2023/3/16
住宅ローンの10年固定金利はどんな人向き?メリット・デメリットを詳しく紹介
監修者:新井 智美
住宅ローンには、半年ごとに金利が変わる「変動金利」タイプと、一定期間あるいは全期間で金利が変わらない「固定金利」タイプがあります。
最近、金利の低さと中期的に安定した返済をバランスよく実現できる、10年固定金利が注目を集めています。
それでは、10年固定金利の住宅ローンにはどのようなメリット・デメリットがあり、どんな人に向いているかを解説します。
住宅ローンの10年固定金利とは?
住宅ローンの10年固定金利とは、多くの金融機関で扱われている固定金利タイプのひとつです。
変動金利タイプの住宅ローンを選択すると、半年に一度は金利を見直されるのが一般的ですが、固定金利タイプでは、契約時の適用金利が一定期間あるいは完済時まで変わりません。
10年固定金利の住宅ローンの場合、契約当初から10年にわたって金利上昇リスクを回避できます。比較的長い期間、安定した返済ができる魅力があります。
10年の固定金利期間終了後は適用金利が上昇することも
10年の固定金利期間が終わると、再度固定金利にするのか、それとも変動金利にするのか選択することになります(自動で変動金利に移行する金融機関もあります)。
その際注意しなければいけない点が、10年後の金利引下幅です。金融機関によって、固定期間終了後の金利引下幅は異なりますが、当初10年間の金利引下幅よりも縮小し、結果として適用金利が上昇するケースもあります。
10年経過後に返済額が大きく増えてしまった、ということにもなりかねないため、当初10年間の金利だけでなく、10年経過後はどうなるのか、というところまできちんと確認しましょう。
住宅ローンの10年固定金利のメリット
将来の金利動向は誰にもわかりません。10年以上の長期固定金利タイプを選択すると当面は安定した返済を続けられますが、もし低金利が続けば変動金利タイプよりも総支払額が増える可能性もあります。
固定金利でも、10年や20年の期間選択型固定金利と全期間固定金利型、どちらを選択するべきか悩む方も多いでしょう。
住宅ローンの10年固定金利は、変動金利やほかの固定金利に比べて、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、10年固定金利を選択するメリットを紹介します。
金利の変動リスクが抑えられる
10年固定金利は、10年というまとまった期間、契約当初の適用金利が変更されません。そのため、金利上昇による返済額アップなどといった金利の変動リスクを抑えられます。
マイホームを買った後も、出産や子供の教育などのライフイベントを控えている方も多いでしょう。そのため、10年間の固定金利期間中に、計画的な返済を続けられることは大きなメリットとなるでしょう。
特約期間終了後の金利情勢やライフプランによって金利を選択できる
住宅ローンでは、変動金利や全期間固定金利型を選択した場合、金利タイプの変更やほかの金融機関への借換えを行わない限り、契約時の金利タイプが返済終了まで続きます。
しかし、10年固定金利なら、11年目以降の金利情勢やライフプランを考慮したうえで、固定金利か変動金利を選択できます(自動的に変動金利に切り替わる金融機関もあります)。
そのため、10年をひと区切りとして、そのときのご自身にとって最適と考えられる金利タイプを選択することも可能です。
なお、固定金利期間を終えた後は、前述の通り想像していたよりも高い金利になる可能性もあるためよく確認しましょう。
住宅ローンの10年固定金利のデメリット
住宅ローンの10年固定金利には、固定金利の適用が10年と限られているからこそ、デメリットとなりうる状況も考えられます。
半年に一度の金利見直しほど金利の変動に影響を受けず、また30年や35年の長期固定金利よりも計画を見直しやすい、言わば「いいとこどり」に思える10年固定金利にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
それでは、10年固定金利の住宅ローンを契約したときに想定されるデメリットを紹介します。
変動金利より適用金利は高めになる
10年固定金利を含めた期間選択型の固定金利住宅ローンは、変動金利タイプよりも適用金利が高く、全期間固定金利プランよりも低い傾向にあります。
