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特集 | 住宅ローン

2023/6/23

住宅ローン5000万円を組むために必要な年収|月々の返済額も紹介

執筆者:新井智美

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住宅ローンを組む際、金融機関は申込者の収入や勤務先などを参考に融資したお金の「返済能力の有無」を審査し、最終的な融資金額を決定します。

では、5,000万円の住宅ローンを組むために必要な年収はどれほどなのでしょうか。

この記事では、住宅ローン5,000万円を組むために必要な年収について解説するとともに、住宅ローンを組む際の注意点も紹介します。金利タイプの選び方やローンの組み方など、住宅ローンを組む際のヒントになる内容についても解説しますので、参考にしてください。

■5,000万円の住宅ローンを組める人の年収とは

5,000万円の住宅ローンを組める人の年収の目安は、約700万円~1,000万円です。

住宅ローンを借り入れる際の「年収倍率(年収の何倍まで借りられるか)」の目安は5~7倍とされているため、当てはめると約700万円~1,000万円になります。

しかし、年収700万円の人全員が5,000万円の住宅ローンを組めるかは別の問題です。金融機関は申込者の年齢や年収、他社からの借入れ状況などを考慮して融資額を決めるため、年収700万円の人でも5,000万円の住宅ローンを組めないことがあります。

ただ、住宅ローンを組む時に重要なのは、借りられる最大額を借りるのではなく、無理なく返済できる額を借りることです。無理に高額な借入れを行って毎月の返済が生活の負担になるようなことは避けるべきです。

では、無理なく返済できる額はどのように決めればいいのでしょうか。

■借入限度額と余裕をもって返済できる額は異なる

住宅ローンの融資金額は、必ずしも希望どおりの金額になるわけではありません。最終的な融資金額は申込者の年収も含めたさまざまな項目を総合的に審査して決まります。

国土交通省から2023年3月に発表された「民間住宅ローンの実態に関する調査報告書(令和4年度)」によると、90%以上の金融機関が審査の際に重視する項目として、以下のものが挙げられています。

  • 完済時年齢(98.7%)
  • 健康状態(97.9%)
  • 借入時年齢(97.2%)
  • 担保評価(96.1%)
  • 勤続年数(93.2%)
  • 連帯保証(93.1%)
  • 返済負担率(93.0%)
  • 年収(92.9%)

興味深いのは、この中に返済負担率が入っていることです。

返済負担率とは、年収に占める年間ローン返済額の合計のことで、住宅ローン以外のローン額も含まれます。そのため、教育ローンやマイカーローンなどを利用している人は、返済負担率に影響するため注意しなければなりません。

余裕をもって返済できる返済負担率の目安は25%以下といわれており、年収1,000万円の人が住宅ローンだけを組むならば、年間の返済額を250万円以下、月額にして約20万8,000円が目安となります。

ただし、年収額と手取り額は異なります。年収はあくまでも会社から支給される給与の総額ですが、毎月会社から手取り額として振り込まれるのは、総支給額から所得税や住民税、社会保険料などが差し引かれた額です。

年収に応じて所得税の額などは変わるため、無理なく返済できる額の目安は手取り額の20%以下と考えるとより余裕がもてるでしょう。

年収1,000万円の人の手取り額は約750万円なので、月額にすると62万5,000円です。その20%は12万5,000円で、年収から計算した約20万8,000円と大きな差があることがわかります。

住宅ローンを組む際には無理なく返済できる額を把握し、そのうえでどのくらい借りられるかを考えることがポイントです。

●頭金別の年収の目安

住宅ローンは頭金なしの「フルローン」でも利用できますが、頭金を入れた方が毎月の返済額を抑えられます。

5,000万円の住宅を購入すると仮定し、頭金の金額別に返済負担率が25%となるよう目安の年収をauじぶん銀行の住宅ローンシミュレーション機能を用いて算出しました。

auじぶん銀行 住宅ローンシミュレーション

毎月の返済額は、金利年1.5%(固定金利・借入期間中金利が変わらない場合)、返済期間35年、ボーナス払いなしとして算出します。

頭金 借入金額 返済負担率25%の年収

200万円

4,800万円

約705万円

400万円

4,600万円

約676万円

600万円

4,400万円

約646万円

800万円

4,200万円

約617万円

1,000万円

4,000万円

約578万円

なお、頭金を入れない場合の返済負担率25%の年収は約735万円でした。

頭金が多いほど借入限度額も減り、返済負担率25%の年収も下がります。頭金を2割(1,000万円)入れられれば、年収600万円の人でも5,000万円の家を購入できる試算結果です。

