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特集 | 住宅ローン

2022/11/4

期間35年の住宅ローンを組むのに適した年齢は?メリットやデメリットも紹介

監修者:新井 智美

多くの金融機関では、住宅ローンの返済期間を最長で「35年」に設定することが可能です。ただし、「返済完了までに要する期間が長いけれども、返済期間35年の住宅ローンを組んで大丈夫だろうか」、「他の返済期間と比べて、どのようなメリット・デメリットがあるのだろうか」などとお悩みの方もいるかもしれません。

本記事では、住宅の購入のために住宅ローンの借入れを検討している方に向けて、返済期間35年の住宅ローンを組むのに適した年齢や、利用するメリット・デメリット、借入時や繰上返済時の注意点についてご紹介します。

返済期間35年の住宅ローンを組むのに適した年齢

住宅ローンは、どのような年齢であっても組めるわけではありません。基本的に、申込みに関して「年齢制限」が設定されているので、若い時期から情報収集をスタートすることをおすすめします。

年齢制限は金融機関によって異なりますが、住宅ローンを申し込める条件として、申込時の年齢とは別に「満80歳の誕生日までに完済」とされているケースが多いです。そのため、一般的に、「44歳」が35年固定の住宅ローンを申し込める上限年齢になります。

ちなみに、審査の際に各金融機関が重視する項目は「完済時の年齢」の場合が多く、99.1%の金融機関が考慮すると回答しています(※)。このことからも、収入など年齢以外の条件が同じであれば、若い時期ほど35年固定の住宅ローンの審査に通りやすくなること覚えておきましょう。

  • 国土交通省 住宅局「令和2年度 住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」

「高年齢者雇用安定法」が改正・施行され、70歳までの就業機会が確保される世の中に変化しつつありますが、依然として65歳までに「定年」を迎える企業が多く、高齢になるにつれ収入が減少する可能性があります。定年までに完済できるように住宅ローンを(35年固定の住宅ローンなら、30歳前後で)組むことを意識しましょう。

なお、住宅購入以外の結婚や子どもの進学などのライフイベントについて考慮することも欠かせません。大切なのは、さまざまな要素を勘案し、ご自身に適したタイミングで住宅ローンを組むことです。

返済期間35年の住宅ローンのメリット

以下、返済期間を35年とした住宅ローンの主なメリットを2つご紹介します。

毎月の返済金額が軽減される

住宅ローンを35年で組むと、10年や20年などの返済期間が短い住宅ローンよりも、毎月の返済金額が小さくなります(同じ借入金額で比較した場合)。

人生においては、ケガや病気、事故、自然災害などの予測困難な事態に直面し、急にまとまったお金が必要になる場合があるので、常に一定金額の余裕資金を確保しておかなければなりません。

充分な額の現金や貯金がない方や、収入に不安がある方には、返済期間を長めに設定することをおすすめします。35年の住宅ローンなら、短い期間での住宅ローンと比較すると、住宅ローンの返済に追われ、手元に残るお金がほとんどないという状況を回避しやすくなるでしょう。

借入可能な金額を増やせる

借入可能額を決定する目安のひとつに、年収に対する年間返済額の割合である「返済負担率(返済比率)」があります。返済期間35年の住宅ローンの場合、返済期間が短い住宅ローンに比べて月々の返済額が減る(返済負担率が小さくなる)ため、借入れできる金額が大きくなります。

高額な住宅の購入を予定している方は、返済期間35年の住宅ローンを組んで借入可能額を増やすこともご検討ください。

返済期間35年の住宅ローンのデメリット

以下、返済期間35年の住宅ローンの主なデメリットを2つご紹介します。

トータルでの返済額が増加する

借入金額や金利といった条件が同じであれば、返済期間が長くなるほど借入期間中に発生する利息の合計額が大きくなり、トータルでの返済額が増えてしまいます。

返済期間が短い住宅ローンに比べて、返済総額が増えるデメリットを理解したうえで、35年の住宅ローンを組みましょう。

定年退職後も住宅ローンの返済を余儀なくされるケースがある

例えば、40歳の方が35年の住宅ローンの契約を行った場合、完済する際には年齢が75歳に達します。

上述したように、「高年齢者雇用安定法」が改正・施行されましたが、現状では給与所得者の場合、60歳~65歳で定年退職を迎えるケースが多数です。公的年金だけで住宅ローンの返済を行うことが難しい場合、定年退職後も働いて収入を確保しなければならない事態に直面するかもしれません。

なお、定年後に同じ会社に再雇用されたとしても、収入が減少するケースもあります。定年後には働き方が変化し、現役時代よりも収入が少なくなる可能性があることを認識しておきましょう。

返済期間35年の住宅ローンを組んだうえで、繰上返済を行うことは可能?

