2024/03/29
つみたてNISA(積立NISA)に確定申告は必要?例外やポイントとともに解説
監修者:新井 智美
つみたてNISAは非課税で少額からの長期・分散投資が可能です。ただし、購入した投資信託で利益が出た場合、確定申告が必要ではないかと疑問を感じる方もいるのではないでしょうか。
原則、つみたてNISAは確定申告が不要です。ただし、確定申告が必要なケースも存在します。ここでは、確定申告の具体的な流れやポイントとともに解説します。
つみたてNISA(積立NISA)に確定申告は原則不要!
つみたてNISAは、長期的な資産形成に向けた少額からの積立投資を後押しするため、2018年に開始された少額投資非課税制度の通称です。ゆうちょ銀行や証券会社などの金融機関で口座を開設できます。
通常、株式やETF(上場投資信託)、投資信託で分配金や売買益を得ると所得税が課税されます。しかし、つみたてNISAで開設する口座は非課税口座となり、確定申告は原則必要ありません。
つみたてNISA(積立NISA)で確定申告が不要な理由
つみたてNISAで確定申告が不要な理由は、つみたてNISAで得られた分配金や売買益などが非課税であるからです。
通常、株式や投資信託、FX(外国為替証拠金取引)などの取引で利益が出た場合には、利益に対して20.315%(所得税および復興所得税15.315%、住民税5%)の税金が課されます。
譲渡価額から取得費や委託手数料などを差し引いて譲渡益を計算し、納める税金の額を算出して税務署へ報告する手続きが確定申告です。
しかし、つみたてNISAの口座で行われた取引は非課税となるため、そもそも納めるべき税金自体が発生しません。確定申告の対象となる税金が発生しない点が、確定申告が不要になる理由です。
2024年から始まった新しいNISA(新NISA)
NISAで積立投資をする場合は、2024年から始まった新NISA制度も知っておきましょう。従来のNISAと新NISAの違いは、次の通りです。
●従来のNISA
つみたてNISA | 一般NISA | |
---|---|---|
年間投資枠 | 40万円 | 120万円 |
非課税保有限度額 | 800万円 | 600万円 |
非課税保有期間 | 20年間 | 5年間 |
利用方法 | つみたてNISAと一般NISAの併用不可 | |
口座開設期間 | 2023年まで |
●新NISA
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
---|---|---|
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有限度額 | 1,800万円(うち、成長投資枠は1,200万円) | |
非課税保有期間 | 無期限 | |
利用方法 | つみたて投資枠と成長投資枠の併用可 | |
口座開設期間 | 恒久化 |
新NISAでは、「つみたてNISA」は「つみたて投資枠」へ変更されます。年間投資枠が40万円から120万円へ、20年間であった非課税保有期間も無期限へと拡充され、より長期的な視点での非課税投資が可能です。
つみたてNISA(積立NISA)で確定申告が必要なケース
つみたてNISAは原則非課税のため確定申告は不要ですが、次のケースでは確定申告が必要な場合があります。
- NISA口座の分配金受取方式が「株式数比例配分方式」以外の場合
- 非課税期間終了後に課税口座へ払い出す場合
各ケースの詳しい内容を解説します。
NISA口座の分配金受取方式が「株式数比例配分方式」以外の場合
分配金とは、投資信託の収益や元本から投資家へ払い戻されるお金です。
つみたてNISAではETF(上場投資信託)の分配金が払い戻される場合がありますが、NISA口座の受取方法で「株式数比例配分方式」以外を選択すると、税金がかかる場合があるのでご注意ください。
証券口座での分配金の受取方法は、主に次の3つです。
分配金の受取方法 | 内容 |
---|---|
株式数比例配分方式 | 保有株式の数量などに応じて、分配金を証券口座で受取る方法 |
登録配当金受領口座方式 | 事前に指定した金融機関の口座で受取る方法 |
配当金領収証方式 | 配当金領収証を金融機関の窓口に持参して受取る方法 |
NISA口座の分配金の受取方法で「登録配当金受領口座方式」や「配当金領収証方式」を選択すると、NISA口座で取引したETFの分配金は課税対象となり、20.315%の税率で源泉徴収されます。
課税対象となっても、配当金領収証方式などで受領した場合は、必ずしも確定申告の必要はありません。ただし、「総合課税により配当控除の適用を受ける」「申告分離課税で譲渡損失の損益通算や繰越控除をする」ためには、確定申告が必要です。
結果として確定申告が必要となるケースがあるので、つみたてNISAで購入したETFの分配金を非課税にできる、株式数比例配分方式を選択しましょう。
