2024/08/30
ネット銀行の住宅ローンの特徴とは|メリット・デメリットも紹介
執筆者:新井智美(ファイナンシャル・プランナー)
住宅ローンを取扱う銀行は数多くあります。なかには、手続きが簡単で金利も比較的低い傾向のネット銀行を利用しようと考えている人も多いのではないでしょうか。
本記事では、ネット銀行の特徴を解説し、あわせてネット銀行で住宅ローンを組むメリット・デメリットやネット銀行の住宅ローンが向いている人についても紹介します。
これから住宅ローンを組むにあたりネット銀行の利用を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
■ネット銀行とは
ネット銀行は、対面の店舗を持たないことが多い点が大きな特徴です。店舗を持たない分、コストを削減できるため、ローンの金利を低めに設定することができます。
預入れや引出しの際には、コンビニにある提携ATMが利用できたり、インターネットで24時間振込手続きができたりする便利さも魅力です。
なかには「通帳が発行されない」ことへの不安を感じる人もいるかもしれません。しかし近年は、ネット銀行以外の銀行でも紙の通帳の発行を行わず、キャッシュカードの発行のみを推奨しているところも多い傾向です。またアプリをインストールすることでスマートフォン上でもさまざまな手続きが可能になっています。
ただしセキュリティ管理は必須となります。例えばログイン認証を2段階認証にしたり生体認証にしたりするなどセキュリティ管理には、万全の注意を払っておきましょう。
ネット銀行について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
■住宅ローンが組める金融機関
住宅ローンが組める金融機関は、ネット銀行だけではありません。メガバンクや都市銀行、地方銀行のほか、信用金庫などでも住宅ローンを取り扱っています。
ちなみに金融機関は、預金業務を行っている銀行や信用金庫、労働金庫などだけではありません。預金業務を取り扱わない証券会社や保険会社、ノンバンク(貸金業者)なども金融機関に入ります。
なかでも保険会社やノンバンクで、住宅ローンを取り扱っているところも少なくありません。宅ローンのみを取扱う金融機関として有名なのが「フラット35」を提供する住宅金融支援機構です。しかし住宅金融支援機構は、民間機関ではなく政府系の金融機関に該当する点が異なります。
■ネット銀行で住宅ローンを組む3つのメリット
ネット銀行で住宅ローンを組む場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的な3つのメリットを紹介します。
●1.手続きがインターネットで簡単に行える
住宅ローンを利用するには、金融機関へ申込みをして審査を受けることが必要です。一般的に審査は、「仮審査」「本審査」に分かれており、それぞれ用意する書類も多岐にわたります。
ネット銀行の中には、申込みから契約まですべてインターネットで完結させることができるところもあります。平日の日中に時間が取りにくい人にとってはとても重宝するでしょう。
●2.低金利で利用できる可能性がある
冒頭でも少し触れたとおり、ネット銀行は対面の店舗を持たず経営コストを削減できるため、その恩恵が金利に表れています。そのため、ネット銀行は他の銀行に比べて比較的金利が低い傾向があります。
またネット銀行独自のサービスを豊富に展開しているケースもあります。住宅ローンとあわせて活用すれば、さらに金利の優遇を受けられる可能性がある点もネット銀行ならではの魅力といえるでしょう。
●3.事前審査の結果が届くまでが早い
ネット銀行の住宅ローンでは、従来の銀行と比較して事前審査の結果が届くまで早い傾向があります。銀行により異なりますが、最短即日回答のところもあります。
■ネット銀行で住宅ローンを組む3つのデメリット
手続きが簡単で、しかも低金利で利用できる点がネット銀行で住宅ローンを組むメリットです。しかし実際には、以下のような3つのデメリットもあります。メリットとデメリットの内容を比較したうえで、ネット銀行の利用が自分に合っているかどうかを判断しましょう。
●1.担当者と直接会って話すことができない
ネット銀行には、対面の店舗がないため、担当者と直接会って話すことができません。手続きや住宅ローンの仕組みに不安がある人にとっては、できれば直接会って相談しながら話を進められる銀行のほうが安心かもしれません。
ただネット銀行も電話やオンラインでの相談受付やチャットなどを用意しているため、全く相談できないわけではありません。不安がある場合は利用してみましょう(一部対面で相談や申込みを実施しているネット銀行もあります)。
