2023/12/12
1000万円貯金する方法とは|超えたらすべきことも具体的に解説
執筆者:馬場愛梨(ファイナンシャル・プランナー)
貯金の目標として「1,000万円」という大台に乗せることを目指している人も多いのではないでしょうか。本記事では、具体的に1,000万円を貯めるには何をすればいいのかについて解説します。あわせて1,000万円を貯めている人の割合や貯められる人の特徴、貯金1,000万円を達成後にやっておきたいことについても紹介します。
■1,000万円を貯めるのは難しい?
そもそも1,000万円を貯めるのは難しいことなのでしょうか。ここでは、世間一般の人がいったいどれくらい貯めているのか、まず貯金額の平均値や中央値、1,000万円を貯めている人の割合について見ていきましょう。
「貯金」と「預金」の違いはお金を預ける金融機関の違いです。大きく下記2つに分けることができます。本記事ではどちらの場合も「貯金」という言葉を使って説明します。
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●貯金額の平均はどれくらい?
金融広報中央委員会が行った「家計の金融行動に関する世論調査(2022年)」によれば、総世帯の金融資産保有額の平均値は1,150万円でした。なお、ここでいう金融資産とは「運用のためまたは将来に備えて蓄えている分」のことです。そのため日常的な出し入れや引き落としのための分や、事業のために保有している分、不動産や貴金属などの実物資産は除きます。
平均が1,000万円を超えていると聞くと、意外に思うかもしれません。ただ平均値は飛び抜けて大きな資産を持っている人が少し混じっているだけで数値が跳ね上がってしまうことがあります。例えば「0円、100万円、1億円」の3人の平均値は約3,367万円です。そこで中央値に注目してみましょう。中央値は、小さい順に並べたときにちょうど真ん中に来る数値を指します。
前述の例だと100万円です。極端に高い数値があっても影響されにくく、より実感に近い数値といわれています。前述の調査では、平均値は「1,150万円」でしたが中央値は「280万円」と、かなり大きな差がありました。
●【年代別】1,000万円を貯めている人の割合
では、実際に1,000万円以上貯めている人はどの程度いるのでしょうか。世帯主の年齢別に見ると、以下のとおりです。
1,000万円以上貯めている人の割合(金融資産保有額) | 平均値 | 中央値 | |
---|---|---|---|
全体 |
28.4% |
1,150万円 |
280万円 |
20代 |
2.7% |
185万円 |
20万円 |
30代 |
15.4% |
515万円 |
150万円 |
40代 |
21.1% |
785万円 |
200万円 |
50代 |
30.1% |
1,199万円 |
260万円 |
60代 |
40.5% |
1,689万円 |
552万円 |
70代以上 |
42.6% |
1,755万円 |
650万円 |
(出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(総世帯・2022年)をもとに作成)
年代による差は大きく、年代が上がるにつれて、貯金額(金融資産保有額)も1,000万円を貯めている人の割合も上がります。
●【年収別】1,000万円を貯めている人の割合
続いて、年収別に見てみましょう。
1,000万円以上貯めている人の割合(金融資産保有額) | 平均値 | 中央値 | |
---|---|---|---|
全体 |
28.4% |
1,150万円 |
280万円 |
収入なし |
6.6% |
260万円 |
0円 |
300万円未満 |
17.3% |
650万円 |
50万円 |
300万~500万円未満 |
27.3% |
974万円 |
300万円 |
500万~750万円未満 |
34.2% |
1,319万円 |
500万円 |
750万~1,000万円未満 |
47.9% |
1,873万円 |
967万円 |
1,000万~1,200万円未満 |
53.7% |
2,687万円 |
1,063万円 |
1,200万円以上 |
61.0% |
3,595万円 |
1,800万円 |
(出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(総世帯・2022年)をもとに作成)
年収が上がるほど生活に余裕が出やすいため、貯金額や貯めている人の割合も多くなる傾向があります。1,000万円を貯めている人は全体としては少数派です。しかし若くても年収が低くても達成している人はいます。到底手が届かないようなレベルではなく、努力や工夫次第で十分に近づける可能性はあるといえるでしょう。
■毎月いくら貯めれば「貯金1,000万円」を達成できる?
