2025/02/21
30代の平均貯金額はいくら?お金を貯めるコツも合わせて解説
執筆者:馬場愛梨(ファイナンシャル・プランナー)

「周りの人はいくらくらいお金を貯めているのだろう」と疑問に思うことはありませんか?30代ではライフイベントが増え、お金に関する悩みも増えるでしょう。この記事では、30代の人の平均貯金額を紹介します。
あわせて、いくら貯めていれば安心といえるのか、どうすればもっと上手に貯められるのかなどについても解説します。平均データやコツを押さえて、貯金に関する疑問や不安を解消しましょう。
■30代の平均貯金額はいくら?
30代は、仕事にも慣れてきて収入が安定してくる一方で、結婚や子育てなどライフスタイルが大きく変わる人も多い年代といえます。この年代では、平均でいくらくらい貯金しているのでしょうか。
金融広報中央委員会が2023年に行った「家計の金融行動に関する世論調査」では、以下のような結果が出ています。
【世帯主が30代の世帯の貯蓄状況】
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
預貯金額 |
287万円 |
- |
金融資産保有額 |
599万円 |
130万円 |
(出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和5年調査結果」)
●預貯金額と金融資産保有額の違い
上述の調査の「預貯金額」と「金融資産保有額」の定義は、それぞれ次のとおりです。
- 預貯金額
普通預金や定期預金などの区分にかかわらず、将来の備え、または運用のために蓄えている金額(日常の出し入れや引落としに備えている分は除く) - 金融資産保有額
上記の預貯金額に加え、貯蓄型の生命保険や株式、投資信託などの金融資産も含んだ金額(不動産や貴金属等の実物資産は除く)
一般的に「貯金」というと、上記の預貯金額を指すことが多いでしょう。この調査では、30代の預貯金額の平均は287万円となっています。ただ預貯金以外にも株式(平均140万円)、投資信託(平均64万円)、生命保険(平均44万円)などの資産を保有している人も多く、金融資産保有額の平均は599万円でした。
●平均値と中央値の違い
前述の調査結果を見て「みんなずいぶん貯めているな」と驚いた人もいるかもしれません。この調査結果を読み解くうえで、もう1つポイントになるのが「平均値」と「中央値」です。
実は「平均値」は、比較的高い数値が出やすい傾向があります。なぜなら極端に大きな数値の人(例えば貯金1億円の人など)がいると、それに引っ張られて数値が上がるからです。
一方「中央値」は、より実態に合った内容になりやすい数値といわれています。中央値とは、データを大きさ順に並べたときに真ん中に来る数値のことです。平均値と違い、極端に高い数値の影響を受けにくくなっています。
上述の調査では、預貯金額の中央値は公表されていません。しかし金融資産保有額の中央値は130万円となっていて、平均値の599万円と大きな差があることがわかります。
●データから読み取れる30代の貯蓄の傾向
上述の調査結果によれば、30代の貯蓄では次のような傾向が見られます。
- 貯めている人と貯めていない人の差が激しい
前述のとおり、30代の金融資産保有額は平均値と中央値の差が大きい傾向です。実は、この差が大きければ大きいほど数値にばらつきがある(極端に大きな数値が存在している)ということになります。
調査結果をよく見ると30代の金融資産を保有していない人は、約30.2%、100万円未満の人は約13.1%、100万円以上200万円未満の人は約8.6%でした。
30代のうち半数以上は、金融資産が0~200万円の範囲内に収まっています。一方、平均値は599万円で金融資産1,000万円以上の人は約15.6%です。貯金や金融資産の金額は、人によってかなり差がある状態といえるでしょう。
■30代の平均年収と年収別貯金額
「年収が低いからなかなか貯められない」という人もいるかもしれません。続いては、30代の平均年収と年収別の貯金額について見ていきましょう。
【世帯主が30代の世帯の年間手取り収入(税引後)】
- 平均値:464万円
- 中央値:400万円
(出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和5年調査結果」)
【年収別の金融資産保有額】
年収 | 平均値 | 中央値 | 参考) 預貯金額の平均値 |
---|---|---|---|
収入はない |
321万円 |
0万円 |
169万円 |
300万円未満 |
645万円 |
50万円 |
323万円 |
300万~500万円未満 |
1,041万円 |
230万円 |
443万円 |
500万~750万円未満 |
1,293万円 |
451万円 |
558万円 |
750万~1,000万円未満 |
1,795万円 |
900万円 |
753万円 |
1,000万~1,200万円未満 |
2,324万円 |
1,200万円 |
931万円 |
1,200万円以上 |
4,344万円 |
1,500万円 |
1,666万円 |
無回答 |
349万円 |
488万円 |
67万円 |
(出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和5年調査結果」)
全体としては、年収が高いほど金融資産保有額や預貯金額が多い傾向が見られます。しかしデータを詳細に見てみると年収が低くてもしっかりと貯めている人もいれば、年収が高いのに金融資産がほとんどない人もいることがわかります。
■30代はいくら貯めていれば安心?