auじぶん銀行の場合、変動金利(全期間引下げプラン)の適用金利は年0.389%ですが、10年固定金利は年1.115%、35年固定金利は年2.130%となっています(いずれも2023年2月時点)。
住宅ローンでは、わずかな金利差が支払利息や総返済額に影響するので、注意が必要です。
固定金利期間中は金利を見直せない
期間選択型の固定金利住宅ローンは、固定金利期間中は金利タイプの変更ができない金融機関が多いです。返済中に市場金利が大きく下がったとしても、契約当初の金利が維持されます。
固定金利期間中に金利タイプを変えたい場合は、ほかの金融機関への借換えを行う方法があります。
しかし、借換えは住宅ローンの新規契約と同様に諸費用がかかるため、諸費用も含めた総費用(総返済額+諸費用)をしっかり比較し、メリットが出るのか検討したうえで進めましょう。
当初固定期間終了後の適用金利が高くなる可能性がある
ついつい当初10年間の金利のみに目が行きがちですが、当初期間終了後の金利にも注意しましょう。
固定期間終了後の金利引下幅は、当初期間の金利引下幅よりも小さく設定されている金融機関もあります。
そのような場合、結果として適用金利が上昇し、月々の返済額も予想よりも大きく増えてしまう場合もあるでしょう。目先の10年間だけでなく、11年後以降の金利までしっかりと確認することが大切です。
固定金利の再選択には手数料が発生する場合がある
固定金利期間10年を終えると、自動的に変動金利に移行する場合があります。一方で、金融機関によっては、再び固定金利を選択できる場合もあります。
気を付けたいのは、固定金利の再選択に手数料を求められるケースがあることです。再選択手数料はおおむね11,000円ほどです。
ただし、インターネットでの手続きは無料になる場合もあるので、手続き前に金融機関に確認しておくと安心です。
また、再選択の手続きを取らなければ、変動金利に切り替わる点にも注意が必要です。
住宅ローンの10年固定金利はどんな人におすすめ?
住宅ローンの金利プランや金利タイプを選択するときには、契約する方の年収や借入希望額、返済期間など、さまざまな要素が関係します。
また、変動金利、10年固定金利、全期間固定金利など、それぞれにメリットとデメリットがあるため、何を選ぶのが最適か、決定するのが難しいと感じられる方は多いでしょう。
ここでは、10年固定金利をおすすめできる方の特長について、わかりやすくお伝えします。
11年目以降に繰上返済を予定している方
個人が住宅ローンを利用すると、条件に応じて住宅借入金等特別控除、いわゆる住宅ローン控除を受けられます。2022年の税制改正後の控除率は年末時点の住宅ローン残高の0.7%で、適用期間は最大13年です(令和4年1月1日から令和5年12月31日まで)。
なお、住宅ローン控除率・適用期間は令和5年1月27日現在のものです。最新の情報は国税庁ウェブサイトなどをご確認ください。
住宅ローン控除の適用期間はローン返済を続け、最大限の節税効果を受けた後に一括繰上返済する方もいるでしょう。
そのような場合、適用期間と近い10年固定金利にしておくと、手続きのタイミングもわかりやすく管理がしやすいです。
ほかにも、10年後に会社の退職金や満期保険金などを手にする予定があり、それを一括返済にあてるといった方にもおすすめです。
近々大きな出費を控えている方
住宅ローンの契約後、マイカーの購入や子どもの進学など、大きな支出の予定が続いている方も、10年固定金利が向いています。
10年固定金利なら、出費が続く期間は安定した返済を重視し、支出が落ち着いた10年後のタイミングで改めて金利を検討することが可能です。
住宅ローンの10年固定金利でゆとりある返済を実現しよう
住宅ローンの10年固定金利は、市場金利の動向に左右されることなく、一定期間、安定した返済を続けることができます。
マイカー購入や子どもの教育費などの支出が控えているのであれば、10年にわたって毎月の返済額が安定していることが大きな魅力となるはずです。
11年目以降は、変動金利へ移行する金融機関もあります。ただし、その時点の状況に応じて、固定金利の再選択、ほかの銀行への借換えなどさまざまな選択があるので、柔軟に対応するとよいでしょう。
また、11年目以降には金利引下幅が小さくなる金融機関もあります。当初固定金利期間が終了した後に驚くことがないよう、当初期間終了後の金利まで確認したうえで選択してください。