2023/10/17
年収500万円だと住宅ローンをいくら借りられる?借入額を決めるポイント
監修者:新井 智美
住宅ローンの借入限度額を決める審査基準の1つは年収ですが、実際はどれくらいの年収でいくらまで借りられるのでしょうか。
本記事では年収500万円を参考に、住宅ローンの借入額の考え方を解説します。
住宅ローンの借入可能額はどう決まる?
住宅ローンは通常、大きな金額を借入れて、長期にわたって返済を続けます。そのため、金融機関は契約者の返済能力をさまざまな基準から審査します。
金融機関の具体的な審査基準は非公表です。しかし国土交通省「令和3年 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」によると、9割以上の金融機関で、年収や健康状態、申込み時の年齢、完済時の年齢、勤続年数、担保となる物件の評価額を住宅ローンの審査項目としていることがわかります。
契約者本人に関わる事項が重要視される傾向があり、年収もその1つです。そこで、住宅ローンの借入可能額に影響する契約者本人に関わる事項を見ていきましょう。
年収
住宅ローンの申込みでは一般的に、金融機関から収入を証明する書類の提出を求められます。年収は、返済が滞らない無理のない融資額を決定する大切な要素となります。
ただし借入可能額は年収だけで審査されるのではなく、返済負担率(年収に占める借入額の割合)から判断されます。借入額には住宅ローンだけではなく、マイカーローンや奨学金などすべての借入額が含まれます。
金融機関は返済負担率30~40%を目安にすることが多く、例えばフラット35では年収400万円未満で30%以下、年収400万円以上で35%以下としています。
健康状態
団体信用生命保険(団信)は、ローン返済中の契約者に万が一の事態が起こったときに保険金で住宅ローンの残債を完済できる保険です。
団体信用生命保険は残された家族の生活を守るだけではなく、融資したお金を回収する金融機関にとっても重要な保険のため、住宅ローン契約での加入は必須と考えてよいでしょう。
健康状態に不安があって団体信用生命保険への加入が難しければ、借入れそのものが厳しいこともあります。
申込時と完済時の年齢
申込時と完済時の年齢は、多くの住宅ローンで申込条件に定められています。例えばauじぶん銀行の場合、申込時の年齢は満18歳~満65歳まで、完済は満80歳の誕生日までが条件となります。
高齢で契約するほど返済期間が短くなり、また収入が不安定になりやすいため、借入可能額が少なくなる可能性もあります。
勤続年数
勤続年数の長さは安定した収入の証明となるため、住宅ローン契約や借入可能額に影響します。金融機関によって異なりますが、契約条件として勤続年数を定めているところもあれば、定めのないところもあります。
いずれにせよ、長く安定した仕事に就いていればそれだけ金融機関からの信頼も高いといえますが、勤続年数が短いことが必ずしも審査に不利になるわけではありません。
転職したばかりで勤務年数が短い、新卒で入社から日が浅いなど、事情に応じて金融機関の対応は変わります。
担保となる物件の評価額
金融機関は、対象となる物件に「抵当権」と呼ばれる担保を設定して、住宅ローンの融資を行います。抵当権は、契約者が返済不能に陥った場合に物件を競売にかけるなどして残債を回収するために設定します。
そのため、物件の評価額が高ければ高いほど、借入可能額に好影響を与えることが考えられます。
年収500万円だといくらまで住宅ローンの借入れができる?
