2022/12/30
住宅ローン控除(減税)でどのくらい減税ができる?計算方法を解説
監修者:新井 智美
借入期間が10年以上の住宅ローンを借りると、住宅ローン控除(減税)の適用を受けられる場合があります。適用されると、住宅ローン残高の0.7%を上限として所得税や住民税の減税が可能です。
本記事では、住宅ローン控除(減税)の控除額を計算する方法を解説します。また、住宅ローン控除(減税)を申請する手続きの流れも紹介するので、参考にしてください。
なお、本記事は令和4年度税制改正を元に執筆しています。
住宅ローン控除(減税)とは
住宅ローン控除(減税)とは、所得金額2,000万円以下かつ、返済期間10年以上で住宅ローンを利用して住宅を購入したときやリフォームをしたときに適用される減税制度です。
新築住宅や買取再販住宅を購入したときは、借入限度額に応じて最長13年間、年間最大35万円の減税(令和4年度税制改正後)が可能です。
なお、住宅ローン控除制度の内容は適宜変更されます。利用前は国税庁のウェブサイトを確認し、最新の情報に基づき手続きをしてください。
住宅ローン控除(減税)が適用される住宅の条件
住宅ローン控除が適用されるためには、住宅ローンと申込者が所定の条件を満たし、なおかつ住宅ローンで購入あるいはリフォームする住宅も所定の条件を満たしている必要があります。
住宅に対する条件は、新築住宅を購入するときと中古住宅を購入するとき、また、増築やリフォームをするときによって異なります。
新築
住宅ローンを利用して新築住宅を購入するとき、住宅ローン控除の適用を受けるためには以下の適用条件を満たす必要があります。
- 減税を実際に受ける方が工事完了もしくは住宅引き渡しから6ヶ月以内に居住する
- 住宅ローン控除(減税)を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下である
- 対象住宅に対し、ローンが10年以上にわたる
- 対象住宅の床面積50平方メートル以上かつ、床面積2分の1以上が減税を受ける方の居住用である(合計所得金額1,000万円以下で、2023年末までに建築確認を受けた新築住宅では、住宅の床面積40平方メートル以上50平方メートル未満)
中古
住宅ローンを利用して中古住宅を購入するとき、住宅ローン控除の適用を受けるためには新築の条件に加えて、以下のいずれかの適用条件を満たす必要があります。
- 1982年1月1日以降に建築された住宅である
- 耐震基準に適合している
増築やリフォーム
増築やリフォームのために住宅ローンを利用する場合は、工事費用が100万円以上のとき住宅ローン控除が適用されるケースがあります。
しかし、工事内容が以下のいずれかに該当するときに限られます。
- 増改築工事
- 建築基準法に規定される大規模な修繕もしくは大規模な模様替えの工事
- マンションの専有部分の床や階段、壁の半分以上について実施される修繕・模様替えの工事
- 居室やキッチン、浴室、トイレ、洗面所、納戸、玄関、廊下のうちの一室の床あるいは壁全体について行う修繕・模様替えの工事
- 一定の耐震基準を満たす耐震改修工事
- 一定のバリアフリー化へのリフォーム工事
- 一定の省エネ化へのリフォーム工事
なお、バリアフリー化もしくは省エネ化のためのリフォーム工事に関しては、リフォーム減税制度を利用するほうが控除額は大きくなる場合があります。控除される金額をシミュレーションしてから、申請する制度を選択しましょう。
住宅ローン控除(減税)の最大控除額
住宅ローン控除(減税)の最大控除額は、住宅の種類と環境性能ごとに定められています。
住宅の種類と環境性能ごとに定められた最大控除額は、以下の表の通りです。
住宅の種類 | 住宅の環境性能 | 令和4年もしくは5年に入居した場合 | 令和6年もしくは7年に入居した場合 | 控除期間 |
新築住宅、買取再販住宅 |
|
35万円/年 | 31.5万円/年 | 13年間 |
ZEH水準省エネ住宅 | 31.5万円/年 | 24.5万円/年 | ||
省エネ基準適合住宅 | 28万円/年 | 21万円/年 | ||
その他の住宅 | 21万円/年 | 0円/年(※) | ||
既存住宅 |
|
21万円/年 | 21万円/年 | 10年間 |
その他の住宅 | 14万円/年 | 14万円/年 |
- ※令和5年末までに建築確認を受けた新築住宅に令和6年か7年に入居する場合は14万円/年
住宅ローンの控除額の計算方法
