2024/06/17
住宅ローンのボーナス払いはお得か|メリットやデメリットを解説
執筆者:新井智美(ファイナンシャル・プランナー)

住宅ローンの返済には、毎月の返済に加えて、年に2回のボーナス月に多く返済を行うボーナス返済を選択することができます。「毎月の返済負担をできるだけ軽くしたい」という気持ちから、ボーナス払いの利用を考えている人もいるのではないでしょうか。
ボーナス払いを利用するにあたっては、仕組みやメリット・デメリットをしっかりと理解しておく必要があります。
ボーナス払いを利用することで、途中で支払いが困難になったり、最終的な利息負担が大きくなったりすることのないように、しっかりとした返済計画を立てるようにしましょう。
■住宅ローンのボーナス払いとは?
住宅ローンのボーナス払いとは、毎月の返済額に加え、ボーナス月に多く返済する方法のことです。
返済総額に占めるボーナス払いの割合は自由に決めることができますが、多くの金融機関は40%まで、もしくは50%までと上限を設定しています。ボーナス払いを利用する際には、住宅ローンを借入れる金融機関が定める範囲内で、無理のない金額に設定するようにしましょう。
また、契約当初に決めたボーナス払いの割合やボーナス払いの月などを後で変更できない金融機関もありますので、あらかじめ変更が可能かどうかを確認しておきましょう。
■ボーナス払いを利用することで返済額はどのくらい変わる?
では、ボーナス払いを利用することで、返済額がどのくらい変わるのかを見ていきましょう。計算する上での条件は、以下のとおりとします。
- 借入額:4,000万円
- 金利:年2%(固定金利)
- 返済期間:35年
- 返済方法:元利均等返済
- ボーナス払いの初回返済月:0年6ヶ月後
ボーナス払いの割合 | 毎月の返済額 | ボーナス分の返済額(ボーナス月あたり) | ボーナス月の返済額 | 総返済額 |
---|---|---|---|---|
なし |
13万2,505円 |
0円 |
13万2,505円 |
5,565万1,862円 |
10% |
11万9,254円 |
7万9,731円 |
19万8,985円 |
5,566万7,903円 |
20% |
10万6,004円 |
15万9,462円 |
26万5,466円 |
5,568万3,767円 |
30% |
9万2,753円 |
23万9,193円 |
33万1,946円 |
5,569万9,856円 |
40% |
7万9,503円 |
31万8,925円 |
39万8,428円 |
5,571万5,701円 |
50% |
6万6,252円 |
39万8,656円 |
46万4,908円 |
5,573万1,770円 |
ボーナス払いの割合を高くするほど、毎月の返済額を抑えられますが、総返済額は増える結果となります。
■住宅ローンのボーナス返済を利用するメリット
住宅ローンの返済でボーナス払いを利用することのメリットは何でしょうか。
●毎月の返済額を抑えられる
上で試算した表を見るとわかるとおり、ボーナス払いを活用することで、毎月の返済額を抑えられます。また、ボーナス払いの割合が高いほどその効果が高まります。
毎月の返済額が抑えられれば急な出費にも対応できますし、預貯金に回すお金を増やすこともできます。住宅ローンの返済以外の出費に柔軟に対応できる点が、ボーナス払いを利用するメリットといえるでしょう。
また、車のローンや教育ローンの支払いがある場合も、ボーナス払いを利用して毎月の返済を抑えることで家計に余裕を持たせることができます。
■住宅ローンのボーナス返済を利用するデメリット
ボーナス払いにはデメリットもあります。デメリットの内容をしっかりと理解し、最終的にボーナス払いを利用するかどうかを決めましょう。
●ボーナスがなかった時の支払いが困難になる
公務員や大手企業の社員など、安定した収入を得られる場合はそこまで心配することはないかもしれませんが、ボーナスは会社の業績によって支給の有無が決まります。
また、支給されたとしても業績や評価によっては前回よりも下がる可能性があるため、ボーナス払いに頼りすぎるのは危険です。
また、転職した際にはボーナスがしばらく支給されない可能性があることも覚えておきましょう。
●ボーナス払いを利用することで利息負担が大きくなる
ボーナス払いのデメリットとして特に注意してほしいのは、ボーナス払いを利用することで利息負担が大きくなり、総返済額が増えてしまうことです。
