2023/2/24
ペアローンとは?借入可能額や住宅ローン控除のシミュレーションから解説!
監修者:新井 智美
共働き世帯が増えるなか、マイホーム購入で住宅ローンを申込むにあたり、夫婦で協力し合える「ペアローン」を検討する方が増えています。
しかし、個人で申込む場合と夫婦でペアローンを利用する場合では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
借入可能額と住宅ローン控除の具体的なシミュレーションから、ペアローンを利用したときのメリットや注意点を解説します。
ペアローンとは?
ペアローンとは、同じ物件に対して、一定の収入のある夫婦や親子などがそれぞれ住宅ローンの契約者となり、お互いの連帯保証人となる契約形態です。また、対象となる物件はペアローンを組む2人の共有名義とします。
原則として、ペアローンは同居中の夫婦あるいは一親等内の親族である2人を対象としますが、婚約中のカップルや同性のパートナー同士なども申込み可能な場合があります。
ペアローンの借入可能額のシミュレーション
ある共働き夫婦がペアローンを利用する場合、借入可能額がどれくらいになるのかを具体的にシミュレーションしてみましょう。
住宅ローンのシミュレーションは、金融機関などが公式サイトでシミュレーションサービスを提供しているのでぜひ活用してください。
仮に変動金利(全期間引下げプラン)年0.389%を適用、返済期間を35年として、金利変動を加味せずにシミュレーションしてみます。
この場合、年収600万円の夫の借入可能額は4,710万円、年収400万円の妻の借入可能額は3,140万円になりました。合算すると7,850万円になります。
長期固定金利ローン「フラット35」の場合もシミュレーションしてみましょう。適用金利は年1.88%(融資率9割以下でもっとも多い金利、2023年2月適用)、返済期間は先ほどと同じ35年です。
すると、年収600万円の夫の借入可能額は5,382万円、年収400万円の妻の借入可能額は3,588万円となりました。合算すると8,970万円になります。
このように、ペアローンを利用すれば、単独で契約するよりも住宅ローンの借入額を増やせます。自己資金の用意が難しい、単独の契約では希望する借入金額に届かない、マイホームの選択肢を広げたいという場合に役立つでしょう。
住宅ローン控除を受けた場合のシミュレーション
2022年度の税制改正によって、「住宅ローン減税」の延長が決定されています。住宅ローン減税とは、住宅ローンの利用者の金利負担軽減を目的とした制度で、「住宅ローン控除」とも呼ばれます。
毎年末時点の住宅ローン残高の0.7%、もしくは最大控除額、いずれか少ない方の金額が、最大13年の間、所得税・住民税から控除されるものです。
税制改正により、2021年までの1.0%から控除率の引下げがあった一方、対象期間は既存住宅で10年、新築住宅などは原則13年に延長されています。
新築・中古、住宅の性能などにもよって、対象となる住宅ローンの限度額も変わります。しかし、住宅の購入が節税につながる住宅ローン控除は、大きなメリットになるでしょう。
さらにペアローンの場合、契約者が2人になるため、1つの物件を購入するにあたって住宅ローン控除を2人で受けられます。この節税効果の高さから、ペアローンに注目されている方も多いかもしれません。
では実際のところ、ペアローンによる住宅ローン控除による節税効果はどれほどなのか、具体的にシミュレーションしてみましょう。
ペアローンの住宅ローン控除の計算方法
シミュレーションする条件は、以下の通りです。
- ペアローン契約者:夫(年収600万円)、妻(年収400万円)
- 購入住宅の価格:5,000万円
- 住宅ローンの借入額:夫3,000万円、妻1,000万円
- 住宅ローン金利:年1%(全期間固定金利)
- 返済期間:35年間
- 住宅の環境性能等:長期優良住宅・低炭素住宅の場合
- 住宅ローン限度額:5,000万円
- 最大控除額:夫婦それぞれ上限35万円
- 控除期間:13年間
ペアローンでは購入住宅を共有名義としますが、住宅ローン控除の金額は、それぞれの契約者の借入額や持分割合などによって変わります。
このシミュレーションでは、夫婦の借入額にあわせて、夫と妻の持分割合を「3:1」とわかりやすく設定します。
1年目の住宅ローン控除