実際の控除額は、先述の最大控除額と年末時点の住宅ローン残高の0.7%の金額のいずれか低い金額が適用されます。
また、住宅ローン控除(減税)は、所得税から直接控除されます。しかし、所得税よりも住宅ローン控除額が多い場合は、翌年の住民税から9.75万円を上限として差し引かれます。
計算をはじめる前に、住宅ローン残高証明書と納税証明書をお手元に用意することをおすすめします。
住宅ローン控除額のシミュレーション
以下の条件を例にシミュレーションしてみます。
- 新築の長期優良住宅に令和4年に入居
- 年末時点の住宅ローン残高:3,000万円
- 所得税:6万円
- 翌年の住民税:15万円
新築の長期優良住宅の最大控除額は、借入限度額5,000万円×控除率0.7%=35万円です。しかし、住宅ローンの残高が3,000万円の場合の最大控除額は、3,000万円×控除率0.7%=21万円ですので、金額が低い21万円が適用されます。
また、最大控除額21万円に対して、所得税が6万円、住民税が15万円ですが、全額が控除されるわけではありません。住民税から差し引かれる上限は9.75万円ですので、実際は所得税6万円+住民税の上限額9.75万円=実際の控除額15.75万円です。
住宅ローン控除額を計算する際のポイント
住宅の種類と環境性能ごとに定められた最大控除額は一定ですが、年末時点の住宅ローン残高と、所得税と住民税の合計額は毎年変わるので、正確にわかる書類を準備してから計算しましょう。
また、以下のポイントにご注意ください。
- 控除額は毎年変わる
- 控除期間が減る場合がある
- 繰上返済が最善ではない場合もある
控除額は毎年変わる
住宅ローン控除により控除される金額は、毎年計算されるため、住宅ローン残高が減るにつれて控除額も減少する可能性があります。毎年、正確に計算しましょう。
控除期間が減る場合がある
新築住宅を購入するときは最大13年間、中古住宅を購入するときは最大10年間の住宅ローン控除を受けられます。
しかし、必ずしも13年間、10年間の控除を受けられるわけではないのでご注意ください。
例えば、新築住宅を購入する際、返済期間を13年間として住宅ローンを借りたとします。繰上返済を行い、12年以下で住宅ローンを完済すると、住宅ローン控除を受けられる年数も12年以下になる場合があります。
繰上返済が最善ではない場合もある
繰上返済を行うと返済期間が短縮し、利息が減る場合もあります。本来であれば、家計に余裕があるときは繰上返済を行い、積極的に住宅ローン残高を減らすことが好ましいと考えられます。
しかし、住宅ローン控除を利用しているときは状況が異なります。住宅ローン控除では、年末時点の住宅ローン残高が多いほうが控除額は増える可能性があるため、繰上返済をして住宅ローン残高を減らすことが最善ではない場合があります。
状況にもよりますが、控除期間が終わってから繰上返済を実施するほうが控除額を増やせる可能性があります。繰上返済による利息削減額と、繰上返済後の住宅ローン控除額を比較して決めるほうが良いでしょう。
住宅ローン控除(減税)の申請の流れ
住宅ローン控除の適用を受ける場合は、以下の流れで手続きを進めます。
1. 住宅を取得する
2. 6ヶ月以内に入居する
3. 書類を準備する
4. 入居した年の翌年の確定申告の時期に申請手続きをする
住宅ローン控除の手続きは、控除期間中は毎年行います。
しかし、会社員の場合1年目は確定申告が必要ですが、2年目以降は勤務先の年末調整で手続きが可能です。
必要書類
住宅ローン控除の適用を受ける場合は、以下のような書類が必要です。
- 確定申告書
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅ローン残高証明書
- 不動産の登記簿謄本
- 不動産の売買契約書または工事請負契約書
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
- 源泉徴収票
中古住宅を購入するときは、昭和57年以降に建築許可を受けている、もしくは現行の耐震基準を満たしていると証明する書類も必要です。
適用条件を確認して、住宅ローン控除(減税)を受け取ろう
住宅ローン控除が適用されると、所得税や住民税の減税が可能です。住宅ローンと住宅、申込者本人がそれぞれ住宅ローン控除の条件を満たしているか確認し、合致するときは忘れずに申告しましょう。
また、住宅ローン控除の適用条件や控除額は変更される可能性があります。常に最新の情報を確認し、正しくご利用ください。