では、借入金額ごとの毎月の返済額と総返済額を確認してみましょう。

●借入金額別に毎月の返済額を試算

借入金額 毎月の返済額 総返済額

4,800万円

14万6,968円

6,172万6,586円

4,600万円

14万844円

5,915万4,673円

4,400万円

13万4,721円

5,658万2,643円

4,200万円

12万8,597円

5,401万721円

4,000万円

12万2,473円

5,143万8,816円

当然ながら、借入金額が少なければ毎月の返済額も少なくなり、総返済額と利息負担も抑えられます。

ただ、家を購入する際には、物件価格以外にも以下のようなお金がかかります。

  • 不動産会社への仲介手数料
  • 売買契約書に必要な印紙代
  • 登記費用(登録免許税および司法書士への報酬)

また、住宅ローンを組む際にも事務手数料や融資手数料のほか、金銭消費貸借契約書への印紙代や登記費用などがかかります。なお、ネット銀行などを中心に印紙代がかからない金融機関もあります。

頭金は物件価格の10%~20%が目安とされていますが、物件購入や住宅ローンの利用にかかる費用を考えながら、無理のない範囲に収めましょう。

■住宅ローンを組む際の注意点

住宅ローンを組む際には、金額にかかわらず気をつけておきたい注意点があります。

1.申込条件を満たしているか

金融機関によって住宅ローンの申込条件は異なります。特に注意しておきたいのは完済時の年齢です。申込時の年齢が高くなり完済時までの返済期間が短くなると、毎月の返済額が多くなってしいます。

また、金融機関によっては最低年収額が設けられていたり、雇用形態によっては利用できなかったりするケースもあります。

2.返済しながら貯蓄できるだけの余裕があるか

無理なく返済できる額を設定することは大事ですが、貯蓄できるだけの余裕ももたせましょう。ローンを組んだ後に急な出費が必要になることも考えられるため、毎月の生活費の3ヵ月分は緊急資金として貯めておくと良いでしょう。

さらに、余裕分を貯金しておき、計画的に繰上返済に充てることもおすすめします。

3.団体信用生命保険の保障内容を確認する

民間の金融機関で住宅ローンを利用する場合、団体信用生命保険への加入が必須です。どこまで保障してくれるプランなのか確認し、必要に応じて現在加入している生命保険を見直しましょう。できれば、保障が充実しているプランを選ぶと良いでしょう。

また、保険を見直す際には、団体信用生命保険に頼りすぎないことも大切です。団体信用生命保険はあくまで住宅ローンの返済を保障する保険なので、住宅ローンを完済すると契約は終了します。その後、新たに医療保険などに加入しようとしても、年齢によっては保険料が高くなるほか、健康状態などの理由で加入できない可能性もあります。

団体信用生命保険と民間の生命保険のバランスを保っておくことも、住宅ローンを組む際の大切なポイントです。

4.信用事故を過去に起こしていないか

金融機関が各種ローンの申込みを受けた際、審査で必ず信用情報機関に照会をかけます。その時に信用事故の内容が登録されていることがわかれば、審査の通過は難しくなります。

信用事故情報が信用情報機関に登録されているか知りたい場合は、本人が情報開示の請求を行うことで確認できます。インターネットで簡単に請求できるので、気になる人は事前に調べておきましょう。

●金利の選び方

住宅ローンを組む際には、どの金利タイプを選ぶのかも重要なポイントです。たとえば固定金利の特約期間中などは借換えをしない限り金利タイプの変更ができないので、十分に検討してから決めましょう。

・固定金利が向いている人

固定金利は、契約時に決めた金利が完済まで続く金利タイプで、返済計画が立てやすいというメリットがあります。また、ローンを組んだ後に金利が上昇しても影響を受けずに済みます。

