2022/12/14
個人事業主でも住宅ローンの借入れは可能!審査のポイントや注意点を紹介
監修者:新井 智美
個人事業主の方の中には、「住宅ローンを組みたくても、個人事業主だから収入が不安定とみなされるのではないか」「審査に通過できるかどうか不安」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、個人事業主であっても住宅ローンの借入れは可能です。さまざまな金融機関のウェブサイトをみても、個人事業主向けの提出書類の案内や申込条件が記載されています。金融機関によっては、個人事業主に寄り添った対応をしているケースもあります。
本記事では、住宅ローンの借入れを検討している個人事業主に向けて、審査のポイントを解説したうえで、個人事業主が住宅ローンを組む際に注意すべき点や、審査に必要な書類についても紹介します。
個人事業主の住宅ローン審査のポイント
個人事業主が住宅ローン審査を受けるときに押さえておきたいポイントは以下です。
- 審査の際に過去3年分の所得がチェックされる
- 過度な節税対策をしないようにする
- 正しく確定申告を行うようにする
審査の際に過去3年分の所得がチェックされる
一般的に個人事業主に対しては、住宅ローンの審査の際に、収入証明書類として「過去3年分の確定申告書および付表(収支内訳書、青色申告決算書など)」の提出が求められます。
「具体的な審査基準」(所得がいくら以上なら、審査に通過するのか)は公表されていませんが、金融機関のなかには「前年度の申告所得が200万円以上」を申込条件として公表しているケースもあるので、1つの目安として考えてください。
過度な節税対策をしないようにする
個人事業主のなかには、さまざまな方法(「経営セーフティ共済」など)を駆使して、節税に励んでいる方がいるかもしれませんが、節税対策を行った分、所得が減ります。
例えば、経営セーフティ共済の掛金は、全額、「必要経費」として計上が可能です。売上が年1,000万円だったとしても、毎月20万円(1年間で240万円)の掛金を支払っている場合、経営セーフティの掛金を差引くだけでも、年間所得は760万円に減少します。
実際には、地代家賃、電気代、ガス代、水道代、電話料金、インターネット通信費、消耗品費、広告宣伝費、接待交際費など、さまざまな勘定科目も必要経費として計上できるため、さらに所得が低くなる点にご注意ください。
また、家事按分に関しては、税務署から指摘される可能性があるため、無理な割合に設定することはしてはいけません。例えば、車を100%事業で使っているのではなく、プライベートでも使っている場合は、合理的に説明できる割合に設定しましょう。
上述したように、一般的に個人事業主に対しては「過去3年分の所得」がチェックされるので、売上が多くても節税対策で所得が小さくなっている場合、「利益が出ていない」と判断されて審査で不利になる可能性があります。
住宅ローンの借入れ検討にかかわらず、過度な節税対策はやめましょう。
正しく確定申告を行うようにする
個人事業主の場合、税理士に依頼せず、ご自身で日々の経理処理から確定申告に至るまでの事務作業をこなしているケースがあるかもしれません。
自分自身で経理を行っていると、帳簿に記入したり、会計ソフトに入力したりする際にミスをしてしまう場合があります。「貸方と借方の数字の不一致」「会計ソフトによるエラーメッセージの表示」などによって気がつくケースがほとんどですが、ミスに気がつかないまま確定申告書を作成してしまう可能性がある点にご注意ください。
確定申告書の数字が間違っていても、直ちに税務署から連絡が来るとは限りません。しかし、住宅ローンの審査を受けるために確定申告書や青色申告決算書などの書類を金融機関に提出すると、担当者の確認によって細かいミスが発覚し、大きなタイムロスとなる可能性があります。
住宅ローンの借入れを検討している際は、公認会計士や税理士にチェックしてもらうことをおすすめします。万が一、過去の確定申告書などの記載内容にミスがあった場合は、速やかに修正申告を行ってください。
個人事業主が住宅ローンを利用するときに注意すべき点
個人事業主が住宅ローンを利用するときは、以下の点にご注意ください。