2022年1月から入居および住宅ローンの返済開始として、まず1年目の年度末における住宅ローン残高をシミュレーションサービスで確認します。
夫のローン残高は29,280,480円、妻は9,760,160円です。この残高に0.7%をかけると、夫の住宅ローン控除額は約20万円、妻は約7万円で、世帯合計27万円の控除額となります。
返済が進めばローン残高は減少しますから、それにともない、控除額も少しずつ少なくなっていきます。
万が一、所得税の控除枠がいっぱいになれば、次は住民税から控除されます。ただし、住民税の控除額は最大で9万7,500円(前年度課税所得×5%)とやや低めなので注意しましょう。
ペアローンのシミュレーションをする際の注意点
多くの金融機関が便利なシミュレーションサービスを提供しているため、住宅ローンの借入額や返済額を気軽に計算でき、ペアローンのシミュレーションも簡単にできます。
しかし、ペアローンのシミュレーションを行い、数字のメリットにばかり目を奪われると、思わぬリスクやデメリットを負うこともあります。
最後に、ペアローンをシミュレーションするときに意識しておきたい注意点を紹介します。
持分割合は住宅購入の負担額に合わせる
先ほどのシミュレーションでは、夫婦の借入金の割合と物件の持分割合を同じ「3:1」としました。現実には、借入金の負担額と持分割合が一致しないケースもあるでしょう。
しかし、借入金の負担額に差があるといくつかのデメリットが生じます。
例えば、持分割合が夫婦で1:1、用意すべき住宅購入資金が4,000万円とします。このとき、夫が2,500万円、妻が1,500万円をペアローンで借入れると、借入金の負担は夫と妻で5:3です。
しかし、持分割合は1:1なので、本来、夫が負担する借入金は4,000万円の半分である2,000万円までとなります。
2,000万円をオーバーした金額500万円は、住宅ローン控除の対象外となるほか、夫から妻への贈与とみなされて課税対象になる可能性があります。
ちなみに、持分割合には、住宅ローンの借入金や自己資金の区別はありません。住宅購入にあたってどれだけの金額を負担したかで決まりますので注意が必要です。
住宅ローンの契約にかかる諸費用も考慮する
ペアローンを利用すると、1つの物件に対して2つの住宅ローンを契約することになります。つまり、1つの住宅ローンを契約する時と比べて、契約にかかる諸費用が増えることになります。
主な諸費用として、金融機関に支払う融資手数料、保証会社に支払う保証料、団体信用生命保険料などがあげられます。
また、シミュレーションと同時に、金融機関に問いあわせて諸費用もきちんと確認しておきましょう。
住宅ローン控除を利用できないケースがある
最大13年間にわたって2人分の住宅ローン控除を受けられることは、ペアローンのメリットの1つです。しかし、条件によっては住宅ローン控除を利用できないケースもあります。
2022年の税制改正で、住宅ローン控除の利用条件として、年間の合計所得が3,000万円以下から2,000万円以下に引下げられました。2021年までは対象だった方も、控除の対象外となる可能性があります。
なお、一部繰上返済によって返済期間を短縮し、当初借入日から期間短縮後の最終返済日が所定の返済期間を満たさなくなった場合、住宅ローン控除の適用対象外となるため注意しましょう。また、別荘地や投資用物件は対象とならないなど、住宅ローン控除を利用するには、一定の条件を満たさなければなりません。
住宅ローン控除を受けている期間に、収入が大きく減少すると、控除する所得税そのものが減り、メリットを受けにくくなるでしょう。
住宅ローン控除を受けられない可能性も考慮して、シミュレーションの数字を具体化するのがおすすめです。
ペアローンを組むなら事前のシミュレーションで具体的な計画を!
住宅ローンのペアローンには、借入可能額を増やせたり、住宅ローン控除を2人分受けられたりといったメリットがあります。
シミュレーションは、各金融機関が提供するシミュレーションサービスを活用すれば誰でも簡単に行えます。気になる方はぜひ一度試してみてください。
ただし、シミュレーションを行う際は、ペアローンならではの注意点を考慮することも大切です。
また、2022年の税制改正により、2023年末までの入居と2024年から2025年末までの入居とで控除額が変わるため、住まいを購入するタイミングによる適用要件の変更にも注意しておきましょう。