2023/4/20
返済負担率(返済比率)とは?計算方法や借入金額を決める際の注意点を紹介!
監修者:新井 智美
住宅ローンの利用を検討している方のなかには、借入金額をどのくらいにするべきかお悩みの方がいるかもしれません。住宅ローンを無理なく返済していくためには、理想的な返済負担率を認識したうえで、シミュレーションの結果に基づいて借入金額を決めることが重要です。
本記事では、返済負担率とはなにか、さらに計算方法や借入金額を決めるうえでの注意点を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
返済負担率(返済比率)とは?
住宅ローンの返済負担率とは「収入に占める年間の返済額の割合」のことであり、「返済比率」とも呼ばれます。返済負担率が小さいほうがゆとりを持って返済することが可能で、理想的な返済負担率は20~25%以下といわれています。なお、返済負担率は額面収入(総支給額)ではなく、税金などが差し引かれた「手取り収入」で計算しましょう。
金融機関によって基準は異なりますが、「審査を通過する」という点においては、返済負担率はおおよそ「25%~35%以下」であることが推奨されています。ただし、住宅ローンの審査に通過すればそれでよいわけではありません。状況によっては、将来的に子どもの教育費などで家計が圧迫されて、毎月の返済が苦しいなどの状況に陥る可能性もあります。
そのため、なるべく返済負担率は理想的な数値である手取り収入に対し20~25%以下にするのがおすすめです。
返済負担率(返済比率)の計算式
理想的な返済負担率は人それぞれ異なりますが、どのようにして計算すればよいのでしょうか。返済負担率の計算式は、以下の通りです。
年間のローン返済額÷年収×100=返済負担率(%)
例えば「年収500万円」「毎月の返済額10万円(年間返済額120万円)」の場合、返済負担率は「120万円÷500万円×100=24%」です。住宅ローンの借入金額を決める際には、返済負担率がどのくらいになるのかを事前に計算しましょう。
【年収別】返済負担率(返済比率)のシミュレーション例
ここからは、auじぶん銀行公式サイト上の「住宅ローンシミュレーション」を用いて、手取りの年収が「400万円」「550万円」「700万円」の場合に返済負担率がどのくらいになるのかを試算した結果を示します。
条件は、いずれも「借入期間35年」「全期間引下げプラン・変動金利 年0.389%(2023年4月適用)」「元利均等返済」「借入金額5,000万円、4,000万円、3,000万円、2,000万円」として「毎月の返済額」をシミュレーションしたうえで、返済負担率を計算した結果を下表にまとめました。
- ※毎月の返済額は借入利率が期間中に変動しない場合。
借入金額 | 毎月の返済額 | 返済負担率 |
---|---|---|
5,000万円 |
127,354円 |
400万円:約38% |
4,000万円 |
101,883円 |
400万円:約31% |
3,000万円 |
76,412円 |
400万円:約23% |
2,000万円 |
50,941円 |
400万円:約15% |
借入金額が大きくなるほど毎月の返済額が増加し、返済負担率も上昇することが把握できるほか、毎月の返済額が同じでも手取りの年収が異なれば返済負担率が変わります。
ここまでご紹介してきた内容は、上述したように、「借入期間35年」「変動金利年0.389%」という条件でシミュレーションを実行した結果です。
そのため、借入期間や金利を変えて試算すれば、同じ借入金額であっても「毎月の返済額」および「返済負担率」が変化することを認識しておきましょう。
なお、住宅ローン以外のローン(マイカーローンなど)のお借入れがある方は、それらのローンの年間返済額を住宅ローン年間返済額に足し合わせたうえで、返済負担率を算出してください。
返済負担率(返済比率)に基づいて借入金額を決めるうえで注意するべき点
以下は、返済負担率に基づいて借入金額を決めるうえで注意するべき点です。
- 住宅ローン以外の諸費用
- 住宅ローンの完済年齢
それぞれについて詳しく説明します。
住宅ローン以外の諸費用
借家と異なり、持ち家の場合はさまざまな設備・機器(水回り関連、電気関連、ガス関連など)をご自身で維持・管理しなければなりません。外壁や屋根の塗装も、定期的に実施する必要があります。
戸建住宅、マンションに関係なく、修繕費を毎月積み立てたうえで定期的に修繕工事を実施しなければ、住環境を健全な状態には保てないかもしれません。
なお、多くの分譲マンションでは、マンション管理組合に対して修繕積立金を毎月納入することが求められます。修繕積立金は、エレベーターやエントランス、外壁などの共用部分が故障した場合の修繕費として使用されます。
また、固定資産税の納付、火災保険の保険料の支払い、子どもの教育資金や老後資金を貯めることも不可欠です。
住宅を購入する場合は住宅ローンの返済だけで家計が苦しくなる状況を回避するために、事前に「住宅ローンの返済+諸費用の支払い」を行っても余裕があるかどうかを検証しましょう。
住宅ローンの完済年齢
住宅ローンを利用する場合は、返済負担率の他に完済年齢のチェックも重要です。借入期間を「35年」などと長くすれば、毎月の返済額を抑えることは可能です。しかし、定年退職してからは現役時代よりも収入が下がることがあるため、可能であれば定年退職前に完済できるように住宅ローンを組むことが大切です。
現時点ではご自身が健康であっても、20年後、30年後も健康を維持できるとは限りません。例えば現在30代後半の場合、35年ローンを組むと完済は70歳以降になります。ご自身の年齢によっては、ある程度の返済負担率の上昇を甘受したうえで返済期間を短くするほうがよいケースがあるかもしれません。
なお、2023年3月時点においては、高年齢者雇用安定法により、事業主に対して「65歳までの安定した雇用」を確保する義務が課されていますが、65歳~70歳までの雇用継続に関する措置については「努力義務」とされています。必ずしも雇用が継続されるわけではないことを、覚えておきましょう。
住宅ローンを利用する場合は、無理のない返済負担率(返済比率)に設定しよう
住宅ローンを利用する場合は、返済負担率(収入に占める返済額の割合)がどのくらいになるのかチェックしましょう。なお、理想的な返済負担率は手取り収入の20~25%以下です。
また他の借入れ(車のローンなど)もあるのならば、その金額も含めて考えることが大切です。
各金融機関のウェブサイト上のシミュレーターを活用し、借入期間などの条件を変えながら返済負担率がどのくらいになるのかを試算したうえで、無理のない借入金額に設定してください。
なお、住宅ローンを組む際は住宅ローンの返済だけを考えていればよいわけではありません。住宅ローン以外の諸経費(修繕積立金、固定資産税、火災保険の保険料、子どもの教育費など)や完済年齢も考慮しましょう。
返済負担率に関して悩みがある場合は、各金融機関の窓口やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、不安や疑問を解消したうえで住宅ローンの契約を締結することが大切です。