2022/10/12
ETFとは?仕組みや投資信託との違い、メリット・デメリットを解説!
監修者:熊谷 正和(ファイナンシャルプランナー)
金融商品には「ETF」や「株」、「投資信託」などのさまざまな種類があります。ETFに興味があるけれど、そもそもETFとはなにか、どのようなメリットがあるのかわからないという方がいるかもしれません。
今回は、株式と同じように手軽に売買できるとして注目を集めるETFについて、仕組みやメリット・デメリットなどを解説します。
ETFは市場取引できる投資信託
ETF(Exchange Traded Funds)とは上場投資信託のことです。名前の通り投資信託の一種ですが、証券取引所に上場されているため、株式のようなリアルタイムの売買が可能です。
ETFは、インデックスファンド(指数連動型投資信託)と同じく日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの指数に連動するように運用されています。
指数とは、複数の銘柄から株式や債券などの全体的な推移や総合的な値動きを示すものです。そのためETFの取引を行うと、一回で自動的に分散投資を実現できます。
ETFの仕組みと種類
一般的に、ETFは複数の銘柄から成る指数に連動しています。例えば、TOPIXは東京証券取引所に上場する銘柄を対象として算出された株価指数のことで、TOPIXに連動したETFはTOPIXの値動きとほぼ同じ値動きをします。そのため、このETFを購入すると東証一部上場の全銘柄に投資したのと同じ効果が期待できます。
つまり、ETFはいくつかの金融商品を詰め込んだパッケージというイメージに近いため、1銘柄での分散投資が可能となるのです。
さらに、取引所に上場した商品であるため、投資家の判断で値動きを見ながらリアルタイムに取引を行えます。
現在、東京証券取引所に上場するETFは200銘柄以上あり、株価指数連動型の他、債権、REIT(不動産投資信託)、コモディティ(商品先物)など種類もさまざまです。
ETFと投資信託の違い
ETFと投資信託は、どちらも複数の投資家から資金を集めて、専門家が運用する投資信託です。しかし、同じ投資信託でありながらいくつか異なる点があります。
投資にかかるコスト
ETFは一般的な投資信託に比べると、信託報酬が低めに設定されています。
信託報酬とは、投資信託の運用や管理にかかるコストを指します。
ランニングコストである信託報酬が低いので、一般的な投資信託よりもETFの方が長期の投資に適しているといえるでしょう。
売買のタイミング
ETFは取引所に上場しているため、市場が開いている時間であれば銘柄ごとの売買単位に従ったリアルタイムの値動きで取引できます。一方、投資信託は1日1回算出される基準価額での取引のみです。
そのため、ETFであれば市場の値動きを追うことで効率良く利益を得られる可能性があります。
また、ETFは株式と同じように指値注文や成行(なりゆき)注文などの注文方法が可能なため、買いたいとき、売りたいときをご自身で決められます。指値注文とは、指定した値段を限度に取引をする注文方法で、成行注文とは、値段の限度は指定せずに数量だけ指定して取引をする注文方法です。
投資信託の当日の基準価額は取引終了後に算出されるため、申込み時点ではわかりません。そのため、ご自身の思うような金額で売買できないこともあります。
信用取引による取引
ETFは、株式と取引のルールがほぼ同じで、信用取引を行うこともできます。
信用取引とは、現金や株式などの一定の担保をもとに手持ちの資金を超えた金額で投資を行うことです。通常の投資信託は、現物の資金や保有がなければ売買が成立しません。ETFで信用取引を利用すれば、より大きなリターンを狙えるメリットがあります。
ただし、信用取引を利用すると相場の読みが外れたときに手持ち資金を超えた大きな損失を出すリスクがあるので注意しましょう。
ETFの始め方を簡単に解説!