35年の住宅ローンを組んだとしても、契約後に資金面で余裕ができた場合は、毎月の返済額とは別に、「繰上返済」を行うことも可能です。ちなみに、借入残高の全額、または一部だけ繰上返済するかはご選択いただけます。

一部繰上返済に関しては、以下に示すように、「期間短縮型」および「返済額軽減型」の2つのタイプが存在すること、さらに「期間短縮型」の方が利息削減効果は大きいことを把握しておきましょう。

  • 期間短縮型:毎月の返済額は変えずに、残りの返済期間を短縮するタイプ
  • 返済額軽減型:残りの返済期間は変えずに、毎月の返済額を減らすタイプ

なお、前倒しで返済する額が多いほど、そして、繰上返済を実行するタイミングが早いほど、効果が大きくなります。トータルでの利息を減らしたい方や早く完済したい方は期間短縮型、毎月の負担を軽減したい方は返済額軽減型の繰上返済を実行することをおすすめします。

返済期間35年の住宅ローンを組む際に注意すべき点

ここからは、35年の住宅ローンを組む際に注意すべき点を2つご紹介します。

退職金をあてにしない

返済が完了するのが定年後になったとしても、退職金を返済に回せば問題ないとお考えの方がいるかもしれません。

実際にもらえる退職金がいくらなのかを正確に把握することは難しく、さらに現在20代~30代の方が高齢者になった際には、公的年金の支給額が減少するなど、さらに厳しい状況になることも考えられるので、退職金をあてにして住宅ローンの返済計画を立てるのは避けるほうが良いでしょう。

収入・支出の変動を考慮して返済計画を立てる

35年の住宅ローンの返済期間は長期にわたります。人生では、大規模災害の発生、感染症の流行などの想定を超える事態が起こり、倒産・失業といった問題が身に降りかかる可能性があります。

「借入時の収入」に基づいて返済計画を立てると、将来、何らかの原因で収入が減少した場合、負担に耐えられなくなるかもしれません。収入が同じであっても、家族の病気やケガなどで支出が増え、住宅ローンの返済が家計を圧迫するケースもあるでしょう。

人生は、住宅ローンの返済だけに専念すれば良いわけではありません。これからのライフイベントに基づき、「結婚資金や子どもの教育資金、老後資金」などを準備しておく必要もあります。

ライフプランを作成し、いつの時期に、どのくらいの資金が必要になるのかを把握したうえで、35年の住宅ローンの借入金額などを決定しましょう。なお、子どもが独立し、教育費がかからなくなったら、繰上返済を行うこともご検討ください。

メリットやデメリットを把握し、35年の住宅ローンを賢く利用しよう

多くの金融機関では、住宅ローンの返済期間を最長で「35年」に設定することが可能です。ただし、一般的に、「満80歳の誕生日までに完済可能であること」が申込みの条件とされているため、この条件下では40代後半になると返済期間35年の住宅ローンを組めなくなります。

また、定年退職を迎える前に完済できるように30歳前後で35年の住宅ローンを組むのが理想であることも覚えておきましょう。

なお、35年の住宅ローンには、返済期間が短い住宅ローンに比べて「毎月の返済金額が軽減される」、「借入可能な金額を増やせる」といったメリットがありますが、「トータルでの返済額が増加する」、「定年退職後も住宅ローンの返済を余儀なくされるケースがある」などのデメリットもあります。

35年の住宅ローンは、退職金をあてにせず、収入・支出の変動を考慮して返済計画を立てるといった点に注意しながら賢く利用しましょう。わからないことや悩みがある場合は、各金融機関の窓口やファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談ください。

監修者:新井 智美
顔写真:監修者:新井 智美

プロフィール:
コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)をおこなうと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆及び監修をこなしており、これまでの執筆及び監修実績 は2,000本を超える。

資格情報:CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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