2022/12/14
住宅ローンには連帯保証人が必要?ポイントや注意点を解説!
監修者:新井 智美
大きな金額を借入れることになる住宅ローンの契約には、連帯保証人が必要だと思われる方は多いかもしれません。しかし、実際は単独で住宅ローンを借入れする場合は、連帯保証人が不要となるケースが多いのです。
この記事では、住宅ローンで連帯保証人が必要となるケースや連帯保証人を設定する際の注意点などを紹介します。
住宅ローンに連帯保証人は必要?
そもそも連帯保証人とは、金融機関などから融資を受けた方(債務者)の返済が滞った場合に、債務者に代わって返済を肩代わりする人のことを指します。債務者と返済義務を「連帯」しているため、保証人として責任を負うことになります。
住宅ローンは融資金額が多いこともあり、かつては連帯保証人を立てることが一般的でした。しかし、大きな債務を背負う連帯保証人はみつけることが大変なため、今では連帯保証人のかわりに、保証会社に保証を依頼する金融機関が増えています。
住宅ローンにかかる諸費用の中には、保証料と呼ばれるものがあります。この保証料こそ、保証会社に保証人の代行を依頼するために支払う料金です。なお、保証会社に保証を依頼する金融機関においても、後述の収入合算等をしたうえで住宅ローンを借入れする場合は連帯保証人が必要となります。
住宅ローンには基本的に連帯保証人は不要
保証会社によって保証されること以外にも、住宅ローンで連帯保証人を不要とする理由がもうひとつあります。
住宅ローンを契約するとき、購入する物件に対して抵当権を設定するのが一般的です。物件を担保として融資を実施することで、リスクを軽減しています。
保証会社による保証と物件を担保とする貸し倒れリスクの回避、これら二重の対策によって、住宅ローンの連帯保証人は必要なくなってきたのです。
住宅ローンに連帯保証人が必要になるケース
現在、単独で借入れするケースであれば、ほとんどの住宅ローンで連帯保証人を立てることはなくなりました。しかし、状況によっては連帯保証人が必要になるケースもあります。それでは、住宅ローンの契約で連帯保証人が求められるケースを紹介します。
収入合算で契約する場合
収入合算とは、住宅ローンの借入金額を増やしたいときに利用される契約方法です。同居の夫婦や親子など、一定の収入がある近親者の収入を合算した世帯収入で、ひとつの住宅ローンを組みます。
収入合算には、「連帯債務型」と「連帯保証型」の2種類があります。連帯債務型とは、ひとつの住宅ローンを主たる債務者と連帯債務者で契約し、ふたりが共同で債務者となる方法です。一方の連帯保証型は、同居の夫婦や親子などのどちらかが債務者となり、もうひとりが連帯保証人となる方法です。
連帯債務型は、債務者のふたりが共同で返済することになります。一方、連帯保証型では、債務者による住宅ローンの返済が難しくなった場合、連帯保証人に返済義務が生じます。
ペアローンを利用する場合
ペアローンも、収入合算のように、同居の夫婦や親子で契約する住宅ローンの仕組みです。金融機関では、年収に応じた無理のない借入金額を設定します。そのため、ふたり分の収入を合わせられるペアローンも、収入合算と同じく借入金額を増やすことができます。
収入合算との違いは、ひとつの物件に対して、ふたつの住宅ローンの契約が存在する点です。ペアローンでは、住宅ローンを申込んだ方がお互いに相手の連帯保証人となります。夫婦であれば、夫の契約の連帯保証人は妻、妻の契約の連帯保証人は夫です。
物件を共有名義とする場合
住宅ローンの対象物件は、契約者(債務者)の名義であることが多いでしょう。しかし、自己資金の割合などから、夫婦や親子で物件や土地を共有名義とするケースも珍しくありません。
住宅ローンの対象となる物件は、先述の通り融資の担保とされることが一般的です。しかし、共有名義によって債務者の持分割合が減ると、担保価値として不十分だとみなされてしまいます。
そのため、共有名義人を住宅ローンの連帯保証人として立てるように求める金融機関が多いのです。
なお、収入を合算しない場合は、担保提供者(物上保証人)とする金融機関もあります。担保提供者(物上保証人)の場合、返済不可の状況になった際、担保としている不動産は差し押さえられますが、住宅ローンへの返済義務は負いません。
住宅ローンの連帯保証人は誰に設定するべき?