非課税期間終了後に課税口座へ払い出す場合
従来のつみたてNISAの非課税期間は20年間に設定されており、NISA口座で保有する限りは非課税です。
ただし、非課税期間終了後、購入した投資信託を引き続き運用したい場合は、期間満了時に一般口座や特定口座へ払い出す必要がありますが、一般口座や特定口座は課税口座である点にご注意ください。
一般口座と特定口座、NISA口座の特徴は次の通りです。
証券口座の種類 | 特徴 |
---|---|
一般口座 |
|
特定口座 |
|
NISA口座 |
|
なお、特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があり、払い出す口座に源泉徴収ありの特定口座を選択すると、引き続き確定申告は不要です。
ただし、一般口座や源泉徴収なしの特定口座を払い出し口座に選択すると、確定申告が必要な場合もあるので注意が必要です。
ご自身がどの口座を利用しているかは、年末に証券会社から送られる「年間取引報告書」や、直接証券会社へ連絡して確認できます。
確定申告には年間取引報告書に記載されている内容が必要なため、忘れずに取っておきましょう。
確定申告の流れ
投資で得た利益の確定申告をする場合は、必要書類を集めて申告書を作成しましょう。確定申告の主な流れは次の通りです。
1.必要書類の準備
2.確定申告書の作成
3.確定申告書の提出
4.所得税の納付または還付の手続き
各手順を詳しく紹介します。
必要書類の準備
確定申告で必要な書類は、次の通りです。
- 確定申告書
- 給与所得や公的年金の源泉徴収票など、収入がわかるもの
- 年間取引の明細がわかるもの
- マイナンバーカード
- 控除の適用を受けるための各種控除証明書
確定申告書は国税庁のウェブサイトや税務署・市区町村の窓口で受取れます。投資の利益を申告する場合は、確定申告書Bの第一表と第二表、確定申告書第三表(分離課税用)などを準備しましょう。
また、申告書にはマイナンバーの記載が必要です。作成の際は、マイナンバーカードを手元に用意しましょう。
確定申告書の作成
確定申告書の作成には、次の4つの方法が挙げられます。
- 手書きで記入
- 確定申告書等作成コーナー
- 確定申告ソフト
- 税理士への依頼
ご自身で確定申告書を作成する場合、手書きのほか、確定申告書等作成コーナーや確定申告ソフトを活用する方法があります。
確定申告書等作成コーナーは国税庁が提供するウェブサイトで、画面表示にしたがって金額を入力すると確定申告書を作成できるため、とても便利です。確定申告書等作成コーナーはパソコンだけでなく、スマートフォンでもご利用できます。
ご自身で申告書を作成するのは難しい、節税のアドバイスを受けたい場合などは、税理士への依頼を検討しましょう。
確定申告書の提出
作成した申告書は、次の3つの方法で提出が可能です。
- e-Tax
- 郵送
- 所轄税務署の受付
e-Taxは国税に関するさまざまな手続きをインターネット上で行えるシステムで、確定申告書の提出もできます。
e-Taxをご利用する際は、所轄の税務署へ電子申告等開始届出書を提出しましょう。電子申告等開始届出書の提出は、オンラインでも可能です。
その他、所轄税務署や業務センターへの郵送、所轄税務署や確定申告会場の受付でも提出可能です。ご利用しやすい方法で提出しましょう。
所得税の納付または還付の手続き
確定申告書の提出後は、所得税の納付または還付の手続きを行います。所得税の納付期限は、例年3月15日です。振替納税やダイレクト納付、クレジットカード納付などの納付方法により、期限までに納付しましょう。
つみたてNISA(積立NISA)で確定申告をするときのポイント
つみたてNISAでご利用するNISA口座は、一般口座や特定口座などの課税口座と取扱いが異なります。確定申告をする際は、以下のポイントにご注意ください。
損失の損益通算ができない
NISA口座は原則として非課税であり、口座内で生じた利益や損失は税務上ないものと取り扱われます。そのため、他の課税口座との損益通算はできません。
また、その年に控除できなかった損失を最長3年間損益通算可能な「繰越控除」も適用できないので注意しましょう。
扶養控除や配偶者控除に影響しない
扶養控除や配偶者控除の判定には、対象者の合計所得金額が含まれますが、NISA口座で得た利益は合計所得金額の対象ではありません。したがって、配偶者や子どもがNISA口座で利益を得ても、扶養控除や配偶者控除の判定に影響しません。
つみたてNISA(積立NISA)に確定申告は原則不要!必要なケースもあるので注意しよう
つみたてNISAは原則確定申告が不要です。長期間にわたって少額から積立てられ、非課税で堅実に資産を形成できます。
ただし、配当金の受取方法で株式数比例配分方式以外を選択するなど、確定申告が必要なケースも存在します。例外となるケースを把握して、賢く資産運用を行いましょう。