2023/2/3
住み替えローンとは?シミュレーションで資金計画を立てる重要性を解説!
監修者:新井 智美
転勤や子どもの独立などの理由から現在の自宅を手放し、新しい家への住み替えを検討することがあるでしょう。
しかし、住宅ローンの借入金が残っていると抵当権を抹消できず、お住まいの売却はできません。通常は自宅の売却金を住宅ローンの返済に充てますが、住宅ローンの残債に対して売却金が不足してしまうケースもあります。そのような場合、住み替えローンであれば住宅ローンの残債への不足分と新しい住居購入の資金をまとめて準備できて便利です。
ただし、住み替えローンは利用前に入念なシミュレーションを行うことが大切です。住み替えローンのシミュレーションの重要性について確認しましょう。
住み替えローンとは?
住み替えローンとは、契約中の住宅ローンを自宅の売却金で完済できない場合に、住宅ローンの残債への不足分と新居購入の資金をまとめて借入れるものです。買換えローンと呼ばれることもあります。
住宅ローンの融資を受ける際、自宅に抵当権が設定されます。物件を担保として金融機関は融資を行っているためです。
住宅ローンの残債があれば自宅に設定された抵当権が残り、一般的に第三者への売却ができません。住み替えローンなら、こうした状況を解決できます。
住み替えローンの利用手順
住み替えローンの手続きは、一般的な住宅ローンとほとんど同じです。大きな違いは、住み替えローンでは、新居の購入と同時に自宅の売却を行う点です。
住み替えローンを利用する場合には、原則として、自宅売却と新居購入の決済日を同じ日にします。さまざまな手続きを同時に進めることになるため、スケジュール管理をしっかりしておきましょう。
住み替えローンを組むためにはシミュレーションが重要
住み替えローンを利用すると、契約中の住宅ローンを完済するための諸費用、新しい物件の購入費用、住み替えローン契約にかかる諸費用など、さまざまなお金が動きます。
さらに、通常のマイホーム購入資金にプラスして現在の住宅ローンの残債の内自宅売却資金で返済できない分を借入れることになるため、手持ちの資金不足や返済能力を超えた借入れなど、トラブルとなることも考えられます。
そのため、住み替えローンを組むときには、事前のシミュレーションが重要です。シミュレーションの重要性について、以下で詳しくお伝えします。
借入金を把握できる
前述の通り、住み替えローンの場合、新しい住居の購入資金と契約中の住宅ローンの残債の内自宅売却資金で返済できない分を借入れることとなります。
購入する家の金額以上の借入金になるため、返済可能な金額かどうかを、シミュレーションで確認することが大切です。
例えば、auじぶん銀行が提供するシミュレーションでは、借入金額によってどのくらい返済額が変わるのかシミュレーションします。
せっかく手に入れた新居を手放すことにならないよう、シミュレーションで実現可能かを予測しましょう。
金利差による返済計画の変更に役立つ
住み替えローンでは一般的な住宅ローンにある優遇金利が適用されず、やや高めの金利が適用となる金融機関もあります。
金利が高くなる可能性のある住み替えローンを利用すると、総返済額はもちろん、毎月の返済額が大きな負担となる可能性もあります。
これまでとは毎月の返済額が変わることを考慮したシミュレーションで、具体的な返済計画を立てるとよいでしょう。また、一般的な住宅ローンと同じ金利で借入れが可能な金融機関もあるため、きちんと調べることも大切です。
住み替えローンのシミュレーション
最近は多くの金融機関が、住宅ローンのシミュレーションサービスを公式サイトで提供しています。しかし、住み替えローンに特化したシミュレーションは、実はさほど多くありません。
金融機関の相談窓口を訪れるのが確実な方法ですが、事前にご自身でシミュレーションしたいという方も多いでしょう。
そこで、具体的な数字を使って、住み替えローンのシミュレーションの手順をお伝えします。
シミュレーションの条件は以下の通りとします。
- 現在の住宅ローン残高:2,000万円
- 現在の自宅の売却価格:1,700万円
- 新しい住宅購入の頭金:200万円
- 新しい住宅の購入費用:3,000万円
まずは借入金額を計算しましょう。
現在の自宅を売却した場合、住宅ローンを完済するための不足分は「2,000万円-1,700万円=300万円」です。
また、住宅購入のために必要な借入金額は「3,000万円-200万円=2,800円」となります。
つまり、現在の住宅ローン残高に対する300万円と住宅購入資金2,800万円を足し合わせた「3,100万円」が必要な借入金額になります。
尚、自宅購入・売却、住宅ローンの新規借入れ・完済に際し手数料などの諸費用が発生することもきちんと考慮したうえで実際の借入金額は検討してください。
続いて、月々の返済額や総返済額などを計算します。
今回はauじぶん銀行のシミュレーションを利用して説明します。
上記のとおり、借入金額は3,100万円とし、その他は以下の条件と仮定します。
- ボーナス割合:0%(ボーナス返済の使用なし)
- 借入期間:35年
- 返済方法:元利均等返済
- 金利:年0.389%
- 借入利率が期間中に変動しない場合
この場合、毎月の返済額は78,960円、総返済額は約3,320万円となります。
このようにシミュレーションした結果の返済額が無理のない範囲か、きちんと検討したうえで借入金額や新しい自宅の購入を決定してください。なお、変動金利や固定金利(期間選択型)を選択の場合、金利情勢などにより金利が変動するリスクがある点も注意しましょう。
住み替えローンを利用する際の注意点
住み替えローンのシミュレーションは、それほど難しいものではありません。新しい住宅への住み替えを考えている方にとって、利用価値の高いローンですから、シミュレーションの結果に応じて検討を進めましょう。
しかし、実際に住み替えローンを利用するとなると、シミュレーションでは見えないハードルに引っかかることもあります。
最後に、住み替えローンを利用するにあたっての注意点を紹介します。
審査が厳しい傾向がある
住み替えローンの審査は、通常の住宅ローンに比べると厳しい傾向とされています。担保となる新居の価値以上の融資を行うことになるのがその理由です。
金融機関にとってリスクの高い融資となるため、審査も自然と厳しくなります。この点はご自身のシミュレーションからは測れないでしょう。
年収や勤続年数、過去の借入れに対する返済状況などによっては、事前審査や本審査に通らない可能性もあります。
スケジュール調整が難しい
住み替えローンの融資実行日は、原則として、現在の自宅の売却と新しい住居の引渡しと同じタイミングで行われます。
ローン残債や購入代金の支払いといった資金のやりとりのほか、抵当権の抹消と設定など、同時に行う手続きが多いため、スケジュール調整が複雑です。
シミュレーションで予測を立てた通りに融資を受けられても、ローン残債の支払いが終わらなければ自宅の売却はできず、新しい住居の引渡しは行えません。
スケジュール管理は、不動産会社や金融機関と連携して、計画的に進めましょう。
住み替えローンの検討はシミュレーションから始めよう
住み替えローンは、現在の自宅を手放したいけれど売却金で住宅ローンを完済することが難しいときに活用できます。
ただし、借入金が新しい自宅の価格よりも高くなるため返済負担が大きくなったり、はじめて住宅ローンを借入れる場合に比べて金利が高くなったりする可能性があります。具体的な検討の前に、借入金や返済額などをシミュレーションすることが大切です。
注意点はいろいろとあるものの、住み替えローンは、自己資金を大きく減らすことなく、新しい家への住み替えを後押ししてくれます。慎重なシミュレーションで計画的に利用するとよいでしょう。