ここまで30代の平均貯金額を紹介してきましたが「周りと同じくらい貯めているから大丈夫」とは限りません。では、30代の時点でいくらくらい貯金があれば安心といえるのでしょうか。
●今後のライフイベントにかかる費用を知っておこう
前提として、これからの人生で何にいくらくらいお金がかかるのかを考えてみましょう。30代の人が意識しておきたいライフイベントとその費用の例は、以下のとおりです。
費用の目安 | |
---|---|
子どもの教育費 |
子ども1人あたり約800万~2,300万円
|
住宅資金 |
約3,000万~6,000万円
|
老後資金 |
月25万円
|
(出典:日本政策金融公庫「教育にかかる費用は?」、
国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査報告書
」P49、
総務省「家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要
」P18)
これらは「人生の3大支出」とも呼ばれていて、特に大きな金額が必要になる可能性が高い項目です。将来的に結婚や出産、住宅購入などを考えている人は、計画的にお金を貯めていくとよいでしょう。それ以外の人も、例えば突然の病気や親の介護、退職や転職などで予期せずお金が出ていくことがあるかもしれません。
貯金は、将来やりたいことを実現するためにも、いざというときに困らないためにも役立ちます。
●まずは「生活費の6ヶ月分」程度を貯めよう
同じ「30代の人」でも今後発生するライフイベントやそれにかかる費用は、人それぞれです。
自分に合った貯金目標を決めて少しずつコツコツと貯金をしていくのがおすすめですが「いくら必要かわからない」「結局いくら貯めていれば安心なの?」と疑問を感じる人もいるでしょう。そんなとき目安の一つとなるのが「生活費の6ヶ月分」程度です。
一般的に生活費の6ヶ月分(毎月25万円で生活している人であれば150万円)程度の金額を、すぐに動かせる預貯金として確保しておけば、想定外の出費にも耐えて家計を維持できる可能性が高いといわれています。
貯金が少なくて不安を感じている人は、まず現在の貯金額が普段の生活費の何ヶ月分に相当するか計算してみましょう。6ヶ月未満の場合は、もしもに備えて不足分を貯めることが大切です。
●毎月の貯金額は「手取りの1~2割」がおすすめ
貯金をする際、ボーナスなどまとまったお金を一気に貯める方法もありますが、毎月一定額をコツコツと貯めていく習慣を付けることもおすすめです。毎月貯金に回す金額は、もちろん多ければ多いほどよいでしょう。しかし貯金を重視しすぎて今の生活が節約や我慢ばかりの苦しいものになってしまっては本末転倒です。
場合によっては、貯金よりも将来のためのスキルアップや今しかできない経験にお金を使ったほうがよいケースもあるでしょう。今の生活も大切にしながら無理なく貯めたい場合は、毎月「手取り月収の1~2割」程度ずつ貯めていくことを目指してみましょう。
■上手にお金を貯める5つのコツ
最後に上手にお金を貯めるコツを5つ紹介します。「もっと貯めたい!」と思ったらぜひ実践してみましょう。
- 1.先取り貯蓄を実践する
- 2.自分に合った方法で支出状況を把握する
- 3.固定費を中心に家計を見直す
- 4.目標額や予算を設定する
- 5.余裕があれば資産運用にチャレンジする
以下で、それぞれ具体的に解説します。
●1.先取り貯蓄を実践する
「先取り貯蓄」は、成功する確率が高く貯蓄の王道的な方法として有名です。
具体的には、給与が入金されたらすぐに貯蓄専用の口座にお金を移動させることを指します。余った分を貯金に回すのではなく先に貯金する分を確保しておいて残った分で生活するのがポイントです。
勤務先の財形貯蓄制度や銀行の自動定額入金サービスなどを使えば、毎月決まった日に一定額を自動的に移動させることができ手間も時間もかかりません。当然、貯蓄用の口座には手を付けないようにしましょう。