連帯保証人は、債務者がローンを返済できなくなったときに、返済能力の有無にかかわらず、債務者にかわって返済義務を負います。
住宅ローンの借入金額は高額なため、連帯保証人にかかる責任は大きく、誰に設定するかは非常に重要です。とはいえ、住宅ローンの連帯保証人は、設定する人物を想定しやすいケースがほとんどでしょう。
例えば夫婦で暮らすマイホームの購入にあたって、夫が住宅ローンを組むときには妻が連帯保証人になるケースがほとんどです。夫婦間でなくても、多くは親など、お互いを良く知り、信頼できる親族を連帯保証人とするケースが多く見られます。
しかし、住宅ローンは返済期間が長いため、近しい人間関係だからこその金銭トラブルを招くリスクもあります。連帯保証人を設定するときは、想定されるリスクを十分に考慮することが大切です。
万が一連帯保証人になにかあった場合
住宅ローンで連帯保証人をいったん設定したら、よほどの事情がない限り連帯保証人から外すのは難しいとされています。ただし、連帯保証人を解除せざるを得ない状況もあります。
ここでは、連帯保証人が万が一の事態に陥ったときの住宅ローン契約について、具体例でみていきましょう。
連帯保証人が亡くなった場合
住宅ローン返済中に連帯保証人が亡くなった場合、連帯保証人の持つ責任はその方の法定相続人に引継がれます。連帯保証人は債務者とほぼ同等の立場であり、亡くなったとしても住宅ローンの返済義務はそのまま残るためです。
連帯保証人である配偶者と離婚した場合
共働きが増えている今、収入合算やペアローンを利用する世帯が増えており、夫あるいは妻が片方あるいはお互いの連帯保証人となるケースが多くみられます。夫婦が離婚すれば婚姻関係は終わりますが、婚姻関係の終了は連帯保証人の契約解除の条件とはならないため、離婚後も連帯保証人から外れることはありません。
たとえ協議離婚で「離婚後は夫のみが債務を負う」と決めたとしても、妻の連帯保証人の効力は続きます。連帯保証人の設定は住宅ローンの契約に関わるものであり、解除には金融機関の承諾が必要となるためです。
金融機関にとっては、回収不能になる事態を回避するための連帯保証人を失うことは、契約上、大きなリスクです。そのため、離婚を理由に連帯保証人から外れることは難しいとされています。
離婚後に連帯保証人を解除するには、まずは金融機関へ相談することとなります。現在の収入や住宅ローンの残高などを勘案し、連帯保証人を解除することに金融機関からの承諾を得られれば良いですが、承諾を得られない場合、新しい連帯保証人を準備するか、住宅ローンの借換えを行うなどの対応が必要になります。
連帯保証人が自己破産をした場合
自己破産とは、借金などの債務の返済ができなくなったときに、個人の申立てにより行われる破産手続きのことです。
住宅ローンの連帯保証人が自己破産をすると、金融機関のほとんどが「期限の利益喪失」と認定します。住宅ローンにおける期限の利益とは、ローンの返済を期日まで待ってもらう、債務者の権利のひとつです。つまり、連帯保証人の自己破産によって、債務者は期限の利益という権利を失います。
これにより、金融機関は住宅ローンの残債を債務者に対して一括請求することが可能になります。
住宅ローンの連帯保証人を設定する際の注意点
住宅ローンの連帯保証人を設定することになった場合、前もって知っておきたい注意点がいくつかあります。以下で詳しく解説します。
連帯保証人は住宅ローン控除を受けられない
住宅ローン控除の対象となるのは、実際に住宅ローンを返済している債務者です。そのため、連帯保証型では、債務者と同等の返済義務を負うものの、住宅ローンの返済を行わない連帯保証人は、通常、住宅ローン控除は適用されません。
収入合算で連帯債務型を選択すれば、それぞれが個別の債務者としてカウントされるため、住宅ローン控除を受けられます。なお、連帯債務型を取扱いしている金融機関は限られますので注意しましょう。
また、ペアローンの場合は、2つの住宅ローンを組むことになるため、それぞれの契約に対して住宅ローン控除が適用されます。
団体信用生命保険(団信)についても、連帯保証人は団信に加入できないケースが一般的なため、上述した通り連帯保証人が死亡するリスクがあります。一方、連帯債務型の場合は、金利を上乗せすることで、連帯債務者も団信に加入できる金融機関もあります。
ペアローンの場合は、2つの住宅ローンを組んでいるため、それぞれが団信に加入することができます。しかし、死亡した際に適用される団信は、死亡者が主債務者の住宅ローンのみです。
連帯保証人にかかる負担を考慮する
たとえ住宅ローンの返済が順調に進んでいたとしても、高額な借入金を伴う住宅ローンの連帯保証人になる相手に対して、精神的負担を与えるおそれがあります。
連帯保証人を依頼することで、人間関係に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。連帯保証人をお願いする前に、大きな責任を負ってもらう依頼であることを十分に認識することが重要です。
住宅ローンの連帯保証人は原則不要!でも知識を持っておくと安心
住宅ローンの契約では、原則として、保証会社による保証や対象物件に対する抵当権の設定などがあるため、連帯保証人を立てる必要がありません。
しかし、契約内容によっては連帯保証人を求められる場合もあるため、リスクや注意点を理解したうえで、慎重に対応しましょう。