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特集 | 資産運用

2024/03/29

分散投資とは?メリットやデメリット、注意点を紹介

監修者:新井 智美

はじめて投資をする場合、「損失を出してしまわないか」と不安や悩みを抱える方もいるのではないでしょうか。投資リスクを減らす方法の1つに分散投資があります。

分散投資は、リスクを分散して投資できる方法です。分散投資の基本的な内容やメリット・デメリット、分散投資の方法や注意点を解説します。

分散投資とは?

分散投資とは、資産や時間、地域などを分散して資産運用する方法です。

1つの投資先に集中して投資をすると、その資産の値動きでご自身の運用状況全体が左右されます。投資先の業績低迷や経済状況の変化が生じた場合に、資産が大幅に目減りする可能性も否定できません。

分散投資の考え方を取り入れると、1つの投資先の業績が低迷して資産が目減りしても、その他の資産は影響を受けません。分散投資は、損失を抑えて安定したリターンを求める場合に適した運用方法です。

なお、分散投資には「資産の分散」「時間の分散」「地域の分散」の3つの考え方があります。次の章では、それぞれの詳しい内容を紹介します。

資産の分散

資産の分散は、特性が異なる複数の資産に投資を分散する方法です。投資の対象となる金融商品にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特徴があります。

主な金融商品の種類とそれぞれの特徴は以下の通りです。

金融商品の種類 特徴
国内株式
  • 国内企業が発行する株式
  • 譲渡益や配当金、株式優待で利益を目指す
外国株式
  • 海外企業が発行する株式
  • 国内株式と比較すると為替リスクやカントリーリスクの影響を受けやすい
国内債券
  • 国債や地方債、社債など国内の団体が発行する債券
  • 一定の収益性が見込め、株式と比較すると安全性が高い
外国債券
  • 国際団体や海外の政府、法人が発行する債券
  • 円貨建て債券や外貨建て債券などの種類がある
投資信託
  • 資産運用の専門家が運用し、利益を投資家に還元する金融商品
  • 少額から投資が可能で、運用を専門家に任せられる
預貯金
  • 普通預金や定期預金など金融機関に預けるお金の総称
  • 収益性はあまり望めないが、安全性や流動性は高い

例えば、株式と債券は収益性や安全性に違いがあり、それぞれの値動きは一般的に逆になります。そのため、株式と債券に投資先を分散させると、互いのメリットとデメリットをカバーする形での投資が可能です。

また、同じ株式でも、製造業や金融業、ソフトウェア・通信業など異なる業種の銘柄を購入する方法も、分散投資の一例です。複数業種の銘柄を購入することで、値下がりした場合の損失を調整しやすくなります。

時間の分散

時間の分散は、購入するタイミングを分けて投資する方法です。

例えば、株式の価格は日々変動していますが、投資初心者にとって「価格が低い時期に購入して高い時期に売却する」ことは簡単ではありません。

一度に多額の投資を行わず、一定金額で定期的に投資すると、株式などを購入するタイミングを分散させて投資が行えます。長期的に見れば1回あたりの投資価格が平準化され、短期的に価格が値下がりしても、損失の軽減につながります。

地域の分散

地域の分散は、複数の国や地域の株式、債券、通貨へ分散して投資する方法です。投資の対象は国内だけではありません。近年では日本に居ながら、外国株式や外国債券、外国通貨を購入できるようになりました。

各国の株式や債券、通貨は、その国の経済状況や為替レートの変動で異なる値動きをします。例えば、国内の経済状況が変化して国内の株式や債券が値下がりしても、海外の株式や債券が値上がりすれば、値下がりした分をカバーできます。

地域の分散は、このような国や地域ごとの値動きの違いに着目した投資方法です。

分散投資のメリット

分散投資は、資産や時間を分散させて資産運用します。分散投資で得られるメリットは次の通りです。

  • 損失する可能性を抑えやすい
  • 安定した運用が期待できる

各メリットの詳細を解説します。

損失する可能性を抑えやすい

分散投資の大きなメリットは損失する可能性を抑えやすい点です。投資分野では「リスク」を危険や損失ではなく「可能性」の意味で捉えており、投資の際には次のリスクが想定されています。

リスクの種類 内容
価格変動リスク
  • 価格の変動によるリスク
  • 金融商品の価格は、景気や経済の動向、政治情勢や発行元の業績などさまざまな要因の影響を受ける
信用リスク
  • 投資した会社が経営不振や財政難により破たんする、または元本や利息が返済されないリスク
流動性リスク
  • 金融商品を希望するタイミングまたは価格で売れない可能性に関するリスク
為替変動リスク
  • 通貨の為替レートの値動きで、金融商品の価値が変動するリスク
  • 外国株式や外国通貨などに投資する場合に注意したいリスク
カントリーリスク
  • 投資先が属する国や地域の経済環境、政治情勢に関するリスク

各金融商品で想定されるリスクは、一様ではありません。例えば、株式や債券は価格変動リスクや信用リスクが想定されます。預貯金は価格変動リスクの影響を受けにくい商品ですが、近年の低金利下では収益性が見込めません。

一般的に、リスクの大きな金融商品ほど高いリターンが期待でき、リスクの小さな金融商品ほど得られるリターンが小さい傾向にあり、これを「リスクとリターンのトレードオフ」と呼びます。

