2022/11/11
住宅ローンの連帯債務とは?メリットや注意点、ペアローンとの違いを紹介
監修者:新井 智美
住宅ローンでは連帯債務の形を取って、多くの希望額を借りられる場合があります。連帯債務と混同されやすい住宅ローン形態には、ペアローンがありますが、具体的に何が異なるのか、詳細に知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では住宅ローンの連帯債務とは何か、希望額を借りる以外のメリット、連帯債務とペアローンの違いを解説します。
住宅ローンの連帯債務型とは収入合算の1つ
住宅ローンの「連帯債務型」とは、収入合算の2つあるタイプのうちの1つです。収入合算とは、夫婦や親子などの収入を合算して住宅ローンの審査に臨むことを指します。
住宅ローンに申込んだ方1人の収入では希望する金額を借りられないときなどに、収入合算で申込みが可能です。また、収入合算できる要件は金融機関によって異なりますが、同居していることや、配偶者や親子などの関係にあることが求められる場合が多いです。
なお収入合算には「連帯債務型」の他にもう1つ「連帯保証型」というタイプがあります。いずれかが債務者になり、他方が連帯保証人になる方法で、債務者がローンを返済できなくなったときは、連帯保証人に返済義務が生じます。
今回は、連帯債務型について詳しく紹介します。
住宅ローンの連帯債務とは?
住宅ローンで希望する金額を借りられないときは、連帯債務による借入れが検討できます。連帯債務とは2人の収入を合算してローンを借りることで、片方が「主債務者」、もう片方が「連帯債務者」となります。
連帯債務として住宅ローンを借りると、主債務者も連帯債務者も同等に住宅ローンの債務を負います。例えば、自分自身の年収だけでは希望額を借りられないとき、収入のある配偶者を連帯債務者として収入を合算すると、希望額を借りられるようになる場合があります。
連帯債務者になれる方
配偶者以外も連帯債務者になれます。連帯債務者の基準は金融機関によって異なるため、借りたい住宅ローンを提供している金融機関で相談するようにしましょう。
ちなみに、住宅金融支援機構のフラット35では、連帯債務者が満たすべき条件を以下のように定めています。
1.申込者の親、子、配偶者など
2.申込時の年齢が70歳未満であること
3.申込者と同居すること
4.連帯債務を負うこと
原則として、1~4のすべての条件を満たしている必要があります。
なお、収入を合算できるのは主債務者と連帯債務者の年収全額です。
また、収入を合算して住宅ローンを借りるときは、借入期間の上限に影響を及ぼす場合があります。
フラット35では収入合算をする場合、借入期間の上限を以下のように計算します。
- 借入期間の上限
80歳-「次の1もしくは2のうち、年齢が高い方の申込みの際の年齢(1歳未満は切上げ)」
1.申込者(主債務者)
2.収入合算者(合算額が収入合算者の年収の50%を超える場合の連帯債務者)
例えば、申込者が40歳1ヶ月で年収が400万円、収入合算者が50歳2ヶ月で年収が600万円とします。
収入合算者の年収すべてを合算する場合、全体収入の50%を超えるため、80歳-51歳(50歳2ヶ月を切り上げて51歳として計算)=29年となり、借入期間の上限は29年となります。
しかし、収入合算者の年収のうち300万円だけを合算する場合は、申込者の年齢で借入期間が決まります。80歳-41歳(40歳1ヶ月を切り上げて41歳として計算)=39年ですが、フラット35の最長借入年数は35年のため、実際の最長借入期間は35年となります。
住宅ローンのペアローンとの違い
2人で住宅ローンを組む方法としては、他にもペアローンが挙げられます。
連帯債務型の住宅ローンでは、いずれかが主債務者となり、もう片方が連帯債務者となりますが、ペアローンでは2人とも債務者となってお互いの連帯保証人を務めます。
ペアローンを組める方
ペアローンの条件は、金融機関によって異なります。次の関係性のある2人であれば、ペアローンを組める場合が多いです。
- 夫婦
- 親子
また、金融機関によって、次の関係性の2人もペアローンを組める場合もあります。
- 同居予定の婚約者(入籍後に入籍を証明する書類の提出が必要になる場合がある)
- 同性パートナー(公正証書などの提出が必要になる場合がある)
ペアローンの特徴
連帯保証人は、連帯債務者とは異なり、直接住宅ローンの債務を負っているのではありません。連帯保証人は、債務者が返済できなくなった場合に限り、債務返済の責任を負うことになります。
ペアローンでは各債務者がお互いの連帯保証人を務めるため、万が一、相手が返済できなくなった場合に限り、自分の債務に加え相手方の債務も負うことになります。
