2024/06/17
デジタル通貨とは?いまさら人に聞けない基礎知識を詳しく解説
執筆者:馬場愛梨(ファイナンシャル・プランナー)
「デジタル通貨」や「デジタル円」といった言葉を聞いたことはあっても、どんなものかよくわからないという人は多いのではないでしょうか。
この記事では、デジタル通貨の基礎知識からメリット・デメリットまで詳しく解説します。電子マネーや仮想通貨についても紹介しますので、今後のために理解を深めておきましょう。
■デジタル通貨とは
「デジタル通貨」とは、従来の紙幣や硬貨などの「現金」ではなく、デジタルのデータ(電子情報)上で管理・利用される通貨のことです。「デジタルマネー」と呼ばれることもあります。
デジタル通貨はその場に実体があるわけではなく数字だけの存在ですが、通常の現金と同じように買い物(モノやサービスとの交換)ができます。インターネットを通しての送金や決済など、オンライン上の取引にも利用できます。
■デジタル通貨の例
デジタル通貨について、より具体的に見ていきましょう。デジタル通貨の代表例として、以下の3つが挙げられます。
- 電子マネー
- 仮想通貨
- 中央銀行デジタル通貨(CBDC)
それぞれどのようなものか解説します。
●電子マネー
電子マネーは、現金を電子化して利用できるようにしたものです。主に以下のような種類があります。
電子マネーの種類 | 特徴 |
---|---|
交通系電子マネー |
電車やバスなどでの利用が前提 |
流通系電子マネー |
スーパーやコンビニなどでの利用が前提 |
クレジットカード系電子マネー |
クレジットカードと連動させて利用する |
二次元コード系電子マネー |
バーコードなどを使って決済する |
専用のカードやスマホなどを介して支払いに利用するのが、基本的な使い方です。端末にタッチするだけなど簡単な手順で決済が完了するため、現金に比べて手間や時間を省くことができます。
●仮想通貨
仮想通貨(暗号資産)は、「インターネット上でやり取りできる財産的価値」とされています。民間の事業者などが独自に発行している通貨であり、その時の需給のバランスによって、価格が大きく変動するという特徴があります。
電子マネー同様、買い物をした時の支払いに使うこともできますが、値動きの激しさに着目して投資(投機)目的で所有している人も多くいます。
- 電子マネーと仮想通貨の違い
電子マネーと仮想通貨はオンラインでの取引にも利用できる決済手段であり、いずれもデジタル通貨に分類されます。両者の最も大きな違いは、「法定通貨」をもとに運営されているかどうかです。
電子マネーは、国や中央銀行が発行した法定通貨(日本の場合は「円」)をもとに金融機関などが提供しているサービスです。電子マネーの価値は、法定通貨の価値と同じです。
一方で仮想通貨は、その価値の裏付けとなる資産を持ちません。法定通貨と違って国や中央銀行に管理されていないため、独自の価値基盤や需給によって価値が変動します。
●中央銀行デジタル通貨(CBDC)
中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは、中央銀行が発行するデジタル通貨のことです。日本の場合は日本銀行(日銀)が発行する日本円を指すので、「デジタル円」と呼ばれることもあります。
今はまだ、実際に導入されたり導入に向けた議論が積極的に行われたりしている国はわずかです。日本を含む先進国の多くが導入に慎重な姿勢を取っていて、日銀は「現時点でデジタル通貨を発行する計画はない」と断言しています。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)は法定通貨そのもの、電子マネーは法定通貨の代替、仮想通貨は独自の通貨と考えましょう。
■デジタル通貨の広がり
近年、日本でも世界でもデジタル通貨の利用が広がっています。
●「給与のデジタル払い」解禁
2023年4月以降は労働基準法が改正され、「給与のデジタル払い」が解禁されました。これにより、労使協定の締結などの条件を満たせば、従来の銀行口座ではなく「○○Pay」などの決済サービスで直接給与を受取れるようになります。
給与のデジタル払いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
●さらなる拡大に向けて実証実験が行われている
デジタル通貨の利用拡大は、各地で議論や実証実験などが進められており、例えば以下のようなものがあります。
- デジタル地域通貨
近年は、自治体や金融機関などが特定の地域のみで利用できるデジタル通貨(デジタル地域通貨)を発行する動きが見られます。
仕組みや内容はその通貨ごとに異なりますが、専用のカードやスマホのアプリなどを通じて利用するケースが多い傾向です。プレミアム商品券のように使えるもの、ポイントが貯まってお得なものなどもあります。
- 中央銀行が行う実証実験
日本銀行は、2021年4月から中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する実証実験を行っています。今のところ「デジタル円」が発行される予定はないものの、いつか来るかもしれないその時に向けて、制度設計についての議論なども交えながら準備している状態です。
また国外に目を向けると、中国ではすでに「デジタル人民元」の大規模な実証実験が始まっており、アメリカでは、「デジタルドル」の検討に前向きな姿勢を示しています。
今後、こうした動きは拡大していくことが見込まれます。
■デジタル通貨のメリットは?なぜ導入が進んでいる?
