いよいよ発効「TPP」は家計にどう影響する?
執筆者:三原由紀(ファイナンシャルプランナー)
2019年2月22日
以前はよくニュースにも取り上げられていた「TPP」ですが、最近あまり聞かなくなったと思いませんか?でも、なくなったわけではありません。2018年12月30日に「TPP11協定」が発効したほか、TPP参加11ヵ国による「TPP委員会」が2019年1月に東京で開催されるなど、実は着々と進んでいます。TPP発効によって、私たちの暮らしはどうなるのか?その影響について考えてみたいと思います。
TPPとは何なのか?参加するメリットは何?
TPPは、「環太平洋パートナーシップ協定」のこと。協定を結んだ国同士の農産物や工業製品の関税を撤廃または削減するなどして、「一つの経済圏」を作り上げて行こうというものです。
日本以外の参加10ヵ国は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムです。当初は米国も入っていましたが、2017年1月にトランプ政権が離脱を表明しました。
日本が参加するメリットとして考えられるのは、人口減少が進む日本にとっては経済圏が広がり、貿易が拡大するなどの新たな成長が見込める点でしょう。
TPPの発効で家計はどうなる?
家計への影響を考えてみましょう。まず、食品の関税が撤廃されます。農林水産物については、82%にあたる品目で関税が撤廃されるといいます。
ただし、国内農産物の重要5品目と言われるコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物については生産者の暮らしを守るため段階的に引き下げられたり、例外が設けられたりします。
例えば、「牛肉」については38.5%の関税が27.5%に引き下げられ、16年かけて最終税率は9%になります。日本の輸入牛肉の約半数がオーストラリア産なので、既にスーパーなどで値下げされているかもしれません。焼肉で食べるハラミなどの牛内臓は、12.8%から6.4%になり、13年目に撤廃されます。
「チーズ」については、日本人の嗜好に合うモッツアレラ・カマンベールなどのナチュラルチーズやプロセスチーズなどの加工チーズは現行関税(29.8%から40%)が維持されます。一方、チェダー・ゴーダなどの熟成チーズやクリームチーズは16年かけて関税が撤廃されます。
食の安全について懸念の声が上がっていますが、残留農薬や食品添加物の基準、遺伝子組み換え食品などの安全性確認については、今まで同様に検査・規制が行われます。
食品以外では、締約国間のオンライン取引について法令が整備されることから、安心してネットショッピングができるようになることや、日本で契約した携帯電話を海外で利用する際の国際ローミング料金の引き下げなども期待されています。
TPPでメリットがあるのは輸出関連の大企業だけ?
TPPではモノの関税が撤廃されたり引き下げられたりするだけでなく、サービス・投資なども自由化されます。海外進出という観点で、日本企業にとっては規制の緩和や撤廃が進むことは望ましいでしょう。
例えば、ベトナムではTPP発効後5年の猶予の後、外資規制の緩和が行われることからコンビニやスーパーなど小売流通業の進出が加速することが見込まれます。日本の流通業者や農産物供給者にとっても、販路拡大のチャンスになります。
「関税撤廃」と聞くと、自動車会社など輸出産業にだけメリットがあるように思われるかもしれませんが、下請の中小企業にとっても受注拡大と売上増が期待できます。
中小企業に対しては、商談のサポートなどの支援が行なわれます。電子商取引の促進や税関手続きの迅速化や簡素化など総合的な環境整備により、海外展開のハードルが下がるでしょう。
消費者にとっては、食料品の関税が下がって家計の支出が減ったり、オンライン取引の環境が整備されて、国境を越えたネット取引を安心してできるようになったりするメリットが期待できます。食費が浮いた分を他の消費に回せば、経済活動も活発になるかもしれません。