2023/08/23
つみたてNISA(積立NISA)のメリット・デメリットを詳しく解説!
監修者:新井 智美
資産形成の手段として、つみたてNISAに注目する方が増えています。しかし、投資にはリスクがつきものであるため、メリットとデメリットが気になる方も多いでしょう。
そこで、始める前に知っておきたいつみたてNISAの概要を、デメリットも含めて解説します。
つみたてNISA(積立NISA)とは?
つみたてNISAとは、2018年1月からスタートした個人向けの「少額投資非課税制度」のことです。日本国内に居住する18歳以上(口座を開設する年の1月1日時点)を対象としており、年齢の上限はありません。年間40万円まで積立投資ができ、運用益などに対する非課税期間は最長20年間です。
投資対象は長期の積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されており、投資に不慣れな方や初心者でも利用しやすい投資です。
NISAの種類
NISAには、つみたてNISAのほかにも、一般NISA、ジュニアNISAがあります。いずれも個人向けの制度ですが、投資対象や金額などに違いがあります。
一般NISAはつみたてNISAと投資対象が異なり、上場株式やETF、公募株式投信、REITなど幅広い商品への投資が可能です。年間120万円まで購入でき、最長5年間の非課税期間があります。
ジュニアNISAは一般NISAの仕組みを未成年者向けにしたもので、株式・投資信託等を年間80万円まで購入できます。最大5年間非課税で保有できる点も一般NISAと同じです。しかし、つみたてNISAも一般NISAも資金をいつでも引き出せるのに対し、ジュニアNISAは原則として18歳まで資金を引き出せません。
つみたてNISA(積立NISA)の5つのメリット
つみたてNISAを始めることで期待されるメリットには、主に次の5つがあります。
少額から投資を始められる
つみたてNISAは、毎月100円、1,000円、1万円など、少額の積立額で始めることができます。まとまった金額を投資に費やすことに抵抗がある方や、家計の負担にならないか不安がある方も、つみたてNISAであれば無理のない範囲で投資できるでしょう。
毎月の最低購入金額は金融機関ごとに異なるため、詳しくは口座を開設した金融機関にお問い合わせください。
運用益・分配金が20年間非課税になる
つみたてNISAは、運用益・分配金が最長20年間非課税です。
通常、投資で得た利益は、給料などの収入と同じように課税されます。税率は20.315%(所得税と復興特別所得税15.315%、住民税5%)で、例えば投資信託で10万円の利益が出れば、20,315円の税金を支払う必要があります。
しかし、つみたてNISAでは運用益や分配金を得ても20年間は課税されず、利益をそのまま再投資できます。
投資リスクの軽減が期待される
長期にわたって一定額の投資商品を買い続ける手法を「ドル・コスト平均法(定額購入法)」といいます。つみたてNISAはこの手法による買い付けが行われるため、高値のときは少なく、安値のときは多く購入でき、結果として平均買付単価を平準化することができます。
投資商品の価格は日々変動するため、高値と安値を見極めるのは困難です。高額な投資商品を一度にまとめて買うと、価格変動の影響を受けやすくなりますが、つみたてNISAなら価格変動リスクが抑えやすくなります。
資金をいつでも引き出せる
つみたてNISAは、ご自身のタイミングでいつでも商品を売却できます。
老後資金として長期間運用するだけではなく、マイホーム購入や子どもの教育資金など、必要に応じて資金を引き出せるのも魅力です。
投資初心者でも始めやすい
つみたてNISAの対象は、金融庁が長期の積立と分散投資に適していると認めた投資信託のみです。原則として販売手数料がかからず、信託報酬は一定水準以下であり、投資初心者でも選びやすいのがメリットといえます。
つみたてNISA以外に初心者が始めやすい投資について知りたい方は、こちらもご確認ください。
つみたてNISA(積立NISA)の3つのデメリット
投資初心者向きとされるつみたてNISAですが、投資商品である以上、リスクはつきものです。そこで、次につみたてNISAで注意すべきデメリットを3つ解説します。
投資対象が限定されている
つみたてNISAで投資できる商品は、金融庁の定める条件をクリアした一定の投資信託、ETFに限られています。自由に投資を楽しみたい方にとっては物足りなく感じるかもしれません。
さまざまな投資商品を積極的に運用したい場合は、一般NISAも検討してみましょう。一般NISAは上場株式、株式投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)など幅広い投資商品が対象です。