「貯金1,000万円」という目標を達成するには、毎月いくらずつ貯めていく必要があるのでしょうか。
ここでは、5年・10年・20年・30年でそれぞれにシミュレーションしてみましょう。
積立期間【何年で貯める?】 | 毎月の積立額【いくらずつ貯める?】 |
---|---|
5年 |
約16万6,667円 |
10年 |
約8万3,334円 |
20年 |
約4万1,667円 |
30年 |
約2万7,778円 |
(参考:金融庁「資産運用シミュレーション」 ※運用の利回りや税金等は考慮していません)
5年で1,000万円の貯金を達成しようと思ったら、毎月約16万6,667円を貯金に回さなければなりません。なかなかハードルが高いと感じる人が多いのではないでしょうか。しかし、ゆっくりと時間をかけられるなら、1ヵ月あたりの貯金額は少なくて済みます。自分の場合は、いくらずつ貯めていくのがよいか考えて貯金計画を練ってみましょう。
■貯金1,000万円を達成するコツ
1,000万円を貯めるには何をどうすればいいのか、具体的な方法やコツを紹介します。特に重要なポイントは、以下の3つです。
●目標を定める
具体的な目標を定めることが大切です。「なんとなく1,000万円貯まったらいいな」という人より、「子どもたちが希望の進路を選べるよう15年後までに1,000万円用意する」「30年後に老後を迎えたときに気兼ねなく海外旅行に行けるように1,000万円確保する」など具体的な目標を立てた人のほうが熱量としては高く、目標達成に向けた行動を起こしたり継続したりしやすくなります。
ただ漫然とお金を貯めようとするのではなく、目的や期限をできるだけ具体的に設定して目指すのがおすすめです。なぜ貯めたいのか、そのためにいつまでにいくら必要なのか考えてみましょう。それが明確になればおのずと「毎月いくらずつ貯めれば間に合うか」「何にいくらまで使ってもOKか」などを逆算できます。
●先取り貯金を実践する
1,000万円を貯めたいなら、先取り貯金を実践することも方法の一つです。先取り貯金とは、給料が入金されたらすぐに貯金分だけ別口座に取り分けておくことを指します。貯金分に回した分は「なかったもの」として残りの金額だけで家計を回せるよう工夫しましょう。
勤務先の財形貯蓄制度や銀行の定額自動入金サービスなどを利用すれば、最初に一度設定しておくだけで、あとは自動的にお金が移動するようにできます。貯金用の口座に入ったお金に手をつけにくいように、あえて近くにATMがない金融機関や、通帳・キャッシュカードを持ち歩かない口座を選ぶことも有効です。
貯金に回す金額を決めるときには、前述のシミュレーションや目標設定が役立ちます。いつまでにいくら貯めるかを考えて逆算してみましょう。
●節約を心がける
当然、支出を減らせば家計に余裕が出やすくなり貯金に回す金額を増やすことができます。ただ節約をがんばりすぎるあまり過度にストレスをためたり健康を害したりするようでは本末転倒です。「使うところ」「使わないところ」をはっきりさせて、メリハリをつけるようにしましょう。
無駄遣いを減らしたいなら「食費は○○円まで」「趣味代は△△円まで」など毎月の予算を決めて、それを守るように意識するのがおすすめです。続けているうちに「今買うと予算オーバーするかも」「今週は使いすぎたから調整しよう」といった判断ができるようになります。
自分が何にいくら使ったかを把握するには、家計簿をつけるのが有効です。近年は、手軽に記録できる家計簿アプリなどもたくさん登場しています。家計簿が続かない人は、まず「週1回、土曜日の12時」などと日時を決めて、定期的にレシートやクレジットカードの明細などを確認するようにしましょう。
衝動買いが多くて困っている人は、「即決しない」という癖を少しずつ身につけてみてはいかがでしょうか。ネットショッピングの場合は「カートに入れた状態のままで一晩以上置く」など、具体的な自分ルールを定めるのがおすすめです。
また後回しにしがちですが、家賃や保険料、スマホ代、サブスクの料金など毎月一定額を継続して支払っている費目(固定費)を見直してみることも有効です。「今の状況と契約内容が合っているのか」「もっと安い契約プランがないのか」など比較して検討してみましょう。
■貯金が1,000万円を超えたらすべきこと
「貯金1,000万円」という目標を達成したあとに、どうしたらいいのかと悩む人もいるかもしれません。最後に、貯金が1,000万円を超えたときに検討したいことを紹介します。
●資産運用に取り組む
「貯金1,000万円」を達成しているなら資産運用に挑戦してみるのも選択肢の一つでしょう。資産運用のメリットは、単に貯金しておくだけよりも効率的にお金を増やせる可能性がある点です。うまく運用できれば、資産を増やしていくことができます。またインフレ(物の値段が上がってお金の価値が下がること)への対策にもなります。
しかし貯金と違って元本保証ではないため、運用に失敗したらお金が減ってしまう可能性もあります。そのため資産運用は、しばらく使う予定のない「余裕資金」で行うのが鉄則です。なくなっても生活に支障が出ないくらいの金額から、少しずつ投資していくとよいでしょう。リスクを抑えて運用したい人や投資初心者に人気の投資には、例えば以下のようなものがあります。
- 個人向け国債
個人向け国債は、国が発行している債券です。年0.05%の最低金利保証があり、元本割れ(投資した金額より受け取れる金額のほうが少ない状態になること)のリスクが極めて低いため、「投資してみたいけどお金が減るのは怖い」という人にも選ばれています。 - NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)
NISAは、投資を促すために作られた少額投資非課税制度です。NISA口座で投資した場合、通常は利益に対して約20%かかる税金が非課税となります。2024年から新NISAとして大幅に拡充されて使いやすくなる予定なので、押さえておきましょう。株式や投資信託などに投資できます。 - iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)
iDeCoは、自分で自分の将来の年金を作るための制度です。自分で積み立てて運用したお金を老後に受け取ることができます。「原則60歳までお金を引き出せない」という制限がありますが、その分NISAとは異なり年間の掛け金を所得控除できるといった税制優遇が利用できます。主な運用先は、元本が保証されていない投資信託や元本が保証されている定期預金などです。
■まとめ
「貯金1,000万円」を目指したい場合は、まず「なぜそのお金が必要なのか」「いつまでに用意したいのか」について具体的に考えてみましょう。そこから毎月貯金に回すべき金額を逆算できます。先取り貯金を実践したり、家計簿をつけるなど無駄遣いを減らす工夫をしたりすることも有効です。金融広報中央委員会の調査によると「貯金1,000万円」を達成している世帯は全体の3割弱です。
少数とはいえ達成不可能な目標ではありません。資産運用もあわせて検討し、できることから少しずつコツコツと取り組んでいきましょう。