住宅ローン控除(住宅ローン減税)を受けるための条件とは?計算方法と注意点も解説!
執筆者:中田 真(ファイナンシャルプランナー)
2021年8月26日(2022年7月14日更新)
金融機関等から住宅ローンを借入れて住宅の取得・増改築などした際、一定の要件を満たすと住宅借入金等特別控除(以下、住宅ローン控除(減税))という税額控除を受けられます。今回は住宅ローン控除(減税)の適用要件や計算方法、注意点について解説します。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)とは
住宅ローン控除(減税)とは、金融機関などから住宅ローンを借り入れて住宅の取得・増改築などした際、一定の要件を満たすことで、年末の借入残高に応じた税額控除を最長13年間(※1)受けられる制度です。住宅ローン控除(減税)を受けることで所得税・住民税の税額から一定額が控除される(税額控除)ため、納付する税額を抑えられます。
- ※1契約期限(注文住宅の場合は令和2年10月~令和3年9月、分譲住宅などの場合は令和2年12月~令和3年11月)と入居期限(令和3年1月~令和4年12月)を満たした場合の控除期間は最長13年間、それ以外の場合の控除期間は最長10年間となります。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の対象となる住宅ローンの要件とは
住宅ローン控除(減税)の適用要件は、取得した住宅の種類などによって異なります。それぞれの住宅ローン控除(減税)の主な適用要件について確認してみます。
1.新築住宅(一般住宅・認定住宅)
個人が新築または建築後使用されたことのない一般住宅(認定住宅に該当しない)・認定住宅(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅)を取得し、住宅ローン控除(減税)を受ける者が自ら居住する場合。
【借入金】
自己居住用の住宅とその敷地を(一体として)取得するための借入金であること。
【居住時期など】
住宅ローン控除(減税)を受ける人(納税者)が、新築又は取得の日から6ヶ月以内に対象となる住宅に居住し、適用を受ける各年の12月31日まで引続いて住んでいること。
【借入金の返済期間】
10年以上であること。
【対象となる主な金融機関など】
次のいずれかに該当すること。
- 銀行、信用金庫、労働金庫、農業協同組合など
- 独立行政法人住宅金融支援機構、地方公共団体、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合など
- 貸金業を行う法人で、住宅の建築や取得に必要な資金の長期貸付けの業務を行うもの
- 勤務先(住宅の取得等をした者が、その役員等である場合を除く)
【借入金年末残高の上限】
一般住宅:上限4,000万円
認定住宅:上限5,000万円
【合計所得金額】
住宅ローン控除(減税)を受ける人(納税者)の住宅ローン控除(減税)を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること。なお、ペアローン(夫婦が別々に住宅ローンを組む)の場合は、各人の合計所得金額が3,000万円以下であること。
【住宅の床面積】
対象となる住宅の床面積が50平方メートル以上(※2)であり、床面積の2分の1以上が自己の居住用であること。
- ※2住宅ローン控除(減税)を受ける人(納税者)の住宅ローン控除(減税)を受ける年の合計所得金額が1,000万円以下である場合は、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満である居住用の家屋についても適用されます。ただし、控除期間のうち、その年分の合計所得金額が1,000万円を超える年については、適用されません。(2021年8月現在)
【その他の特例の適用有無など】
新築または取得した家屋およびその敷地である土地等以外の資産(それまでに住んでいた家屋など)について、下記の期間に居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと。
- 令和2年4月1日以後に譲渡した場合:その家屋に住み始めた年とその前2年・後3年の計6年間
- 令和2年3月31日以前に譲渡した場合:その家屋に住み始めた年とその前後2年ずつの計5年間
2.中古住宅
中古住宅の場合は、上記「1、新築住宅(一般・認定)」の適用要件に加えて、以下の要件を満たす必要があります。
【建物の構造など】
次のいずれかに該当すること。
- 家屋が建築された日からその取得の日までの期間が20年(マンションなどの耐火建築物(※3)の建物の場合には25年)以下であること
- 地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準、またはこれに準ずるもの(耐震基準)に適合する建物(※4)であること
- 平成26年4月1日以後に取得した中古住宅で、上記2つのいずれにも該当しない一定の住宅(要耐震改修住宅)のうち、その取得の日までに耐震改修を行うことについて申請をし、かつ、その家屋に住み始めた日までに、家屋が耐震改修(※5)により耐震基準に適合することが証明されたものであること
- ※3建物登記簿に記載された家屋の構造のうち、建物の主たる部分の構成材料が石造、れんが造、コンクリートブロック造、鉄骨造(軽量鉄骨造は含まない)、鉄筋コンクリート造、または、鉄骨鉄筋コンクリート造のもの
- ※4その家屋の取得の日前2年以内に耐震基準適合証明書による証明のための家屋の調査が終了したもの、その家屋の取得の日前2年以内に建設住宅性能評価書により耐震等級に係る評価が等級1、等級2、等級3であると評価されたもの、または既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されているもの
