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金利の引下げとは?メジャーな2タイプをFPが解説!

執筆者:佐藤名ゝ美(ファイナンシャルコーチ)

2021年1月7日

「今どきの住宅ローン金利は2%強から3%前後」と聞いて、どんな印象を持たれますか? 「0.5%を切っているものから、せいぜい1%を超えたぐらいじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですがこの「2%強から3%前後」という数字、あながち間違っているとも言えないのです。

今回は、金利を考える上で知っておかなければならない「基準金利」と「適用金利」の違いや、金利の引下げ方法についてシミュレーションも交えながら解説します。

金利の引下げについて

住宅ローンをはじめ、各種ローンの金利には「基準金利(もしくは店頭金利)」という概念があります。冒頭に掲げた「2%強から3%前後」という数字は、この基準金利を指しています。

基準金利は本来のローン金利で、市場のさまざまな情勢に影響を受けて決まります。ローン商品の“定価”と言えるでしょう。

一方、実際のローン貸出時に適用されるのが「適用金利」です。適用金利は通常、基準金利に比べて相当に低い金利です。理由は、金融機関が値引きを行うことで実現している“キャンペーン価格”と言えるものだからです。チラシやホームページなどで打ち出されているローン金利は、この「金利引下げ」が適用されていることを前提に把握する必要があります。

基準金利は金融機関によって異なりますが、そもそも市況を反映した数字であるため、著しい格差が見られるものではありません。一方、金利引下幅も同じく金融機関によって異なりますが、金融機関の経営スタイルに影響を受ける部分です。一般的に、店舗運営コストのかからないネット銀行において引下幅が大きく、適用金利が低い傾向にあります。

金利プラン(全期間引下げプランと当初期間引下げプラン)とは

金利引下げの方法は大きく2つに分けられます。住宅ローン貸出期間中の全期間において一定の幅で金利を引下げる「全期間引下げプラン」と、当初の固定金利期間により大きな引下幅を設ける「当初期間引下げプラン」です。

では、どちらをどのように選択したらよいのでしょうか。毎月の返済額および総返済額がどのようになるか、auじぶん銀行の実際の金利(2020年12月1日現在)を参考に比較してみましょう。なお、基準金利は市況の動向により変化しますが、将来の金利がどのように変化するか予測がつかないことから、ここでは基準金利に変動がないものとして試算します。

【試算の前提】
借入額:3,500万円
返済期間:35年
返済方式:元利均等返済(月々返済のみ)

≪全期間引下げプラン≫
金利タイプ 基準金利① 引下幅② 適用金利
(①-②)
返済額
月々 総額
変動 2.341% -1.931% 0.410% 89,469円 37,577,051円
当初2年 2.540% -1.000% 1.540% 107,851円 45,297,459円
当初3年 2.520% -1.000% 1.520% 107,507円 45,153,059円
当初5年 2.510% -1.000% 1.510% 107,336円 45,080,856円
当初10年 2.490% -1.000% 1.490% 106,993円 44,936,876円
当初15年 2.640% -1.000% 1.640% 109,580円 46,023,809円
当初20年 2.740% -1.000% 1.740% 111,326円 46,756,993円
当初30年 2.990% -1.000% 1.990% 115,762円 48,619,943円
当初35年 3.080% -1.000% 2.080% 117,384円 49,300,987円
≪当初期間引下げプラン≫
金利タイプ 基準金利① 引下幅② 適用金利
(①-②)
返済額
当初期間③ 当初期間
終了後④
当初期間
(①-③)
当初期間月々 総額
当初2年 2.540% -2.08% -0.80%(※) 0.460% 90,237円 45,759,581円
当初3年 2.520% -1.94% -0.80%(※) 0.580% 92,097円 45,299,693円
当初5年 2.510% -1.90% -0.800% 0.610% 92,566円 44,494,558円
当初10年 2.490% -1.96% -0.800% 0.530% 91,319円 42,428,825円
当初15年 2.640% -1.748% -0.800% 0.892% 97,048円 42,973,435円
当初20年 2.740% -1.749% -0.800% 0.991% 98,653円 42,700,416円
当初30年 2.990% -1.605% -0.800% 1.385% 105,203円 44,313,777円
当初35年 3.080% -1.675% -0.800% 1.405% 105,543円 44,327,913円
  • 当初固定期間終了後に変動へ変更の場合-1.69%
    (ここでは変動金利へ変更は行わないことを前提に試算しています)

