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2023/3/29

2023年4月から給与の「デジタル払い」解禁!個人にはどんな影響がある?

執筆者:馬場愛梨(ファイナンシャル・プランナー)

近年、キャッシュレス決済や多様な送金サービスが広がりを見せています。それを受け、2023年4月1日以降は、給与の「デジタル払い」が解禁されることになりました。

この記事では、何がどう変わるのか、どんな影響があるのか、給与を受け取る個人(従業員)側の視点からかんたんに解説します。

■「給与デジタル払い」とは?

【給与デジタル払いの概要】

  • いつから?……2023年4月1日以降
  • どう変わる?……「○○Pay」などデジタルマネーでの給与受け取りが可能になる
  • どんな人に関係ある?……企業から給与を受け取る従業員
  • どんな影響がある?……給与の受け取り方の選択肢が広がる

労働基準法では、給与(賃金)は「通貨」で支払うこととされています。ただし、「労働者(雇われて働いている人、従業員)の同意があった場合に限り、例外的に銀行口座などへの振込が可能」というルールになっています。

(参照:e-Gov「労働基準法第24条労働基準法施行規則第7条の2」)

今回、キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化といった時代の変化に合わせて、給与の支払い方を定めたルールが改正されることになり、2023年4月1日以降は、銀行口座のほか「デジタルマネー」での受け取り(デジタル払い)も可能になります。給与の受取方法として認められる「デジタルマネー」は、おもにスマホ決済サービス(○○Payなど)が想定されています。

ただし、実際に「デジタルマネー」として給与を受け取るためには、スマホ決済サービスを提供する資金移動業者が厚生労働省の審査を受けることや、企業側と従業員側でデジタル払いについての労使協定を締結する必要があるため、2023年4月1日以降にこのような手順を経たうえで実現することとなります。今後、厚生労働省の公式サイトにデジタル払いの対象となるサービスを提供する資金移動業者が掲載される予定です。

あくまで給与を受け取る側の同意が前提なので、給与のデジタル払いが解禁されたからといって、希望していない人が突然デジタル払いを強制されることはありません。

■給与デジタル払いのメリット

給与のデジタル払い解禁は、個人(従業員)側にとってどんなメリットがあるのでしょうか。

・キャッシュレス決済を利用しやすくなる

銀行口座ではなく、普段使っている「○○Pay」などの資金移動業者口座に給与が直接入金されることで、毎回チャージしたり、銀行口座からキャッシュレス決済用の口座へ資金移動したりする手間が省けます。

・将来的には給与を受け取る頻度が上がったり日本の口座が不要になったりする可能性も

デジタル払いにすると企業側は振込手数料を節約できます。そのため現在は「月1回」が一般的な給与振込について、「週払い」や「日払い」を選択肢として検討する企業が増えるかもしれません。

また、銀行口座がなくても給与の受け取りや送金ができるため、外国人など日本の口座を持っていない人にも便利です。

デジタル払い解禁によって、短時間勤務や非正規雇用など多様な働き方に対応した給与支払いにつながるかもしれません。

・個人(従業員)を守るためのルールが整備されている

デジタル払いになったことで個人が不利益を被ることがないよう、デジタル払いに参加できる資金移動業者(スマホ決済サービスなどを運営する会社)には、いくつかの要件が課されています。たとえば、仮に資金移動業者が破綻しても全額保証する仕組みを有すること、などです。給与のデジタル払いが安心して使えるよう準備が進められています。

そのほか、少なくとも毎月1回は手数料無料で出金できるようにする、ATM等で1円単位の受け取りができることなども規定されています。通常は「○○Pay」などの残高を現金化する際は手数料がかかり「100円以上」などの制限があることも多いですが、給与デジタル払いの場合は受け取る側がより便利に使えるようになっています。

■給与デジタル払いの注意点

メリットだけでなく、給与デジタル払いを選択する場合の注意点も確認しておきましょう。

・現金支払いや家賃の引き落としなどに対応しにくい

給与をデジタルマネーで受け取ると、キャッシュレス決済に対応していない場面では少々不便かもしれません。現金支払いに限られる場合に備え、一部を現金化しておくことや、家賃や公共料金など毎月の自動引き落としのために一部を銀行口座に入れる、などの対応をする必要があります。

・「残高上限:100万円」という制限がある

先述の「国が資金移動業者に対して設定したルール」では、資金移動業者口座の残高上限を100万円以下にすることも求められています。そのため、銀行口座のように100万円を超える額のお金を貯めておくことができません。受け取る給与の金額が高い人などは、すぐに上限に達してしまうことも考えられます。

デジタルマネーと銀行口座の両方に分けて入金することも可能ですが、多少管理が煩わしくなるかもしれません。

・ハッキングや不正利用などのリスクがある

デジタルマネーに限りませんが、ハッキング(他人からの不正アクセス)や不正利用のリスクはあります。「どうしてもセキュリティ面が不安」という人もいるでしょう。

本人に落ち度がないのに不正にお金を引き出されたり使われたりした場合は、資金移動業者が損失を補てんすることになっています。ただし、補てんを受けるまでの手間や時間はかかるでしょう。

■まとめ

給与のデジタル払いが解禁されれば、個人(従業員)の生活の効率化や利便性の向上につながる可能性があります。キャッシュレス決済をよく利用する人なら特にメリットを感じやすいでしょう。

一方で、デジタルマネーだと使いにくい場面も出てくるかもしれません。もし自分の勤務先がデジタル払いの導入を決めたら、従来の銀行振込かデジタルマネーか、メリット・デメリットを踏まえてよく考えたうえで受取方法を選びたいですね。

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