その意味では「勤務先に申請しないと引出せない財形貯蓄制度を使う」「あえて近くにATMがない銀行を選ぶ」「貯金用口座のキャッシュカードを持ち歩かない」などの対策も有効です。貯めていることを忘れるくらいがちょうどいいでしょう。
●2.自分に合った方法で支出状況を把握する
なかなかお金が貯まらない人は、まず自分が何にいくら使っているのかについて再確認してみましょう。貯まらない原因が把握できれば、それに合った対策も見えてきます。支出を把握するには「家計簿」が有効です。紙に手書きで記録する方法もありますし、近年はアプリなどで手軽に記録できるものもあります。
お金を使ったときに手帳の隅などにメモしておくだけでもよいでしょう。家計簿を付けるのが難しい場合は、以下のような方法もあります。
- 「食費だけ」「趣味代だけ」など1つの費目に絞って記録する
- レシートをもらって保管しておき定期的に確認する
- クレジットカードなどキャッシュレス決済の明細を見る習慣を付ける
自分に合った方法で無理なくできるところから実践しましょう。
●3.固定費を中心に家計を見直す
上手に節約してお金を使わずに済めば、浮いた分を貯金に回せます。「もっと貯金を増やしたいから家計を見直してみよう」と考える人もいるでしょう。
家計見直し時に多くの人は、目につきやすい食費や交際費などの節約を考えがちですが、実はそれらよりも先に「固定費」に目を向けることがおすすめです。
固定費とは、毎月一定額の支払いが発生するタイプの支出のことで、例えば住居費や保険料、スマホ代やネット代、サブスク料金などが挙げられます。これらを見直すには、手間や時間がかかることもありますが、その分、節約できる金額が大きく節約の効果が長く続く傾向があります。
今どんな契約内容になっているのかを確認したうえで「本当に必要なのか」「自分に合った内容になっているのか」「もっと安いプランはないのか」など、よく調べて検討してみましょう。
●4.目標額や予算を設定する
貯金の目標額(いつまでにいくら貯めるか)や毎月の支出額の予算(今月は何にいくらまで使えるか)を設定しておき、それを守るように行動することも有効です。
「なんとなく」ではなく具体的な数値目標を決めておくことで「今月は達成できた!」と小さな達成感を味わったり、「あと○○円足りなかったけどどうすればよかったのだろう」と改善点を考えたりしやすくなります。
あまりに高すぎる目標を設定すると挫折しやすくなるため、最初は「少しがんばれば達成できそう」なレベルの短期的な目標にするのがポイントです。貯金に対するモチベーションを維持して長く継続できるように工夫しましょう。
●5.余裕があれば資産運用にチャレンジする
効率よくお金を増やしたいなら、単に預貯金をするだけでなく本格的に資産運用に取り組んでみることもよいでしょう。近年は、NISAやiDeCoなど投資に関する税制優遇制度も充実してきています。
また投資信託など初心者でも運用しやすい商品も多数あり、投資初心者向けの情報も手軽かつ豊富に入手可能です。しかし、投資信託には元本保証がないので、仕組みを理解して正しく利用しましょう。投資信託のリスクについて詳しく知りたい人は下記の記事も合わせて読んでみてください。
預貯金は、インフレ(物価上昇)に弱いとされていることから、近年はそのリスクを抑えるために資産運用に取り組む人も増えています。ただし資産運用は、大前提としてしばらく使う予定のない「余裕資金」で行うものです。前述の「生活費の6ヶ月分」程度の預貯金がない人は、まずそれを貯めてから超えた分を運用に回すのがいいでしょう。
特に最初のうちは、失っても困らない程度の少額で始めて「長期・分散・積立投資」を実践するのがおすすめです。
■まとめ
2023年における30代の預貯金額の平均は287万円となっています。しかし、より実態に近いとされている中央値で見ると預貯金に株式・投資信託などを加えた金融資産全体で130万円という結果でした。30代は、今後子育てや住宅購入などお金のかかるイベントを控えている人も多い傾向です。
もっと資産を増やしたいと感じている場合は、先取り貯蓄や固定費の見直し、資産運用などを検討してみてはいかがでしょうか。