は、前述の通り数万円程度で済みます。一方、「定率」としている金融機関の場合、例えば、手数料率2.2%(税込)の金融機関で3,500万円を借り入れると、77万円の負担となります。
それでも、事務手数料を定率としている金融機関では、保証料が不要である場合や、ローン金利が低く設定されている場合も多く、支出総額で見ると逆に抑えられている傾向にあります。
住宅取得のために支払うお金は物件価格や金利なども含め、諸費用もかかることを念頭に、住宅予算や借入額の検討、住宅ローン選びを進める必要があります。また、「諸費用そのものをどのように捻出するか」という点も現実問題として非常に重要な点です。住宅ローンの中には、諸費用分もあわせて借り入れ可能な商品もありますので、そうした点もしっかり見極めて選びたいですね。
住宅ローンご契約後(ご返済中)に発生する諸費用・事務手数料
ここまでは、住宅取得の際に発生する諸費用についてご紹介してきました。住宅ローンの費用には、返済中に発生するものもあります。
≪住宅ローン返済中に発生する費用≫
- 繰上返済手数料
繰上返済を行う際、金融機関によっては手数料が発生する場合があります。特に、こまめに繰上返済していこうとお考えの方は、繰上返済手数料の金額も必ず確認しておきましょう。
- 固定金利の再設定費用
固定金利期間が満了し、再び固定金利期間を設定する場合、また変動金利で返済中に固定金利に切り替えたい場合に、手数料が必要となる金融機関もあります。
- 条件変更手数料
住宅ローン返済中に、何らかの条件変更を行いたい場合の手数料です。金融機関が各自設定していますので確認しておきましょう。またその際、契約変更に伴う印紙代が別途必要となります。
- 団体信用生命保険料
団体信用生命保険料は原則として金融機関が負担しますが、オプションを付帯した場合、その内容により0.1~0.3%程度を金利に上乗せする形で負担が発生するケースがあります。
住宅取得には、購入時から住宅ローン完済時まで、さまざまな形で費用がかかります。ひとつひとつは少額に見えても、積み重なると莫大な金額です。全体を見通した計画を立てましょう。