2022/11/11
住宅ローンの返済はどう計算する?方法とシミュレーション例を紹介
監修者:新井 智美
住宅ローンを借りるときは、2つのお金をシミュレーションする必要があります。
1つは、毎月の返済額です。毎月無理なく返済できる金額か調べておかないと、返済に遅れ、延滞利息が発生したりする場合があります。
もう1つは総費用(総支払額)です。住宅を購入する際は住宅自体の金額だけでなく、印紙税や登記費用などの諸費用がかかります。総費用(総支払額)がいくらになるのかをシミュレーションすることで、住宅購入には総額でどのくらいの費用がかかるのかが明確になります。
本記事では住宅ローンのシミュレーション方法を解説します。参考にして、ご自身に合う住宅ローンを組み立ててください。
住宅ローンの返済額について
住宅ローン返済額には、「毎月の返済額」と「総費用(総支払額)」があり、それぞれの違いを理解しておく必要があります。
1つ目は毎月の返済額です。毎月の返済額が多すぎると、家計が圧迫され、返済が滞ることにもなりかねません。滞納を続けると住宅の権利を失う場合もあるため、毎月の返済額は無理のない金額に設定しましょう。
2つ目は総費用(総支払額)です。総費用(総支払額)とは住宅ローンを借りたことで発生する支払額の合計額です。
例えば、住宅ローンとして3,000万円を借りた場合、金融機関に返済する金額は3,000万円ではありません。
金利や借入期間に応じた利息、借りる際の手数料、保証料、抵当権を設定する登記には登録免許税も必要です。また、抵当権設定登記の手続きを司法書士に依頼する場合は司法書士報酬などもかかるため、こうした費用の合計額を総費用(総支払額)といいます。
毎月の住宅ローン返済額の計算方法
住宅ローンの毎月の返済額は、以下の計算式で求めます。
- 毎月の返済額=月利×(1+月利)^総返済回数÷{(1+月利)^総返済回数-1}×借入額
- ※^は、べき乗を示します。
- ※元利均等返済の場合の計算式です。元金均等返済の場合は計算式が異なります。
通常の電卓では求めることが難しいため、金融電卓などの特殊なツールが必要になります。
計算が難しいときは、金融機関のウェブサイトで公開されているシミュレーションツールをご利用ください。
シミュレーションツールを活用すると、毎月の返済額を瞬時に計算できます。活用して、借入額や返済期間をどのように設定すれば無理なく返済できるのか調べてみましょう。
月利の計算
月利とは、1ヶ月あたりの金利です。通常、住宅ローンの金利は年利で表示されているため、12で割って月利を求めます。
例えば、適用金利が年1.2%の場合であれば、月利は1.2÷12=0.1%です。%は0.01をかけて数字に直すので、上記の式の月利の部分には0.1%×0.01=0.001を代入します。
返済回数の計算
返済回数とは返済が発生する回数です。毎月1回返済するのであれば、返済月数=返済回数となります。
例えば、35年の住宅ローンであれば、返済月数は35×12ヶ月=420ヶ月のため、返済回数は420回と求められます。
計算式に当てはめてシミュレーション
では実際に計算式に当てはめて、毎月の返済額を求めてみましょう。
例えば、借入額が3,000万円、35年間の固定金利、適用金利は年率1.2%、元利均等返済の場合であれば、返済回数は35×12=420回、月利は0.001となるため、以下の計算式で計算します。
- 毎月の返済額=月利×(1+月利)^総返済回数÷{(1+月利)^総返済回数-1}×借入額
- 0.001×(1+0.001)^420÷{(1+0.001)^420-1}×30,000,000円
毎月の返済額は約87,510円となります。
住宅ローンの総費用(総支払額)の計算方法
毎月の返済額を求めると以下の式からおおまかな総費用(総支払額)も計算できます。
- 総費用(総支払額)=毎月の返済額×返済回数+諸費用
- ※ボーナス払いなし。金利が返済期間中変わらない場合。
諸費用が100万円かかったとすれば、以下の式から総費用(総支払額)は約3,775万円と計算できます。
- 総費用(総支払額)=毎月の返済額×返済回数+諸費用
- 約87,510円×420回+100万円=約37,754,200円
住宅ローンの返済額はシミュレーションツールを使って楽に計算しよう
先述した通り、住宅ローンの返済額の計算は簡単ではありません。
