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住宅ローンの繰上返済を活用する方法をFPが解説

執筆者:上田 健介(ファイナンシャルプランナー)

2020年8月25日

住宅ローンを利用してマイホームを購入後、しばらく経つと繰上返済による早期返済を検討する機会が出てきます。比較的低金利な状態が続いている現在、繰上返済という方法を選択するかどうかは悩むところでしょう。

人生の三大支出は「教育資金」「老後資金」「住宅資金」ですが、住宅資金に関わる住宅ローンはライフプランにも大きく影響します。「繰上返済を選択したものの期待していた効果を得られなかった」ということのないよう、繰上返済のメリットとデメリット、さらに繰上返済の種類について確認しましょう。

住宅ローンの繰上返済とは

住宅ローンの繰上返済とは、「毎月定期的に行う返済とは別に、借入残高の一部または全部を返済すること」です。毎月の返済では利息分が返済額に含まれている一方、繰上返済では返済額を元本の返済に充てるため、効果的に元本を減らすことができます。結果として、総利息を軽減できるのです。

繰上返済のメリット・デメリット

次に、繰上返済のメリットとデメリットについて解説します。繰上返済を考えるときには、メリットだけでなくデメリットもしっかり押さえて長期的な観点で考えるようにしましょう。

メリット

①利息を軽減できる
住宅ローンの金額は数百~数千万円と大きな金額になるため、数年ではなく10年、20年、30年と長い年数をかけて返済することが珍しくありません。お金を借りている期間(=借入期間)は、利息が発生します。繰上返済を行うことで借入間を短くすれば、それだけ支払わなければいけない利息を減らせます。そして、利用している住宅ローンの金利が高ければ高いほど、さらに効果を実感できるでしょう。

②保証料が戻ってくる場合もある
借入時に別途保証料を支払っている場合、繰上返済により当初予定していた期間よりも早く完済(=すべて返済)すると、短縮できた期間に相当する保証料が戻ってくる場合があります。これを返戻金(へんれいきん)と呼びますが、返戻金の計算方法は一律ではないので、常に返戻金があるとは限りません。しかし、住宅ローンには保証料がない場合もあり、その場合はこのようなケースには当たりません。

③将来の負担を軽減できる
住宅ローンを利用し始めた時期(住宅ローンを契約したときの年齢)によっては、住宅ローンの返済が定年(60~65歳程度)後も続くケースがあるでしょう。定年後の返済は、老後の生活設計に不安を残すことがあります。退職金を繰上返済の資金に充てるケースもありますが、なるべく定期的な収入がある現役世代のうちに住宅ローンを完済しておいた方が良いかもしれません。

デメリット

①住宅ローン控除を受けられなくなる場合がある
入居してから10年間は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の適用を受けている人は多いでしょう。そんな中、繰上返済を頑張りすぎてしまったことにより返済期間が10年未満になってしまうと、本来受けられる住宅ローン控除をフルで受けられなくなってしまいます。また、借入残高が減ることで控除を受ける金額が減る場合もあります。返済に集中するあまり、せっかくの控除の制度を使い切れなかったとならないよう確認しておきましょう。

②繰上返済の手続きに手数料がかかる場合がある
繰上返済は、金融機関の窓口や電話、インターネットを通して手続きします。その際、窓口や電話での手続きには手数料が必要でも、インターネットでの手続きは無料という場合もあります。手数料の有無や有料である場合の金額は、金融機関や住宅ローン商品ごとに異なります。繰上返済を検討する段階で事前に確認しておくと良いでしょう。

③団体信用生命保険(以下、「団信」)との兼ね合い
住宅ローン契約者の多くは団信に加入しています。この団信に加入していることで、契約者に万が一のことがあっても、住宅ローンは生命保険金で完済されます。生命保険金による完済は住宅ローン残高には関係しません。繰上返済の有無を問わず完済されるため、「繰上返済を行っていなかった方がより手元に多くのお金が残っていた」ということになります。万が一のことは誰にもわかりませんし、損得の勘定だけで考えるものでもありませんが、「遺族の生活費のことを考えるならば少しでも多く残しておきたい」ということになります。

④無理な繰上返済は家計を圧迫する
繰上返済には、しばらく利用する予定が決まっていないお金を充てることになります。当然のことながら、繰上返済をするとそのお金は自分のものではなくなってしまいます。

例えば、「繰上返済後に洗濯機や冷蔵庫が故障してしまい買いかえが必要になった」としたら、その家電1つだけでも10~20万程度のお金が簡単に消えてしまうのです。また、突然の入院にもお金が必要です。医療保険でまかなうことができたとしても、一時的に立て替えられる程度には必要でしょう。

利用する予定が決まっているお金はもちろん、しばらくは利用する予定が決まっていないお金もある程度は残しておく必要があります。特に現在のような低金利の時代には、返済と貯蓄のバランスに注意しましょう。

住宅ローンの繰上返済の種類(返済方法)

繰上返済には、「一部繰上返済」「全部繰上返済」の2種類があります。

一部繰上返済

一部繰上返済には、毎月の返済額は現状のままで借入期間を短くする「期間短縮型」、そして借入期間はそのままで毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」の2種類があります。それぞれの特徴は次の通りです。

①期間短縮型
期間短縮型では毎月の返済額はそのままですが、借入期間が短くなるため、その期間に発生するはずだった利息を軽減できます。

②返済額軽減型
返済額軽減型では借入期間はそのままですが、毎月の返済額が低くなるため生活に与える負担感を軽減できます。また、繰上返済を行うことには変わりがないため、期間短縮型ほどではないですが利息を軽減できます。

具体的な数字を用いて確認してみましょう。前提条件は次のとおりです。

借入金 3,000万円
返済期間 30年(360回)
借入金利 全期間固定3.0%
ボーナス返済 なし
返済方式 元利均等返済
繰上返済 4年(48回目)支払後に500万円