損失が出たときに損益通算できない
証券会社に一般口座や特定講座などの複数の口座を持っている場合、確定申告によって、運用で出た損失を別の口座で出た運用益で相殺できます。この損益通算を行ってもなお損失が残ったときには、翌年以後3年間は繰り越して控除(繰越控除)が可能です。
しかし、つみたてNISAは損益通算や繰越控除の対象外です。万が一損失が出ても、ほかの口座の利益と相殺できません。
非課税投資枠が少ない
3種類のNISA(つみたてNISA、一般NISA、ジュニアNISA)には、それぞれ非課税投資枠が設定されています。一般NISAが年間120万円、ジュニアNISAが年間80万円であるのに対し、つみたてNISAは年間40万円です。
これにより、非課税投資枠の少なさをデメリットに感じる方もいるかもしれません。
ただし、一般NISAとジュニアNISAの非課税運用期間は最長5年ですが、つみたてNISAは最長20年です。120万円を5年間運用すると600万円、40万円を20年間運用すると800万円となり、非課税で運用できる総額はつみたてNISAのほうが多いです。そのため、つみたてNISAの非課税投資枠のほうが少ないとは一概にはいえません。
短期間で大きな収益を上げられない
つみたてNISAは、ご自身で選んだ投資商品を毎月一定額で購入する仕組みのため、商品の値動きにあわせて注文する必要がありません。
そのため、価格変動リスクを抑えられるメリットがあるものの、値動きに連動した買い注文を出せないため、短期間で大きなリターンを狙うのはむずかしいでしょう。
つみたてNISA(積立NISA)をやめた方がよい方とは?
18歳以上の方ならどなたでも利用でき、リスク分散に適した長期の積立投資を実現するつみたてNISAは、世代を問わず多くの方に適した投資手法です。
しかし、人によっては、つみたてNISAが向いていない、ほかの投資方法を検討した方がよい場合もあります。以下に該当する方は、つみたてNISAを始める前によく検討しましょう。
- 積極的に投資して短期間でリターンを得たい方
- まとまった資金を投資にかけられる方
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
積極的に投資して短期間でリターンを得たい方
つみたてNISAは、長期にわたって毎月一定額をコツコツと積立てて、リスクを抑えながら利益を得ることを目的とした制度です。そのため、積極的に投資を行い、短期間で利益を得たい方には不向きな投資といえます。
ご自身で市場の動きを読んで商品選びや売買のタイミングを見極める時間をとれる場合は、株式投資も可能な一般NISAの利用も検討しましょう。
まとまった資金を投資にかけられる方
一般的に、投資は元手が大きいほど成果を上げるまでの時間を短縮できます。例えば、10%のリターンが得られる運用で最終的に10万円の収益を上げるには、元手が10万円だと10年かかりますが、元手が100万円だと1年です。
まとまった資金を投資にかけられる方は、つみたてNISAよりも非課税投資枠の大きく、幅広い商品への一括投資が可能な一般NISAを選択するとよいでしょう。
2024年から新NISAが始まる!
2024年1月から新NISA制度が始まります。現行NISA(つみたてNISAと一般NISA)とは主に次のような違いがあります。
- 「つみたて投資枠(つみたてNISA)」と「成長投資枠(一般NISA)」の2種類が併用可能に
- 非課税保有期間を恒久化
- 非課税投資枠を増額(つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円)
- 売却すると翌年以降に非課税投資枠が復活
現行NISA(つみたてNISA・一般NISA・ジュニアNISA)は2023年末で終了されますが、非課税期間が終わるまでは引き続き運用可能です。新NISAの非課税保有限度額は全体で1,800万円(そのうち成長投資枠は1,200万円)までと決まっていますが、2023年につみたてNISAを始めれば非課税投資枠分の最大40万円分をプラスできます。
ただし、現行NISAは新NISAへの移管はできないため、つみたてNISAの非課税期間が終わった場合は売却あるいは課税口座への払い出しが必要です。
デメリットを押さえてつみたてNISA(積立NISA)の検討を
つみたてNISAは、長期の分散投資を目的とした安全性の高い商品に限定されている、少額から始められるなど、投資初心者でも始めやすい制度です。損益通算ができないなどのデメリットはありますが、運用益が20年間非課税になる点は資産形成には大きなメリットです。
2024年からは新NISA制度が始まるため、現行のつみたてNISAを始めるなら2023年の今がラストチャンスです。メリットとデメリットをふまえたうえで、つみたてNISAの運用を検討しましょう。