- ※5租税特別措置法41条の19の2(既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除)第1項又は41条の19の3(既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除)第6項、もしくは第8項の適用を受けるものを除く
3.増改築など
増改築などの場合は、上記「1、新築住宅(一般・認定)」の適用要件に加えて、以下の要件を満たす必要があります。
【対象となる主な工事】
- 増築、改築、建築基準法に規定する大規模な修繕、または大規模の模様替えの工事(※6)
- マンションなどの区分所有建物のうち、その人が区分所有する部分の床、階段、または壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事
- 家屋(マンションなどの区分所有建物にあっては、その人が区分所有する部分に限る)のうち、居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関、または廊下の一室の床、または壁の全部について行う修繕・模様替えの工事
- 建築基準法施行令の構造強度等に関する規定、または地震に対する安全性に係る基準に適合させるための一定の修繕・模様替えの工事
- 一定のバリアフリー改修工事
- 一定の省エネ改修工事
- ※6家屋の壁(建築物の構造上重要でない間仕切壁を除く)、柱(間柱を除く)、床(最下階の床を除く)、はり、屋根、または階段(屋外階段を除く)のいずれか一以上について行う過半の修繕・模様替え
【住宅の床面積】
増改築等をした後の住宅の床面積が50平方メートル以上(※7)であり、床面積の2分の1以上の部分が自己の居住用であること。
- ※7住宅ローン控除(減税)を受ける人(納税者)の住宅ローン控除(減税)を受ける年の合計所得金額が1,000万円以下である場合は、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満である居住用の家屋についても適用されます。ただし、控除期間のうち、その年分の合計所得金額が1,000万円を超える年については、適用されません。(2021年8月現在)
【借入金年末残高の上限】
上限4,000万円
【工事費用】
工事費用の額が100万円超で、工事費用の2分の1以上の額が自己の居住用部分であること。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の計算方法
住宅ローン控除(減税)は、原則として毎年末の住宅ローン借入残高の1%が控除される仕組みです。年間控除額(※8)は新築一般住宅・中古住宅・増改築等の場合で最大40万円(借入金年末残高の上限4,000万円×1%)、新築認定住宅の場合で最大50万円(借入金年末残高の上限5,000万円×1%)となります。
- ※8控除期間が最長13年間の場合、11~13年目の年間控除額は借入年末残高×1%、または建物購入税抜価格×2%÷3のいずれか少ない金額が適用されます。
住宅ローン控除(減税)における初年度の控除額について具体例を参考にしましょう。
【例:住宅ローン控除(減税)における初年度の控除額】
対象住宅:新築の注文住宅(個人・一般・居住用)
居住時期:2021年6月
年末の住宅ローン借入残高:3,000万円
納付すべき所得税額:10万円
納付すべき住民税額:15万円(控除上限額136,500円に該当する)
住宅ローン控除(減税)の控除額 = 3,000万円×1% = 30万円
- 所得税
該当年の納付すべき所得税額10万円よりも住宅ローン控除(減税)の控除額(30万円)の方が大きいため、税額控除により所得税の納付は不要です。 - 住民税
所得税から控除しきれなかった20万円分(住宅ローン控除(減税)の控除額30万円-納付すべき所得税額10万円)については、住民税から差し引くことができます。ただし、住民税から控除できる金額には上限(前年の課税総所得金額の7%・136,500円が限度額)が決められています。よって、納付すべき住民税額15万円のうち上限額である136,500円が控除されます。
住宅ローン控除(減税)によって初年度に控除(税額控除)される控除額は、所得税+住民税=10万円+13万6,500円=23万6,500円です。
なお、税額控除された所得税額は確定申告後に還付されますが、住民税額については翌年の住民税額から減額されます。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の手続きや注意点
住宅ローン控除(減税)の適用を初めて受ける場合は、入居した年の翌年の2月16日~3月15日に確定申告をする必要があります。確定申告の必要がない会社員などの給与所得者であっても申告は必要になるため注意しましょう。
会社員などの給与所得者で確定申告の必要がない方は、2年目以降についての申告は不要です。勤務先に必要な書類(税務署から送付される年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書など)を提出することで、年末調整の際に住宅ローン控除(減税)を受けられるためです。一方、自営業者など源泉徴収制度の対象とならない方は初年度と同様に、確定申告により申請に必要な書類などを提出する必要があります。
申請に必要な書類は取得した住宅の種類、敷地の取得に係る住宅借入金等の有無、増改築などによって異なるため、税務署などで確認しましょう。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)の制度や仕組みを正しく理解することが重要
住宅ローン控除(減税)は、適用を受けることで大きな節税効果が期待できる制度です。しかし、適用を受けるための要件は複雑で分かりにくいです。また、住宅ローン控除(減税)を受けられることを期待し、無理のある住宅購入計画(住宅ローンの借入金や返済期間など)を立ててしまっては元も子もありません。しっかりとシミュレーションを行い、月々の返済額に無理はないか、など確認しましょう。