分散投資を取り入れると、リスクの大きな金融商品と小さな金融商品をバランスよく保有でき、リスクを抑えた形での資産運用を実現できます。

安定した運用が期待できる

毎年、高い収益が期待できる金融商品で資産運用ができれば、投資で大きな運用益が見込めます。しかし、どの商品がもっとも収益が期待できるかの判断は専門家でも困難です。

例えば、ある年では外国株式が高いリターンを示したとしても、次の年は外国株式での運用がマイナスとなり、国内債券で堅実に運用したほうが最終的な収益が得られたなどはよくあることです。

前年の収益性をもとに多額の外国株式を購入し、その結果、その株式が値下がりすると大きな損失を抱える可能性もあります。

分散投資で国内株式や国内債券、外国株式や外国債券をバランスよく保有すると、収益の可能性も分散でき、比較的安定した収益が期待できます。

分散投資のデメリット

分散投資はリスクを抑えた資産運用を目指せるメリットがある一方、いくつかのデメリットが存在します。主なデメリットは次の通りです。

  • 短期的に大きなリターンを得るのは難しい
  • 複数の投資先を管理しなければならない

各項目の詳しい内容を紹介します。

短期的に大きなリターンを得るのは難しい

分散投資は、リスクを抑えた資産運用に効果的です。ただし、リスクとリターンは一般的にトレードオフの関係にあります。そのため、分散効果で資産運用する場合はリターンも低くなりやすい点がデメリットです。

例えば、将来的に成長が見込めるスタートアップ企業やベンチャー企業の株式を大量に購入し、株価が値上がりした後に売却すれば大きな収益を見込めるでしょう。

しかし、分散投資では長期的な視点から、資産や地域、時間を分散して購入します。上記の方法のように短期的に大きなリターンを得たい場合には、あまり適していません。

複数の投資先を管理しなければならない

分散投資では複数の資産や国にまたがって資産を運用します。したがって、管理すべき投資先が多くなる点がデメリットです。

例えば株式や債券で分散投資をする場合、複数の金融商品の購入手続きやその後の管理が必要です。金融商品の値動きはそれぞれ異なるので、種類ごとに値動きを把握しなければなりません。

なお、近年は分散投資がしやすいように複数の資産が組み合わさった商品や、資産運用専門家のアドバイスが受けられるサービスが提供されています。分散投資で複数の投資先を管理する際は、これらのような商品やサービスも活用しましょう。

分散投資の方法

分散投資の方法には、ご自身で複数の金融商品を購入してポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)を構築する方法をはじめ、さまざまな方法があります。投資初心者の方がはじめて分散投資する場合は「積立投資」がおすすめです。

積立投資は、毎月や毎週など定期的に一定金額の金融商品を購入して積立てていく資産運用の方法です。各サービスが提供する積立投資では、複数の金融商品を購入する場合が多く、「資産の分散」と「時間の分散」を同時に行えます。

銀行や証券会社、投資会社が提供する積立投資を活用すれば、都度ご自身で金融商品を購入する手間もかかりません。サービス提供側が自動的に買い付けを行ってくれるため便利です。

その他、NISAのつみたて投資枠やiDeCo(イデコ)を活用すると、税制上の優遇措置が受けられます。

NISAのつみたて投資枠は、年間120万円までの積立投資の利益が非課税となる制度です。以前は非課税で保有できる期間に20年間の制限がありましたが、2024年以降は新NISA制度になり、無期限で保有できます。

iDeCo(イデコ)はご自身で拠出した掛金をご自身で運用する年金制度です。掛金や運用益、給付のそれぞれに税制上の優遇措置が設けられています。

積立投資は、少額からの投資も可能です。月々無理のない金額からはじめられ、税制上の優遇措置を受けながら、安定した資産運用が目指せる投資方法です。

投資をするときの注意点

最後に、投資の注意点を解説します。ポイントを押さえて、納得できる資産運用を行いましょう。

分散投資しても損失する可能性はゼロではない

分散投資で資産運用を行っても、価格変動のある金融商品で運用を行う場合には、元本割れの可能性が存在します。あくまで分散投資はリスクを抑えた資産運用方法であり、損失する可能性はゼロではない点にご注意ください。

手数料がかかる

金融商品の購入には、手数料がかかる場合があります。提供するサービスにより違いはありますが、例えば、投資信託の場合は販売手数料(購入時手数料)や運用管理費用(信託報酬)、監査報酬や売買委託手数料などの手数料が一般的です。

価格の値下がりだけでなく、金融商品の購入や管理、売買にかかるコストも、事前にチェックしておきましょう。

分散投資はポイントを押さえた上で行おう

分散投資は資産や時間、国や地域を分散させて資産運用する方法で、リスクを抑えた投資を求める方に適しています。ただし、ご自身で分散投資を行う場合、複数の金融商品を管理する手間がかかる点にご注意ください。

はじめて分散投資する方には、積立投資がおすすめです。便利なサービスや税制優遇制度をご利用いただき、納得できる資産運用を実践してください。

監修者:新井 智美
顔写真:監修者:新井 智美

プロフィール:
コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)をおこなうと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆及び監修をこなしており、これまでの執筆及び監修実績は2,500本を超える。

資格情報:CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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