その結果は次のとおりです。

期間短縮型 返済額軽減型
繰上返済までの
1ヶ月あたりの返済額
126,481円
繰上返済後の
1ヶ月あたりの返済額
126,481円
(最終回:111,049円)
103,382円
(最終回:103,181円)
返済期間 23年6ヶ月(282回) 30年(360回)
利息を含めた総支払額 40,652,210円 43,326,071円

以上の結果もふまえ、期間短縮型と返済額軽減型の特徴を表で見ておきましょう。

期間短縮型 返済額軽減型
  • 利息軽減の効果が大きく、より早く完済できる
  • 日常生活の負担感を減らせる
×
  • 短縮した期間を改めて延長することはできない
  • 利息軽減の効果が期間短縮型よりも小さい

全額繰上返済(期日前完済)

借入残高を、最終返済日の前に全額まとめて返済します。一部繰上返済はインターネット上で手続きできます。一方、全部繰上返済は、事前に金融機関窓口やコールセンターに電話連絡を行う必要があることが多いようです。元金や利息はもちろん、手数料についても事前に確認の上、不足のないよう返済資金を準備しましょう。

繰上返済を上手に活用する方法

繰上返済を上手に活用する方法について解説します。

①「早めに」繰上返済
繰上返済は早い時期に行うほど、より多くの利息を軽減できます。具体的な数字を入れて見てみましょう。

条件は次の表のとおりです。繰上返済のタイミング以外はすべて同じとしています。

借入後15年で
繰上返済
借入後5年で
繰上返済
借入残高 残り 2,000万円
残り返済期間 20年
借入金利 全期間固定1.75%
ボーナス返済 なし
返済方式 元利均等返済

この場合の結果は、次の表のとおりです。

借入後15年で
繰上返済
借入後5年で
繰上返済
繰上返済までの
1ヶ月あたりの返済額
98,826円
返済額元本 20,000,000円
利息 3,470,376円 1,587,784円

いずれも繰上返済を行っていますが、繰上返済のタイミングが借入後15年の時点と借入後5年の時点では、支払わなければならない利息に3,470,376円-1,587,784円=1,882,592円の差が出ます。繰上返済は早い時期に行った方が良いということをおわかりいただけたでしょうか。ちなみに、繰上返済を行わずに最後まで定期返済とした場合の利息は3,718,030円です。何もしないよりは繰上返済を行った方が良いように見えますが、手数料等も含めて慎重に検討しなければならないでしょう。

②「こまめに」繰上返済
いざ繰上返済をしようと決めても、「30万円たまったら」「50万円たまったら」と考えてしまうかもしれません。そこでまず、利用している住宅ローンの最低繰上額を確認しておきましょう。最低繰上額が1円から設定されていれば問題ありませんが、100万円からとなっていればすぐには行えないかもしれません。最低繰上額をクリアしているならば、こまめに繰上返済していくことをおすすめします。

③住宅ローン控除の適用期間中は控えた方が良いかも
住宅ローン控除の適用期間中に繰上返済をすると、利息は軽減できますが税金への効果が減少します。このようなときは、すぐに繰上返済はせず、適用期間が終了した後にまとめて繰上返済を行った方が良い可能性があります。ただし、この状況は利用している住宅ローンの借入金利によって異なるため、個別に検討が必要です。

繰上返済に向いている人

最後に、繰上返済を検討した方が良い人の代表例として、「期間短縮型」「返済額軽減型」に分けて触れておきます。返済に充てる資金に余裕があれば、一部繰上返済だけではなく全部繰上返済もあわせて検討しましょう。

<期間短縮型:支払利息を減少させたい、早く完済したい>

  • (1)将来の金利上昇が不安な人・現在の借入金利が高い人
    期間を短縮して早期に完済することで不安から開放されるでしょう。
  • (2)定年後も返済が続く予定の人
    主な収入が年金だけになる前の現役世代のうちに多く返済しておくと良いでしょう。

<返済額軽減型:月々の負担を軽減したい>

  • (1)子どもの教育費や生活費の確保が必要な人
    必要なときにすぐ使用できるお金をある程度確保しておきましょう。
  • (2)転職や出産等で収入減になった(見込まれる)人
    毎月の収入が低下した(する)ときには、まず生活防衛を最優先に考えましょう。

繰上返済前にはよく検討を

住宅ローンの返済は金額が大きく、長期にわたることが多いため、総合的な視点でライフプランを設計・検討することが大切です。自分1人で考えるのが難しいときには、FPや住宅ローンアドバイザーなどの専門家に相談するのも1つの方法です。

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auじぶん銀行の住宅ローンの繰上返済は「一部繰上返済」「全額繰上返済」の2種類の返済方法が利用できます。
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ライター:上田 健介
顔写真:ライター:上田 健介

プロフィール:
行政書士(特定行政書士、申請取次行政書士、著作権相談員)/ファイナンシャルプランナー(CFP®、1級FP技能士)/家族信託専門士/家族信託コーディネーター/相続診断士/相続診断協会パートナー事務所/ゆうちょ財団 金融教育支援員/認知症サポーター。
学生時代からの夢であった北海道暮らしを実現するため、2008年、兵庫県から北海道に移住。民間企業で経理業務を担当する。その後、障がいを持つ双子の育児介護のために退職を決意。約2年間、育児介護に専念。次第に障がい児とその家族を支える仕事に就きたいとの思いを抱くようになり、育児介護専念期間中、行政書士とファイナンシャルプランナーの資格を取得した。現在は、障がい児のみならず、障がい者や高齢者とその家族に対し、将来のために今準備できることを中心にアドバイスをしている。

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