- 余計な経費を計上せず、所得を減らし過ぎないように心がける
- 「店舗(事務所)兼住宅」に対応しているかを確認する
- 借入れ後、住宅ローン控除の手続きを行う
余計な経費を計上せず、所得を減らし過ぎないように心がける
サラリーマン(給与所得者)の場合、源泉徴収票に記載されている額面金額に基づいて融資の可否が判断されますが、個人事業主の場合、売上ではなく「所得」に基づいて判断されます。
「可能な限り経費を計上し、なるべく税金を抑えたい」と考える方が多いかもしれませんが、経費を計上すればするほど、所得が減少する点にご注意ください。
「店舗(事務所)兼住宅」に対応しているかを確認する
個人事業主の場合、別途、事務所や店舗を借りて(あるいは、購入して)営業を行うのではなく、住宅の一部を店舗や事務所として使用するケースもあるでしょう。
「店舗(事務所)兼住宅」に対して、住宅ローンの借入れを行えるかは、金融機関によって異なります。
「店舗や事務所と併用した住宅は、住宅ローンの対象とならない」ケースもあれば、「相談に応じる」ケースもあるので、各金融機関のウェブサイトを確認しましょう。
借入れ後、住宅ローン控除の手続きを行う
住宅ローンの借入れ後は、住宅ローン控除(正式名称は「住宅借入金等特別控除」)の手続きを行いましょう。
具体的には、年末時点の住宅ローン残高の0.7%分の控除が可能です。例えば、12月31日時点での住宅ローン残高が2,000万円の場合、翌年の確定申告の際に手続きを行えば「14万円」の控除を受けられます。
なお、最長で13年間、控除を受けられますが、毎年、確定申告の際に控除の手続きを行わなければなりません(給与所得者の場合、2年目以降は勤務先の年末調整で手続きが可能)。
記入方法の詳細は、国税庁のウェブサイトなどで確認できます。不明点がある場合は、所轄の税務署や税理士などに相談しましょう。
また、新築物件の住宅ローン控除の適用条件として「床面積が40平方メートル以上で、床面積の2分の1以上が自身の居住用」など、諸条件を満たさなければならない点にもご注意ください。
- ※上述の住宅ローン控除の内容は令和4年度のものです。
個人事業主が住宅ローンの審査を受ける際に必要な書類
下表に、一般的に審査の際に提出を求められる書類の具体例をまとめました。収入証明書類以外は、サラリーマン(給与所得者)の場合と同じです。
本人確認書類 |
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収入関連書類 |
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物件関連書類 (戸建てもしくはマンションによって、必要となる書類は異なる) |
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なお、上記以外に、外国籍で永住許可を得ている方の場合は「特別永住者証明書」や「在留カード」が必要になることも覚えておきましょう。
戸建てなのかマンションなのかによっても提出種類に差があります。金融機関によっては詳細が異なる場合もあるので、各金融機関のウェブサイトなどで正確な情報を確認してください。
住宅ローンの審査に向けて、さまざまな対策を講じておこう
個人事業主の場合、住宅ローンの審査の際に提出する書類は、サラリーマン(給与所得者)と異なる点にご注意ください。一般的に、過去3年分の確定申告書(および、青色申告決算書などの付表)や納税証明書の提出が求められると覚えておきましょう。
なお、個人事業主が住宅ローンの審査を受けるときに把握しておきたいポイントは、「審査の際に過去3年分の所得がチェックされる」「過度な節税対策を控える」「正しく確定申告を行う」の3点です。
また、注意すべき点としては、「余計な経費を計上せず、所得を減らし過ぎないように心がける」「申込む住宅ローンが店舗(事務所)兼住宅に対応しているかを確認する」「借入れ後、住宅ローン控除の手続きを行う」の3つが挙げられます。
個人事業主の方は、本記事の内容を参考にして対策を講じたうえで、住宅ローンの借入れの申込みをしてはいかがでしょうか。手続きに関して不明な点がある場合は、各金融機関に問い合わせてください。