住宅ローンの毎月の返済額や総費用(総支払額)を調べたいときは、各金融機関のウェブサイトで公開しているシミュレーションツールをご利用ください。金融機関によっては借入可能額の目安などもシミュレーションすることが出来ます。
シミュレーションツールを使うと、ご自身に合う住宅ローンをプランニングできます。例えば、毎月の返済額を1万円単位で変更して借入可能額がどの程度変わるのか調べたり、返済期間を短縮、延長して返済しやすい毎月の返済額を算出したりできます。
シミュレーションツールにさまざまな数値を代入して、ご自身に最適な返済計画を立ててみましょう。
シミュレーターごとの特徴を把握しておこう
各シミュレーションツールでは、金利タイプ(固定金利、変動金利など)や返済方法(元利均等返済方式、元金均等返済方式)などの設定がその金融機関で適用されているものになっていることが一般的です。
利用したい金融機関がすでに決まっている場合は、用意されているシミュレーションツールをご利用ください。
例えば、auじぶん銀行では、新規に住宅ローンを利用する方向けに以下の3つのシミュレーションツールを公開しています。
- 毎月の返済額を調べる
- 現在の年収から借入可能額を調べる
- 毎月の返済額から借入可能額を調べる
auじぶん銀行のシミュレーションツールでは、返済方法を指定できるため、元利均等返済方式で借りたときだけでなく、元金均等返済方式で借りたときもシミュレーションも可能です。
しかし、シミュレーターでは正確な金額は算出できません。あくまで概算のため、参考として活用しましょう。
住宅ローンの返済をシミュレーションする際の注意点
住宅ローンの毎月の返済額や総費用(総支払額)は、シミュレーションツールを利用すると簡単におおよその金額を調べられます。金融機関によっては借入可能額もシミュレーションできるので、返済計画を立てる際に活用しましょう。
住宅ローンの返済をシミュレーションする際は、以下の3点に注意が必要です。
- 「返済可能額」ではなく「現実的な返済額」を設定する
- シミュレーションの結果と審査結果は異なる場合がある
- 返済負担率も参考にして毎月の返済額を設定する
「返済可能額」ではなく「現実的な返済額」を設定する
総費用(総支払額)や借入可能額をシミュレーションする際は、あらかじめ毎月の返済額を決めておく必要がありますが、「返済可能額」ではなく「現実的な返済額」を設定しましょう。
「返済可能額」を毎月の返済額として設定すると、いつもは問題なく返済できても、予定外の出費が生じた月は返済が難しくなってしまいます。例えば、車をぶつけて修理が必要になったときや急な病気で入院したときなどは、返済できずに貯金を下ろすことにもなりかねません。
毎月無理なく返済できる「現実的な返済額」でシミュレーションすれば、万が一のことが生じたときも返済の負担を感じにくくなります。毎月の収支を細かく確認し、どの程度の金額であれば無理なく返済できるのか調べてみましょう。
シミュレーションの結果と審査結果は異なる場合がある
シミュレーションは、あくまでも入力した数値に基づく結果です。実際の審査結果とは異なる場合があるのでご注意ください。
例えば、シミュレーションでは毎月の返済額や適用される金利などから借入可能額を割り出します。
しかし、審査によって適用される金利が決まるため、実際の金利とのずれが生じ、金融機関から提示される借入可能額がシミュレーションした結果とは大きく異なる可能性があります。
返済負担率も参考にして毎月の返済額を設定する
返済負担率とは、年収における返済額の割合です。
例えば、年収が400万円の方が毎月10万円返済(ボーナス払いなし)をする場合、返済負担率は10万円×12ヶ月÷400万円=30%となります。
金融機関では、目安となる返済負担率を決めている場合があるため、目安を超える返済負担率に設定すると、シミュレーションの結果と審査結果が大きく乖離する可能性があります。
返済負担率を20%以下に設定すると、無理なく返済できる住宅ローンになるでしょう。毎月の返済額を設定するときは、返済負担率も参考にして決めるようにしましょう。
シミュレーターを使って住宅ローンの返済計画を立てよう
各金融機関で公開しているシミュレーターを活用すると、複雑な計算をしなくても毎月の返済額や総費用(総支払額)、借入可能額などを調べられます。
ご自身の収入から返済負担率も割り出して毎月の返済額を設定すると、より無理なく返済できる住宅ローンをプランニングしやすくなります。
シミュレーターを活用して、ご自身に最適な返済計画を立ててください。