また、ペアローンでは債務者のいずれも団体信用生命保険への加入が可能です。
住宅ローン控除も、両債務者が対象となるため、所得税や住民税の節税ができます。なお、連帯債務型の住宅ローンでも主債務者と連帯債務者の両者が住宅ローン控除の適用を受けることが可能です。条件に合致しているときは忘れずに手続きをするようにしましょう。
住宅ローンを連帯債務にするメリットと注意点
住宅ローンで希望額を借りられないときは、連帯債務やペアローンなどの方法を検討するのも良いでしょう。選択に迷ったときは、各メリットや注意点を比較してみてください。
まずは、住宅ローンを連帯債務にするメリットと注意点を解説します。
メリット
住宅ローンを連帯債務として借りると、主債務者が単独で借りるよりも多額を借りられる場合があります。1人では借りられなかった金額を借りることで、理想の住宅を購入しやすくなります。
また、連帯債務の場合、主債務者だけでなく連帯債務者も住宅ローン控除を受けられます。住宅や借入期間などの条件を満たしていれば、所得税や住民税の節税が可能です。
ペアローンは各債務者がローン契約を結ぶため、契約は2つとなりますが、連帯債務型の住宅ローンでは契約は1つのみです。印紙代なども1つの契約分のみ請求されるため、諸費用を抑えられます。
デメリット
連帯債務者が病気やケガ、産休などで収入が減ったときでも、返済が免除されるわけではないので、収入が減ったときに備えて、貯金や就業不能保険などを準備する必要があります。
また、連帯債務型の住宅ローンでは、主債務者のみしか団体信用生命保険に加入できない可能性があります。団体信用生命保険に加入すると、契約者が死亡や高度障害状態などになったときに返済が免除されますが、加入できない場合は返済義務が免除されません。万が一に備えて他の生命保険に加入するなどの準備が必要になるでしょう。
なお、「連生団信」と呼ばれる主債務者・連帯債務者共に加入できる団体信用生命保険を取り扱っている金融機関もあります。「連生団信」は借入金利に保険料が上乗せされることが多いです。
本来、主債務者が支払うべき住宅ローンの返済額を連帯債務者が支払うと、贈与税の対象になる場合もあります。また、主債務者と連帯債務者のいずれかが退職などにより収入のない状態になると、借換えができなくなるケースもあります。
住宅ローンをペアローンにするメリットと注意点
連帯債務型の住宅ローンとは異なり、ペアローンでは2人ともが債務者となり、それぞれが住宅ローン契約を結びます。メリットやデメリットを見ていきましょう。
メリット
ペアローンを利用すると、2人のうち片方が単独で住宅ローンを組む場合と比べると、多額を借りられるようになります。1人では希望額を借りられないときに検討できるでしょう。
また、個別に住宅ローンを組むため、返済期間や金利タイプ(固定金利や変動金利、固定期間限定型など)を自由に設定できる点もメリットです。夫のほうが5年早く退職するので返済期間も5年短くするなど、個人の生活にあわせた住宅ローンの組み立てが可能です。
2人とも住宅ローン控除を利用でき、団体信用生命保険に加入できる点もメリットです。節税できるだけでなく、死亡や高度障害状態などの万が一のときにも備えられます。
デメリット
ペアローンは2人が個別にローンを組む契約のため、印紙代などの諸費用が2名分発生します。連帯債務型の住宅ローンと比べると、諸費用が割高になる点にご注意ください。
また、ペアローンでは2名とも団体信用生命保険に加入できますが、1人に万が一のことが起こった場合、債務免除は1人分のみで、もう片方の返済義務は継続されます。
自分に合う住宅ローンを選択するためのポイント
どちらの返済方法にしようか迷ったときは、以下のポイントに注目してみましょう。
返済額は無理のない金額か
金融機関で提示してもらった毎月の返済額が1人でも支払えるものであれば、連帯債務型で住宅ローンを借りるのもいいでしょう。
しかし、1人では難しいときはペアローンを検討し、借入額を2名で分散して、毎月の返済額も減らしましょう。
生命保険に加入しているか
住宅ローンの契約の際には、団体信用生命保険への加入を求められることが多いです。
しかし、連帯債務型では連帯債務者は加入できないこともあるため、万が一のときの保障を受けられません。
生命保険に加入していない方は、団体信用生命保険に加入できる金融機関を選択することで万が一に備えることも検討しましょう。
各メリットとデメリットを比較して、自分に合った住宅ローンを見つけよう
住宅ローンには正解はなく、ご自身や配偶者などの状況に合う住宅ローンの選択が求められます。
もし1人で希望する金額を借りられないときは、連帯債務かペアローンをご利用ください。
各メリットやデメリットを比較し、また返済できない状況もシミュレーションしたうえで、適した方法を選択しましょう。