デジタル通貨は、なぜ世界的に利用が広がっているのでしょうか。それは、現金にはない以下のようなメリットがあるからです。
- 現金なしで手軽に買い物ができる
- 紛失や盗難のリスクを抑えやすい
それぞれ見ていきましょう。
●現金なしで手軽に買い物できる
デジタル通貨の大きなメリットは、手元に現金がなくても買い物ができる点です。デジタル通貨での買い物がメインになれば、大きな財布を持ち歩いたり、ATMでお金を下ろしたり、会計時に小銭の受渡しをしたりする必要がなくなります。
基本的にお店の端末にカードやスマホをかざすだけで決済できるので、手間だけでなく時間も省けて便利です。このスピーディーさや手軽さは、デジタル通貨ならではのメリットといえます。
●紛失や盗難のリスクを抑えやすい
デジタル通貨は現金と違い、紛失や盗難などのリスクを抑えやすいというメリットがあります。
現金を落としたり盗まれたりした場合は、他人に簡単に使われてしまうおそれがあります。しかし、デジタル通貨は堅いセキュリティで守られています。デジタル通貨を使うためのカードやスマホが手元からなくなった場合でも、利用停止の手続きをするなどの対処を行えば、他人による不正利用を防げます。
また、デジタル通貨は入金や利用の記録が明確に残るという特徴もあります。日頃からデジタル通貨をメインで使っている人なら、その明細を見るだけで、使用履歴をすぐに把握できます。
■デジタル通貨を利用する上で注意しておきたいこと
デジタル通貨にはメリットだけでなく、デメリットや注意点もあります。例えば以下のようなものです。
- いつでもどこでも使えるわけではない
- 管理に工夫が必要
それぞれについて見ていきましょう。
●いつでもどこでも使えるわけではない
デジタル通貨は今後さらに広がっていくと考えられますが、現時点では対応していないお店もあります。対応しているお店でも、利用できるデジタル通貨の種類が違うため「Aは使えるけどBは使えなかった」という事態になる可能性もあります。
また、デジタル通貨はタイミングによっても利用できない場合があります。メンテナンス時、停電時、システムトラブル時などです。
いつでもどこでも使えるわけではないということを頭に入れておきましょう。現時点ではデジタル通貨のみに頼るのではなく、もしもの時に困らないように現金も持ち歩いておくのが無難です。
●管理に工夫が必要
前述のとおり、デジタル通貨は使った記録などが自動的に残るため、比較的管理しやすいでしょう。しかし、いくつものデジタル通貨を並行して利用している場合などは、現金のみの場合より把握・管理が難しくなるかもしれません。
「現金と違って使った実感があまりない」と感じ、つい使いすぎてしまう人もいます。特に、現金の管理や残額の計算の経験があまりない子どもの場合は、デジタル上の数字だけを見てもお金を使うイメージが湧きにくいので、管理に工夫が必要でしょう。
■まとめ
デジタル通貨は、デジタルのデータ上で管理・利用される通貨です。今後デジタル通貨はより身近になり、私たちの生活に広く浸透していくでしょう。「よくわからない」「何だか怖い」と避けるのではなく、将来の変化に備えてメリット・デメリットを理解しておきましょう。