2025/01/09
金融リテラシーとは? 意味や身につけたいお金の知識を紹介
執筆者:滝口誠(たきぐちまこと)

現代の日常生活の中で、お金は現金だけでなく、クレジットカードや電子マネーなどさまざまな形で利用されています。キャッシュレス決済の導入によりスマートフォンさえあれば、電車に乗ったり、買物をしたりすることも可能です。
しかし、長い人生の中においては、家や車などの高額商品の購入をはじめ、資産形成を目的とする金融商品の購入や、病気や災害に備える保険の加入など、目的に合わせて多種多様な金融商品の中から選択しなければならないときがあります。
また、経済的に自立して金融トラブルを防ぎ、より良い生活を送るためも、金融リテラシーはしっかり身につけておきたい重要な知識といえます。
この記事では、金融リテラシーの基本から実生活で役立つ具体的なスキルまでを解説します。
■金融リテラシーとは?
金融リテラシーとは、お金に関する知識やスキルを持ち、日常生活や経済活動で正しい意思決定を行う能力のことです。
収入・支出の管理や貯蓄の方法、投資、保険、年金、借入れや返済など、金融商品の仕組みやリスクを理解し、将来の計画に応じて適切にお金を管理する能力も含まれます。
金融リテラシーが高ければ、予期せぬ経済的な困難に対しても冷静に対応することができ、安定した生活を送ることが可能になり、長期的な資産形成を進めやすくなります。
■金融リテラシーが求められる理由
金融リテラシーが求められる理由として、現代社会における経済や金融の複雑化と、リスクの多様化が挙げられます。
例えば、現代社会における金融商品は、株式や債券だけでなく、投資信託、保険、住宅ローン、クレジットカード、ビットコインといった暗号通貨など多種多様であり、選択肢が増えているなかで、各商品の仕組みやリスクを正しく理解し、適切に選択するスキルが求められます。
また、平均寿命が延びたことによって計画的な老後の備えが大切であることや、失業や病気、事故、災害などの経済リスク、巧妙化する金融詐欺や詐欺商法から身を守ることも必要です。
金融リテラシーがあれば自立した経済生活を送りやすくなり、将来に対する計画性を持つことで経済的な安定が期待できるため、現代においてますます重要視されています。
■身につけたい基本となる4つの金融リテラシー
金融リテラシーを身につけることで、日常の資産管理から長期的な資産形成まで幅広く役立てることができます。
まずは、基本の4項目についてみていきましょう。
●家計管理
家計管理では、収入と支出のバランスを取ることが基本です。
まず、月ごとの収入と支出を把握して予算を立て、無駄遣いを控えて家計の改善を図ることで、安定した生活基盤を築くことが可能になります。
また、無理のない範囲で貯蓄を増やす習慣を身につけることも重要です。
効果的な方法としては、支出を固定費と変動費に分け、節約できる部分がないかを検討します。保険などの固定費の見直しは効果的です。
また、家計簿アプリや予算管理ツールを活用することもおすすめです。
●生活設計
生活設計とは、結婚や子育て、教育、退職などのライフイベントに備えて計画的に資金を準備することです。生活設計を行うことで、将来のライフイベントやリスクに備えやすくなります。
例えば、子どもの教育資金や退職後の生活費を考慮し、早い段階から積立や投資を行っておけば、いざというときに慌てずに済むでしょう。
長期的な視野を持ち、ライフイベントやリスクに備えて資産を管理することで、望む生活を実現しやすくなります。
●金融と経済の基礎知識/金融商品を選ぶスキル
資産形成やリスク管理において、経済や金融の基本的な仕組みを理解し、その知識をもとに最適な金融商品を選択するスキルも重要です。
保険やローン、投資信託など金融商品にはそれぞれメリットとデメリットがあります。それらをしっかり理解し、さらに自分の目標や許容できるリスクも踏まえ、複雑な金融市場や商品の中から適切に選ぶことができるようになれば、後々のトラブルを防ぐことにもつながります。
●外部の知見の適切な活用
金融の専門家や信頼性の高い情報源からの知識を適切に取入れ、それをもとに自分に合った意思決定を行いましょう。
まず、信頼できる情報源として、政府機関・金融機関のレポートや信頼性の高い金融ニュース、専門家による解説などが挙げられます。
また、金融リテラシーの基本的な知識を学ぶために、公的機関や専門家が提供する教育コンテンツを見たり読んだり、必要に応じてファイナンシャルプランナーや証券アナリストなどの専門家に相談したりすることもおすすめです。
専門家の知見を適切に活用することで安定した資産運用が可能になりますが、外部の知見はあくまで参考に留め、最終的には自分で判断できるように知識とスキルを磨きましょう。
■年代別金融リテラシーの高め方
年代ごとに適した金融リテラシーを高めるには、それぞれのライフステージにおいて、異なる経済状況や目標に応じた知識・スキルの習得を意識することが重要です。
2012年11月、金融庁は関係省庁や関係団体、有識者をメンバーとする「金融経済教育研究会」を設置し、これからの金融経済教育のあり方について話し合い、2013年4月に研究会報告書を公表しました。
この報告書で示された「金融リテラシー・マップ」は「生活スキルとして最低限身に付けるべき金融リテラシー」を具体化して、年代別にまとめたものです。