ただ、固定金利は変動金利に比べて金利が高めに設定されている点や、金利低下局面になっても恩恵を受けられない点がデメリットです。

そのため、固定金利はできるだけ毎月の返済額を固定させ、長期にわたる返済計画を事前に立てておきたい人に向いています。

・変動金利が向いている人

変動金利は、基本的に半年ごとに金利が見直される仕組みで、固定金利よりも低い値が設定されている点がメリットです。超低金利の状況下では年0.3%台の住宅ローンもあり、利息負担をできるだけ少なくしたい人に向いています。

ただ、ローンを組んだ後に金利が上昇すると、毎月の返済額も上がってしまう点には注意が必要です。

一般的な金融機関では、金利が見直されても毎月の返済額への反映は5年後になる「5年ルール」や、毎月の返済額が変更になる場合でも、変更前の金額との変動が125%を超えてはならないという「125%ルール」が設けられています。

しかし、ネット銀行の住宅ローンでは、変動金利に「5%ルール」や「125%ルール」を設けていないところもあるので、事前に確認しましょう。

●返済方法の違いも知っておこう

ローンの返済方法には、「元利均等返済」と「元金均等返済」があります。一般的に元利均等返済を用いる金融機関が多いのですが、どちらかを選べるところもあります。

元利均等返済とは、毎月の返済額を一定にして元本部分と利息部分を分ける方法で、返済が始まった当初は利息部分が多く、返済が進むにつれて元本部分の返済割合が増えていく仕組みです。

元金均等返済は、元本部分を一定にして利息分をあわせて返済していく方法で、返済当初は返済額が多く、返済が進むにつれて返済額が少なくなっていきます。

仮に5,000万円を年1.5%の固定金利(返済期間35年、ボーナス払いなし)の条件で、元利均等返済と元金均等返済を選んだ場合に総返済額がどのくらい違うかを確認してみましょう。

返済方法 毎月の返済額
(元金均等返済は初回の返済額)
総返済額

元利均等返済

15万3,092円

6,429万8,491円

元金均等返済

18万1,547円

6,315万6,108円

差額

114万2,383円

同じ条件で返済方法を変えるだけで、総返済額に100万円以上の差が出ることがわかります。返済開始当初の返済額が大きいものの、返済できるだけの余裕がある人なら元金均等返済を選んだ方が利息負担を抑えられます。

■収入合算とペアローンの違い

住宅ローンで5,000万円を借り入れるとなると、1人の年収では難しいケースも考えられます。その時に検討したいのが「収入合算」や「ペアローン」です。

●収入合算のメリットとデメリット

収入合算とは、申込者と配偶者やパートナーの収入を合算して最終的な融資額を決定する方法で、申込者だけで申込むよりも多くの金額を借入れできる可能性があります。

収入合算には「連帯保証型」と「連帯債務型」があり、多くの金融機関は連帯保証型を採用しています。

連帯保証型と連帯債務型のどちらも契約者が1人という点は同じです。ただ、連帯保証型は収入を合算した側が連帯保証人になり、連帯債務型は連帯債務者になる点が異なります。また、団体信用生命保険は原則として契約者のみしか入れないため、収入を合算した側に不測の事態があっても返済を行わなければなりません。なお、連帯債務型の場合は連帯債務者も団体信用生命保険に加入できる場合があります。

●ペアローンのメリットとデメリット

ペアローンも収入を合わせることで借入金額を多くできますが、収入合算との違いは契約者が2人存在することです。つまり、収入合算者も契約者となり、1つの住宅に対して2本の住宅ローンを組むことになります。

契約者が2人なのでそれぞれが団体信用生命保険に加入できるほか、出資割合に応じた住宅ローン控除を受けられる点もメリットでしょう。

ただし、住宅ローン契約の諸費用が単独で住宅ローンを組む場合よりも高くなる点に注意しなければいけません。また、団体信用生命保険に加入できるものの、保障されるのは契約者の持分割合だけなので、相手に不測の事態が起きても、自分が契約している部分の返済は残ります。

■まとめ

5,000万円の住宅を購入する際に、住宅ローンの毎月の返済額を無理なく返済できる範囲に収めるためには、頭金を20%程度入れたとしても年収は600万円ほど必要です。

住宅ローンを利用する際は、家計の収支やライフイベントで発生する費用などにも注意しながら、どのくらいの借入金額に収めるか、また金利タイプはどうするかなどをじっくりと検討し、自分にあった住宅ローン商品を選ぶことが大切です。

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