ETFの始め方についての基本をわかりやすく解説します。
①証券会社に口座を開く
ETFの取引を行うには、まずETFの取扱いのある証券会社で口座を開くことから始めます。
最近はネット証券会社や証券仲介業を行う銀行など、ETFを取引できる選択肢が増えています。ご自身の取引スタイルや希望にあわせて、口座の開設先を選択するとよいでしょう。
ただし、同じETFの取引であっても証券会社ごとに売買手数料などのコストに違いがあります。コストによって運用結果に大きな違いが出ることもあるので、事前に比較検討しておくのがおすすめです。
口座の開設はオンラインや郵送による申込みが一般的で、書類の不備などがなければ、おおむね1週間から10日前後で開設できます。
②銘柄を選んで取引する
開設した口座に資金を入金すれば、銘柄を選んで取引を開始できます。
ETFの売買は、基本的に株式取引と同じルールに基づいています。取引時間は、平日の前場(9時から11時半)と後場(12時半から15時)です。
取引価格は銘柄ごとに決まっており、「売買単位(口数)×取引所価格(リアルタイムに変動する価格)」です。ご自身で銘柄と売買単位を指定し、指値注文か成行注文のいずれかで注文します。
売買が成立したら、売買価格に加え、金融機関の定める取引手数料を支払います。
ETFのメリット
ETFで投資を行う主なメリットには次のようなものが考えられます。
コストを抑えて分散投資できる
ETFのメリットのひとつが分散投資です。
特定の株式や投資信託だけに投資すると、相場によっては大きな損失を被ることになります。リスクを下げるのに有効なのが分散投資ですが、多数の株式や投資信託を買い付けるとなると、大きな資金が必要となります。
しかし、指数に連動して運用されるETFなら、例えば日経平均を構成する225本の銘柄への分散投資も、1回の購入で実現できます。個々の株式を買い付けるのに比べると、格段にコストを抑えながら投資リスクも下げられるのです。
値動きの違うETFや海外ETFなどを組み合わせると、さらに分散投資の恩恵を受けられる可能性が高まります。
一般的な投資信託に比べると信託報酬が低いため、長期保有のメリットも感じられるでしょう。
値動きが読みやすい
ETFは指数の動きに連動するため、値動きが読みやすいのもメリットのひとつです。指数として用いられる日経平均やTOPIXなどは、テレビや新聞の経済ニュースを気にかけておくなどすれば、ある程度値動きの判断ができます。
個別の企業動向を常に追うのに比べれば、日本の経済の流れを知ることはそれほど大変ではないかもしれません。
また、ETFのリアルタイムの値動きは、株価と同じようにパソコンやスマートフォンでいつでも気軽にチェックできます。
リアルタイムで取引できる
ETFは、取引所が開いている時間であれば、リアルタイムで何度でも自由に取引できます。さらに、指値注文や成行注文、信用取引など、一般的な投資信託よりもはるかに売買の自由度が高くなります。
ルールはどれも株式の取引でおなじみのものばかりのため、株式売買の経験者であればさらに始めやすいでしょう。
ETFのデメリット
メリットが多く魅力的な金融商品ですが、ETFにはいくつか気を付けておきたいデメリットもあります。
価格の乖離によるリスクがある
上場投資信託であるETFには、上場商品としての市場価格と投資信託としての基準価額が存在します。
市場価格は取引所でリアルタイムに変化し続けますが、基準価額は1日1回、当日の取引終了後に決定されます。つまり、上場商品としての価値に変動があっても、投資信託としては前日に決まった基準価額が当日の価値として固定されるのです。
そのため、市場価格と基準価額の価値が乖離すると、取引で損失を出す可能性があります。例えば、基準価額より低い市場価格でETFを売却するということは、本来の価値より安く売却したことになるのです。
とはいえ、ETFは指数との連動を目指して運用されているため、市場価格と基準価額の乖離がそれほど大きく広がることはほとんどありません。分散投資のメリットもあるので、乖離の「可能性」として考慮しておきましょう。
分配金の自動的な再投資が行われない
一般的な投資信託は、利益が出たときに投資家に支払われる分配金を、そのまま受取るか自動的に再投資に回すか選択できます。
しかし、ETFでは分配金は受取りのみで、再び投資をするには銘柄を選択し、買い付けるまでをご自身で行う必要があります。
投資信託の自動再投資であればかからないはずの手間、さらに購入時の取引手数料などの負担がかかる点は、ETFのデメリットといえます。
ETFなら初心者でも手軽に分散投資を始められる
ETFは、投資信託の一種でありながら、株式のようにリアルタイムで自由度の高い取引が可能です。1回の取引で分散投資を実現できるのも魅力といえるでしょう。
銘柄ごとに売買単位は異なりますが、数千円前後から取引できます。資金が少なくても取引できるので、はじめての投資として検討してみてはいかがでしょうか。