上記試算から、当初固定金利期間を2年か3年に設定するならば「全期間引下げプラン」、当初固定金利期間を5年以上に設定するならば「当初期間引下げプラン」の方が、総返済額を抑えられるようです。

総返済額で比較すると当初引下げの方が少ないケースが多いですが、上記はあくまで将来にわたり基準金利に変動が生じないものとして試算したものです。実際は金利が変動することを前提に考える必要があり、変動によって返済総額にも応分の誤差が生じます。特に、将来の金利上昇は返済負担を重くすることに繋がります。返済開始からの経過期間が長く、残高がある程度減っている場合は比較的小さな影響で済みますが、返済開始から間もない時期でまだ残高が大きければ、差額はより大きくなります。

史上最低水準の低金利時代が続く現在の状態がこの先も続くとしたら、より低金利で借入れできる変動金利がお得でしょう。一方で、現在の金利政策は「マイナス金利」という極めて特殊な状況にあることを忘れてはいけません。少なくとも、いつかは「ゼロ金利」まで戻る可能性を視野に入れておくべきでしょう。

ミックスについて

「お得」と「安心」。どちらも大切で決めかねてしまうという人には、ミックスプランという選択肢もあります。住宅ローンには、2種類の金利タイプ(変動金利・固定金利)を自由に組み合わせて、お得と安心を同時に手に入れられるミックスプランが用意されているケースが多いです。

≪組み合わせの一例≫

「低金利のメリットを享受しつつ金利上昇リスクを抑制したい」
変動金利2,100万円 + 20年固定1,400万円
など

ケースごとの具体的な金利選択および組み合わせの事例は、以下のページを参考にしてみてください。金利の最新情報や返済額のシミュレーションも可能です。
https://www.jibunbank.co.jp/landing/homeloan/mix/

具体的な数字でシミュレーションを

金利引下げプランの2つのパターンについてご紹介しました。大きな傾向はつかめても、借入額や具体的な金利、将来の金利変動によって決して小さくない差額が生じてしまうのが住宅ローンです。また、同じ金額・同じプランでも、「家族構成」「家計の収支状況」など、借りる人の状況によってもその影響は大きく異なります。

ご自身に合ったプランを納得して選択するためにも、実際に借り入れたい金額を用いながら、「期間の経過とともに残高はどのように減り、仮に金利が変動した場合に負担額はどのように変化するのか」「変化にどこまでだったら耐えられるのか」などについて、さまざまなパターンでシミュレーションしてみるべきです。

最も重要なのは、内容を十分に理解して活用すること。そのためにも、ローン返済シミュレーションなどの便利なツールをフル活用し、必ず具体的な金額にまで落とし込んで比較しましょう。

ライター:佐藤名ゝ美
顔写真:ライター:佐藤名ゝ美

肩書:ファイナンシャルコーチ

プロフィール:
一度きりの人生を豊かに送るために、お金と仲良く付き合う方法を発信。家計管理・マイホーム取得・保障設計・資産形成・金銭教育・終活…など、様々なテーマで個別相談やセミナー、執筆に携わる。2001年より、熊本日日新聞社発行の生活情報紙すぱいす(週刊)にて、マネー情報の連載を担当。現在、『“お金のプロ”がズバリ!家計簿チェック』『知りたい!お金の話』を連載中。

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