住宅ローンがいくらまで借りられるかは、年収だけではなく、年齢や物件の評価額などのさまざまな要素から判断されます。実際の借入可能額は金融機関に申込むまでわかりませんが、あらかじめ目安額を知ることは可能です。
では、年収500万円を例に、住宅ローンをいくらまで借入れできるかの具体的なシミュレーションを確認してみましょう。
年収500万円を固定金利で借入れる例
住宅ローンの固定金利とは、契約したときの金利が特約期間中固定される金利タイプです。ここではauじぶん銀行の当初期間引下げプラン・35年固定金利を例にシミュレーションします。
住宅ローンの借入条件
借入期間 |
35年 |
---|---|
返済方式 |
元利均等返済 |
金利タイプ |
35年固定(当初期間引下げプラン) |
金利 |
年2.21%(2023年10月適用金利) |
ボーナス払い |
なし |
auじぶん銀行の住宅ローンシミュレーションにて試算した結果、年収500万円の場合の借入可能額(目安)は2,920万円です。
年収500万円を変動金利で借入れる例
住宅ローンの変動金利とは、借入期間中に金利が変動する金利タイプで、一般的には半年に1度の割合で金利の見直しが行われます。
ここではauじぶん銀行の住宅ローンシミュレーションを利用して、年収500万円の借入可能額の目安を確認します。
住宅ローンの借入条件
借入期間 |
35年 |
---|---|
返済方式 |
元利均等返済 |
金利タイプ |
変動金利(全期間引下げプラン) |
金利 |
年0.319%(2023年10月時点) |
ボーナス払い |
なし |
- ※借入期間中、金利が変動しない場合。
計算結果からわかった年収500万円の借入可能額(目安)は、3,970万円です。この目安額を参考に無理のない借入額を考えるのがおすすめです。
auじぶん銀行のシミュレーターでは、お借入れ時にかかる事務手数料などといった諸費用の金額もわかるので、具体的に住宅ローンの利用計画を立てやすいでしょう。
年収500万円で上限まで借りたときのリスク
同じ年収500万円でも、契約する金融機関の違いや他の借入れの有無など、さまざまな条件から住宅ローンの借入可能額は変わります。返済可能だと判断されれば、上限いっぱいまで融資を受けられることもあります。
しかし、いくら可能であっても借入可能額の上限ぎりぎりまで融資を受けるとリスクを伴います。そのリスクの1つに、急な出費や他ローンに対応できない場合があることが挙げられます。
例えば、さきほどの変動金利のシミュレーション結果である3,970万円を借りたとします。すると月々の返済額は約10万円、返済負担率は約24%になります。
つまり、年収500万円のうち120万円を住宅ローンの返済に回すことになるのです。
ただし、例えばカードローンで月々3万円の返済があるなど、他にも借入があった場合は年収500万円に対して年間の返済額は156万円となり、返済負担率は約31%に跳ね上がります。
住宅ローンの返済は30年以上など長期間続く場合が多く、その間に子どもの教育費や車の購入、大きな病気など、大きな出費や収入減を伴うさまざまな出来事が起こりえます。
住宅ローンの返済で生活がギリギリだと、とっさに対応できず困ることがあるかもしれません。住宅ローンの借入額は、長い返済期間を見据えて、無理のない金額に設定しておくと安心です。
年収500万円で住宅ローンを組む際のポイント
さきほどのシミュレーションによって、年収500万円の方は4,000万円弱の金額も借入れ可能だとわかりました。いくらまで借入れられるかの目安がわかったら、実際に知っておきたいのが、ご自身にとっての借入可能額です。
最後に、住宅ローンを組む際に知っておきたいポイントを紹介します。
無理のない返済計画を立てる
昨今、マイホーム購入にあたって自己資金を用意しない、いわゆる「フルローン」の割合が増えています。また、フルローンとまではいかなくても、自己資金の割合は減少傾向にあります。
しかし、住宅ローンの借入額を増やしすぎるとそれだけ返済が苦しくなるリスクがあります。自己資金の目安は2割といわれています。
さきほどのauじぶん銀行のシミュレーション条件(借入期間35年、金利年0.319%、ボーナス払いなし、借入期間中金利が変動しない場合)で、4,000万円の住宅を購入するとします。
フルローンでは毎月100,666円の返済になります。一方、購入費用の2割に当たる800万円を自己資金で出して3,200万円を借入れると毎月80,533円となり、月あたりおよそ2万円もの差が出るのです。
できれば現在の貯金から可能な範囲で自己資金を用意し、無理のない返済計画となる借入額を決めましょう。
返済負担率を25%以内に留める
返済負担率は25%までに留めておくのが理想とされています。なぜなら、マイホームの購入には、物件の購入代金だけではなく、物件取得時の税金や保険、月々の管理費、修繕費など、多くの出費を伴うためです。
さらに年収をベースに住宅ローンの借入可能額を検討するときは、額面収入ではなく手取り収入から考えるのがおすすめです。額面収入には、税金や社会保険料が含まれています。日々の生活費や住宅ローン返済に充てるお金は、それらを差し引いた手取りから出さなくてはなりません。
例えば額面年収が500万円であれば、手取り年収は約400万円になります(扶養家族の有無等により異なります。)。その場合、年収を400万円として返済負担率を考えてみましょう。
ポイントを抑えて無理のない返済計画を立てよう
住宅ローンをいくらまで借りられるかは、金融機関ごとに定められた審査基準により決まります。ただし、金融機関の提供するウェブサイトを利用すれば、年収から目安となる借入額をシミュレーションすることも可能です。
例えば年収500万円であれば、4,000万円弱の融資を受けられる可能性はありますが、上限いっぱいまで借入れるのはリスクが高いため、生活実態にあわせてご自身の借入可能額を見極めましょう。