一般的に住宅ローンの借入金額は、数千万円という高額になり返済期間も20~30年程度と長くなる傾向があります。住宅の購入は、一生に1度の買い物になる人も多いため、慎重になるのは当然といえるでしょう。そのため、電話やチャット、オンライン面談などを活用し、不安な点は事前に解消しておくことが大切です。
●2.審査時間が長くなる可能性がある
ネット銀行の住宅ローンは、必要書類の提出に時間がかかり、その分審査が長くなる可能性があります。なぜなら写しで構わないものはアップロードで提出できますが、原本が必要な書類は郵送で行わなければならないからです(本審査書類はすべて郵送対応が不要(アップロード可)のネット銀行もあります)。さらに不備があった場合は、差戻しもしくは追加提出となるため、その間の審査が止まってしまいます。
もちろん書類に不備があった場合の再提出もしくは追加提出は、他の銀行でもあり得ることです。しかしネット銀行の場合、提出方法が郵送であることが多いため、最終的な審査結果が出るまでの時間がかかってしまう可能性は否めません。
そのことも踏まえ、書類の提出時には不備がないか事前にしっかりと確認したうえで提出しましょう。
●3. 125%ルールや5年ルールが適用されない銀行もある
住宅ローンを利用するにあたり、金利タイプに変動金利かつ返済方法にて元利均等返済を選択した場合、一般的には「5年ルール」や「125%ルール」が適用されます。変動金利は、原則半年に1回金利が見直されますが5年ルールが適用される場合、見直された金利による返済額が反映されるのは5年後です。また見直し後の返済額が見直し前の返済額の125%を超えないルールも適用されます。
これらのルールは、金利が大幅に上昇した際のリスクヘッジとしては非常にありがたいものです。しかしネット銀行のなかには、「5年ルール」「125%ルール」が適用されないところもあります。
この場合は、見直された金利によって半年ごとに返済額が変わり、しかも大きく金利が上昇した際に変更後の返済額が変更前の125%を超えるケースもないとはいえません。
場合によっては、返済額が家計の負担になるばかりか、最悪返済不能状態に陥る可能性もあります。返済期間が長い住宅ローンでは長期的な目線で金利の動向を考えることが必要です。市場動向や政府の政策によっては、大きく金利が上昇する可能性があることは覚えておきましょう。
ネット銀行に限って言えることではありませんが、住宅ローンを利用するにあたっては、商品概要説明書を細かくチェックし、変動金利において「5年ルール」と「125%ルール」の適用を希望するなら、それが適用される銀行を選ぶようにしましょう。 ただし5年ルールには未払利息が発生する可能性がある点は注意しましょう。
■ネット銀行と他の銀行を比較する際のポイント
ここからは、住宅ローンを組む際にネット銀行と他の銀行を比較する際のポイントについて解説します。
●金利
ネット銀行は、他の銀行に比べて金利が低い点が特徴です。変動金利で見ると、メガバンクなどでは年0.3~0.4%の金利を設定しているところが多いなか、ネット銀行はおおむね 年0.2~0.3%台で提供しています。(2024年8月時点)
借入金額および返済期間により異なりますが、金利差は総返済額に大きな差を生みます。ただ掲示されている金利と実際に適用される金利が異なるケースもあるため(住宅ローンの金利は、融資実行する日時点の金利が適用される)、最終的に適用される金利で比較するようにしてください。
●審査基準および本審査にかかる時間
ネット銀行は、他の銀行に比べると審査基準が厳しいといわれています。
一般的に審査でチェックされるのは、主に以下のような内容です。
- 年収
- 勤務形態
- 勤続年数
- 返済負担率
- 物件の担保価値
特に転職したばかりの人は勤続年数が短くなるため、審査に落ちてしまう場合があります。ネット銀行は、年数で判断するケースもあるとされるため、他の銀行と比べるとどうしても厳しくなってしまいがちです。
■ネット銀行での住宅ローン借入れに向いている人の特徴とは?
手続きの簡単さや低金利を求める人は、ネット銀行での住宅ローンの借入れがおすすめです。その際には、申込条件を満たしているかどうかを必ず確認するようにしましょう。逆に窓口でじっくりと担当者と相談しながら決めたい人は他の銀行を選ぶことをおすすめします。
申込条件や自分の生活スタイルを合わせて、利用する銀行を決めるようにしましょう。
■まとめ
ネット銀行の住宅ローンは、金利が低く手続きが簡単な点が特徴です。書類の提出が郵送になるなど一部手間がかかる点はあるものの事前にきちんと確認し、準備をしておけば問題ないでしょう。またネット銀行では、携帯電話のキャリアが行っているサービスなど預金サービス以外のサービスとあわせて利用することでより金利が安くなるところもあります。
住宅ローンの申込先を検討する際には、手続きの簡単さや手数料だけでなく金利や銀行独自のサービスを比較することも忘れないようにしてください。そのうえで自分に合った銀行に申込むようにしましょう。