一般的にはボーナス払いをすることで元本の返済が一気に進むため、最終的な利息負担が少なくなると考えられがちですが、利息の計算は毎月の返済額とボーナス月の返済額とで分けて考えられる点がボーナス払いの特徴です。そのため、毎月の返済額が少なければその分利息の負担は大きくなり、年に2回のボーナス払いでは利息負担の減少をカバーできないことがあるのです。
ボーナス払いを利用するにあたっては、この仕組みをしっかりと理解しておくことが大切です。
■住宅ローンのボーナス払いを利用する際の注意点
住宅ローンのボーナス払いを利用するにあたっては、以下の点に注意しましょう。
●無理のないボーナス払い額を設定する
「ボーナスが年に2回支給される」と思っていても、急な業績悪化などの理由で支給されない、もしくは減額される可能性があります。そのため、ボーナスが支給されなかったとしても返済できる程度の、無理のない割合に設定することが大切です。
金融機関のウェブサイトにはボーナス払いを利用した際の返済額を知ることができるシミュレーターが用意されているので、ボーナス払いの割合について複数のパターンでシミュレーションを行い、最終的に無理のない返済額に収まる割合を決めましょう。
●ボーナスが支給されなかった際の対処法を考えておく
ボーナスが支給されなかった際は預貯金で支払えればよいのですが、その余裕がないと返済ができなくなってしまいます。
一定期間返済ができなくなってしまうと信用情報機関に信用事故情報として登録される可能性があります。信用事故情報として登録された場合、クレジットカードの作成やキャッシングの利用などが難しくなってしまいます。
また、返済が遅れると遅延損害金が発生し、毎月の返済額に日割り加算されます。返済が遅延すればするほど遅延損害金の金額も大きくなるため、返済に遅れないように、また遅れてしまった場合もなるべく早く返済するようにしましょう。
急にボーナスが支給されなかった際も住宅ローンの返済ができるよう、最低でも、1年間分のボーナス払い額は預貯金で確保しておくようにしましょう。資産運用を行っている場合は運用益をボーナス払いに充てることもできますが、その時の相場が必ずしも良いとは限りません。不確定な要素に頼るのではなく、必ず支払える方法で準備しておくことが大切です。
■ボーナス払いが難しくなった時の対処法は?
ボーナス払いを利用しており、ボーナス月の支払いが難しくなった際にはどのように対応すればよいのでしょうか。
考えられる対処方法として、以下のようなものが挙げられます。
●借入れている金融機関に相談する
例えば、ほかの手段で資金調達が可能であれば、「ボーナス払いの月を変更したい」といった要望に応えてくれる金融機関もあります。
窓口で相談する必要があるケースや、専用のアプリで簡単に手続きができるケースもありますので、まずは借入れている金融機関のウェブサイトで確認してみましょう。ウェブサイトではわからない場合は、コールセンターへ問い合わせてください。
一般的な手続き方法は、まず金融機関に変更したい内容を伝え、申請書類を提出した上で審査に通る必要があります。変更手続きに手数料が発生するケースもありますので、併せて確認しておきましょう。
●住宅ローンを借換える
契約内容を変更できない場合は、住宅ローンを借換える方法があります。住宅ローンを借り換え、現在の収入状況に合った返済方法に変更することで、ボーナス払いの返済ができないといった状況を回避できます。
ただし、借換えるためには新規で申込み、審査に通る必要があります。収入や勤務年数などの状況が最初の住宅ローン借入時と比べて悪くなっている場合、希望する借入金額によっては審査に通らないこともあります。また借換えには事務手数料や登記費用など諸費用がかかる点や、諸費用も含めた借換えにより借入額が増えると利息負担が増える点には注意が必要です。
■まとめ
住宅ローンのボーナス払いを利用することで毎月の返済額を抑えられますが、最終的な利息負担が大きくなる、ボーナスが支給されなかった時に返済が困難になる可能性があるといったデメリットもあります。
ボーナス払いを利用する際には、ボーナス月の返済額を無理のない金額に設定し、もしボーナスが支給されなかった時のことを考えて預貯金で備えておくことが大切です。
また、どうしても返済できない場合は借換えという方法もありますが、申込んで審査に通るまでには時間がかかるので、早めに行動を起こす必要があります。そういう場合に備えて、住宅ローンを借入れた後でもボーナス払いの月を変更できるなど、柔軟に対応してくれる金融機関を選択するのもよいでしょう。