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2022/10/3

新社会人が知っておきたい「お金の貯め方」

執筆者:冨士野喜子(ファイナンシャル・プランナー)

社会人になって、学生時代のアルバイトよりも収入が増えた方は多いのではないでしょうか。理屈の上では「収入が増えれば、お金も貯められるはず」なのですが、実際は何かとお金を使ってしまって手元に残っていないこともあるかもしれません。お金は自然と貯まるものではないため、貯蓄を成功させるには「お金を貯める仕組みづくり」が大切です。

今回は、新社会人が知っておきたい「お金の貯め方」をお伝えするとともに、資産形成に役立つ情報についてもお伝えします。

■貯蓄のモチベーションを保つには、ゴールの設定をしよう

貯蓄は短期間で実現するものではなく、ある程度の時間が必要となります。スポーツに例えるなら、「マラソン」です。どこがゴールかわからないマラソンを走り続けるのが辛いものであることは想像に難くありません。貯蓄も一緒で、長い戦いを制するためには、ゴールを明確に設定することが必須です。

ゴールの設定にあたって決めるべきことは、「何のために(目的)」「いつ(期限)」「いくら(量)」の3つです。「来年、旅行へ行くために10万円貯める」「3年後に○○の資格を取るために30万円貯める」「5年後の結婚資金に100万円貯める」など、明確なゴールを決めましょう。

ゴールを決めておけば、あとどれくらいで達成できるのか進捗をチェックしやすく、夢が近づいてくる感覚を楽しむことができるので、貯蓄のモチベーションを維持しやすくなりますよ。

■クレカやリボ払い、「便利さ」ではなく「注意点」も知ろう

お金を効率よく貯める上で活用したいのが、クレジットカード(クレカ)です。クレカはお買い物に使えるポイントが貯まったり、明細書を家計簿代わりに使えたりと利便性が高い一方で、注意したい点もあります。

まずひとつが、クレカは「後払い=借金」であるということです。クレカがあれば手元に現金がなくても品物を購入できますが、当然ながら、その購入費は翌月以降に支払うことになります。カードの使いすぎで支払額が口座残高を上回り、引き落としが行えなかった場合、クレカが使えなくなったり、他の借入ができなくなったりするため注意が必要です。クレカの利用額はこまめにチェックし、返済に支障が出ないようにしましょう。

もうひとつ、「リボ払い」の使いすぎにも注意すべきです。リボ払いはクレカの支払い方法のひとつで、利用額や利用件数に限らず、毎月一定額を支払います。大きな買い物をした翌月でも支払い額が変わらないので便利なように思いますが、手数料がかかるため、最終的な支払総額は利用金額を上回ってしまいます。「手数料にお金をかけるくらいなら、貯蓄に回したい」と考える方は、クレカを利用する場合もリボ払いはなるべく利用せず、「一括払い」を選択しましょう。

■投資における重要なポイント

家計を上手にやりくりし、お金を貯める習慣ができたら、次に検討したいのが投資です。貯まったお金で株式や債券を購入することによって、それらの商品が値上がりした際などに利益を得ることができます。ここでは、投資を始めるときに知っておきたい基本的なポイントを3つご紹介します。

●「リスク」と「リターン」は表裏一体

株式や債券、投資信託などの金融商品は、市場によって価格が上下します。購入時よりも値上がりすれば資金を増やせる可能性がありますが、逆に値下がりすれば資産が減る恐れがあります。

一般的に、より大きく値上がりする可能性がある商品は、より大きく値下がりするリスクを秘めています。金融市場には、値動きの幅が小さいローリスク・ローリターンなものから、ハイリスク・ハイリターンなものまでさまざまな商品があります。そのため、自分がどれくらいリスクを取れるのか、預貯金とのバランスも考えながら投資対象を選びましょう。

●若さが強みに!「複利効果」とは?

資金を運用して得られた利益をさらに運用することによって、利益が利益を生む状態になることを「複利効果」と言います。

例えば、年に5%のリターンを実現できる投資商品があるとしましょう。100万円を投資すれば年に5万円の利息が得られ、この5万円を単に貯金したとすると30年後の利益は合計150万円になります。しかし、この利息を投資に回して、1年目は100万円、2年目は105万円、という風に元本を増やしていけば、30年後には元本とは別に332万円の利益が生まれる計算になります。

この複利効果は投資期間が長ければ長いほど高まるため、若いうちから投資を始めることで、より効率よく資産を増やせますよ。

ちなみに、複利効果は運用の際だけでなく、お金を借りるときにも働く場合があります。借入期間が長くなればなるほど支払う利息も増えるので、負債がある場合は早めの返済を心がけましょう。

●iDeCoやつみたてNISAを賢く利用しよう

投資を始める際にぜひ活用したい仕組みとして「iDeCo(イデコ)」や「つみたてNISA(ニーサ)」などがあります。どちらも、長期・分散・積立投資に向いた「投資信託」などの商品に投資する制度で、定期的に積み立てた資金を運用しながら節税が行えます。

例えば、iDeCoを通じて投資信託などを購入すると、その分のお金が全額所得控除の対象となるので、給与から引かれる所得税・住民税を減らすことができます。また通常、投資で得た利益には税金がかかるのですが、iDeCo口座で発生した運用益は非課税となります。

このように税金面の優遇が大きいiDeCoではありますが、60歳までは原則資金の引き出しができない、毎月5,000円以上投資する必要があるなどの制限があるほか、会社員の場合は職場から証明をもらうなどいくつかの手続きが必要なため、利用する際は事前に細かな仕様を確認しておきましょう。

一方、つみたてNISAの場合、運用益が20年間非課税になりますが、iDeCoのように掛け金に応じて所得税・住民税が減るような仕組みはありません。しかし、最低投資金額はiDeCoよりも低額であることが多く、金融機関によっては月々100円から始めることも可能であるため、新社会人の方にも始めやすいでしょう。また、つみたてNISAの資金はiDeCoと違っていつでも解約して引き出すことが可能です。

なお、つみたてNISAと似た制度として「一般NISA」と呼ばれるものがあります。つみたてNISAよりも、より多くの金額を非課税で運用できます。ほかにも、つみたてNISAが投資信託だけを対象としているのに対し、NISAは株式も対象になるといった違いがあります。ただし、非課税期間がつみたてNISAよりも短く最大5年となるので注意が必要です。なお、一般NISAは2024年から新しい制度に切り替わるので、利用する際には変更点を確認しておきましょう。

つみたてNISAと一般NISAはどちらか片方のみを選んで利用する制度ですが、いずれもiDeCoとの併用は可能です。投資の目的、運用期間、投資資金に応じて、自分に合った制度を活用しましょう。

■お金を貯める癖をつけて、「なりたい自分」になろう

新社会人になって、今までと環境ががらりと変わり、新たな出会いがたくさんあったことでしょう。貯めたお金の使い方次第で、その出会いは大きく広がっていきます。社会人1年目は、旅行に行く、欲しいものを買う、資格を取るなど「なりたい自分」を叶えるためにどうお金を使えばよいかを考え、貯蓄の癖をつける1年にしてみてはいかがでしょうか。

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