それぞれの年代で求められる金融リテラシーをまとめました。どのような知識やスキルを身に付ける必要があるのか、見てみましょう。
10代 |
収入と支出の管理 |
お小遣いやアルバイトの収入を使いすぎないよう、収入に合わせた支出を意識し、予算の立て方を学ぶ。 |
貯蓄の重要性 |
収入の一部を貯蓄することの重要性を理解し、将来のために少額でも貯金をする習慣を持つ。銀行口座の開設や、利息の仕組みについても学ぶ。 |
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基本的な金融知識 |
金利、複利、税金といった基本的な概念を理解する。家庭・学校で経済の基礎について学び、実生活での応用力を高める。 |
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20代 |
収支管理と生活設計 |
社会人として本格的な収入が入ることから、収入と支出のバランスを取り、将来のライフイベントを意識した生活設計を立てる。 |
資産形成の基礎 |
貯金の他、積立投資や少額の投資信託など、リスクを抑えた運用方法を学ぶ。投資の基本知識や商品の選び方、リスクとリターンの関係について理解する。 |
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保険の理解 |
医療保険や生命保険など、自分に必要な保障を見極め、万が一の事態に備える。過剰な保険に入らず、適切な保障額を設定する。 |
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30代 |
ライフイベントの準備 |
結婚、住宅購入、子育てなど、生活の変化に伴う大きな支出が増えるため、長期的な生活設計と貯蓄計画を立てる。 |
積極的な資産運用 |
資産形成を本格化するため、株式や投資信託など投資商品に慣れつつ、自分のリスク許容度に合った資産運用を行う。 |
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負債の管理 |
住宅ローンなどを検討する場合、返済計画や金利の仕組みについて理解し、無理のない借入れを行う。 |
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40代 |
資産運用の最適化 |
資産の見直しを行い、リスク許容度や市場環境に合わせ、中長期的に安定したリターンが得られるよう、資産配分を検討する。 |
教育資金の確保 |
増加する教育費に合わせ、計画的に準備する。学資保険や積立などリスクが低めの方法も選択肢に入れる。 |
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老後資金の意識 |
少しずつ老後資金の準備を始め、老後の生活に必要な資金を計算し、年金や退職金について理解を深める。 |
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50代 |
資産の保全とリスク低減 |
老後の資金確保を最優先とし、リスクが大きい投資から、流動性が高く、リスクが低い資産を増やし、資産保全に重点を置く。 |
年金制度の理解 |
年金の仕組みや受取り方法を理解し、不足する分の生活費をどう補うかの計画を立てる。 |
|
医療費の準備 |
健康リスクに備え、保険の見直しや医療費の準備を行う。 |
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60代以降 |
資産の取り崩し計画 |
生活費の見直しや必要な支出の優先順位を付けながら、年金や退職金などこれまでに築いた資産を計画的に取り崩す計画を立てる。 |
医療費・介護費の備え |
医療費や介護費の負担増に備え、必要に応じて介護保険や医療保険を活用し、不足分の資金を確保する。 |
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相続と資産管理 |
引き継ぐ資産がある場合、家族のために相続や資産分配についての準備を進める。税制を理解し、負担の少ない方法での資産移転を検討する。 |
■代表的な金融トラブル
金融リテラシーが低いことによって起こり得る代表的な金融トラブルとして、詐欺や悪質な投資勧誘、ローン・借金による返済問題、無計画な資産運用、クレジットカード・リボ払いに関連した支払いトラブルなどが挙げられます。
未公開株への投資や「高利回りのFX(外国為替証拠金取引)」を紹介する詐欺も増えており、金融リテラシーが不十分なために遭われる方がいます
また、カードローンやキャッシング、消費者金融など、高金利のローンやリボ払いの仕組みを理解せずに利用すれば、元本よりも多くの利息を支払うことになり、借金が膨らむ原因になります。
このような金融トラブルを避けるには、金融リテラシーを向上させ、日常的に収支を管理し、場合によっては専門家に相談することが大切です。
■まとめ
金融リテラシーを身につけることは、経済的な安定や将来の安心を確保するために不可欠です。
金融知識やスキルが不足していると、詐欺や悪質な投資勧誘、借金の問題、クレジットカード・リボ払いの返済困難といった金融トラブルに巻き込まれるリスクが高まります。
こうしたトラブルを回避するためにも金融リテラシーを高め、変化の多い経済環境の中で安定した資産形成と健全な経済生活を目指しましょう。