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2022年度の税制改正大綱の「家計への影響」は?

藤原洋子(ファイナンシャルプランナー)

2022年2月15日

税金は、生活全般において関連があり、私たちはさまざまな場面で税金を納めています。税金にはいろいろな種類がありますが、例えば、所得に応じて決まっている「所得税」や、買い物をしたときに同時に負担する「消費税」などは、目にする機会が多いでしょう。

私たちを取り巻く社会情勢などは常に変化していますので、税金制度はそれを踏まえて毎年改正が行われます。2022年度の改正点を押さえ、家計への影響を確認しておきましょう。

■2022年度の税制改正大綱が発表に

2021年12月、与党は「令和4年度税制改正大綱」を公表し、同月に閣議決定。この「令和4年度税制改正大綱」に沿って、2022年1月に税制に関連する改正法案が国会に提出されました。

通常国会の中で審議され成立すると、定められた日から改正された法律が施行されるという流れです。なお、「税制改正の大綱」「税制改正の大綱の概要」は財務省のホームページで公開されているため、アクセスすれば誰でも読むことができます。

この記事では、私たちの暮らしに関わる「令和4年度税制の大綱」の中から、家計への影響のある項目を解説します。

■家計への影響は?税制改正ポイントをチェック

●住宅借入金などを有する場合の所得税額の特別控除についての適用期限(国税)

改正前の住宅ローン控除が適用されるのは、2021年12月31日までです。また、分譲住宅で2021年11月30日までに契約し、2022年12月31日までに入居する場合も控除の対象となっています。

これから住宅購入を考えている方は、今後の内容が気になるところです。しっかりと押さえておきましょう。

2022年度の税制改正で、住宅ローン控除は主に以下の7点が変更されます。

  • (1)住宅ローン控除の適用期限を2025年まで4年延長する
  • (2)省エネ基準に適合した認定住宅などについては、一般の住宅より借入限度額を最大2,500万円上乗せし、新築であれば控除期間を13年とする
  • (3)住宅ローン控除率を現行の年末残高の1%から0.7%に引き下げる
  • (4)控除対象者の所得要件は、現行の3,000万円以下から2,000万円以下に引き下げる
  • (5)2023年までに建築確認を受けた、床面積40m2以上50m2未満の新築住宅などは、所有者の年間合計所得が1,000万円以下の場合に適用する
  • (6)2024年以降に建築確認を受ける新築住宅などのうち、一定の省エネ基準を満たさない住宅は、住宅ローン控除の適用対象外とする
  • (7)中古住宅が住宅ローン控除を受ける要件は、築年数によらず、登記簿上の建築日付が1982年以降の住宅とする

参考:財務省「令和4年度税制改正の大綱」、財務省「令和4年度税制改正の大綱の概要」

住宅ローン控除率が1%から0.7%に下がります。これは、住宅ローンの金利が大きく下がって、支払う利息分より控除率の方が高く、ローンを組むと有利になる「逆ザヤ」となっていたからです。改正によって妥当な控除率に近づいたと言えそうです。

また、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を実質的にゼロとする「カーボンニュートラル」を目指しています。省エネの性能が低いと、新築でも住宅ローン控除を受けられないことがありますので、購入などの際には関心を持っておきたいポイントです。

2021年度の適用要件などは、国税庁ホームページの「令和3年分確定申告特集」から確認できます。

●直系尊属からの住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置など(国税)

両親や祖父母から住宅取得などの資金の贈与を受ける場合には、一定の要件を満たすと非課税限度額までの贈与税がかかりません。

改正前の制度では、住宅取得などに係る契約日や住宅の区分により、非課税限度額が異なっています。2020年4月1日から2021年12月31日に契約した住宅のうち、省エネなどの基準に適合する住宅の非課税限度額は最大1.500万円、それ以外の住宅は最大1,000万円です。

住宅ローン控除と同じく、改正前の制度が適用されるのは2021年12月31日までです。2022年度の税制改正で、贈与税は主に以下の3点が変更されるため確認しておきましょう。

  • (1)適用期限を2023年まで2年延長する
  • (2)非課税限度額は、住宅取得等に係る契約締結日によらず、省エネなどの基準に適合する住宅は最大1,000万円、その他の住宅は最大500万円とする
  • (3)贈与を受ける方の年齢は、現行の20歳以上から18歳以上に引き下げる

参考:財務省「令和4年度税制改正の大綱」、財務省「令和4年度税制改正の大綱の概要」

新築だけでなく、中古住宅も適用対象です。贈与を受けると、若い世代は住宅を購入しやすくなり、子育てなど住宅以外のことにお金を使うことができます。

また、贈与を受ける方と住宅は、非課税の特例の対象として必要な要件を満たさなければなりません。2021年の法令などは国税庁のホームページで確認することができます。

国税について詳しく知りたい方は、国税庁ホームページの「税についての相談窓口」を確認し、電話などで問い合わせてみるとよいでしょう。

●上場株式などの配当所得等に係る課税方式の改正(地方税)

上場株式などの配当などの課税方法には、申告分離課税、総合課税、源泉徴収(申告不要)の3つがあり、所得税と住民税において改正前は別々に選べることになっています。課税所得によって所得税で総合課税を選択すると、源泉徴収より低い税率になるケースがあります。

また、国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険料を納めている方はご存じの方もいらっしゃると思いますが、保険料は住民税における所得をもとに計算されています。

上場株式の配当所得などを住民税の申告の際に申告不要を選択すると、所得として合算されません。その結果、保険料負担が軽減されるということになり、関心の高い部分でした。

2022年度の税制改正によって、2024年度分から所得税と住民税は同じ課税方法を選択することになり、別々の課税方法を選択することによる恩恵を受けられなくなります。2023年度までとなりますので、確定申告の際には活用したいところです。

■施行に向けて何をすべきか考えよう

改正法案は国会に提出された後、2022年3月末頃までに成立・公布される予定です。4月から改正された税制が施行されますが、1月1日からさかのぼって適用されるものもあります。

例えば、住宅ローン控除について、2022年度の税制改正では4年延長され、2022年・2023年は新築の借入限度額は最大5,000万円、控除期間は13年になります。

住宅購入を検討されている方もいらっしゃるでしょう。住宅購入資金は、教育資金と老後資金に並ぶ「人生の三大資金」と言われるように、大きな資金が必要になります。そのため、住宅購入の際には、借入限度額や控除期間のメリットに注目するだけでなく、住宅の立地や広さ、生活のしやすさ、購入時・購入後はどのような費用がいくら必要か、毎月の返済額に無理はないか、何歳までに完済するのか、教育資金や老後資金は準備できるかなども十分検討して決めることが大切です。

税制改正は毎年行われ、仕事に関係する項目だけでなく、生活に関係のある項目が数多くあります。家計に直接関わる情報ですので、しっかりとインプットして上手に活用しましょう。

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