【初心者必見】株式投資の利益に対してかかる税金
執筆者:中田 真
2021年4月2日
株式投資で売却益や配当金などを得た場合、その金額に対する税金を納付しなければなりません。今回は、株式投資の利益に対してかかる税金の概要や計算方法、確定申告や節税方法について解説します。
目次
- 株取引で税金はかかる?確定申告は必要?
- 譲渡益にかかる税金の計算方法
- 確定申告で必要な書類
- 確定申告の手間を省くなら「特定口座」を利用する
- 節税する方法
- 株式投資初心者は税金の基礎知識を押さえておこう
株取引で税金はかかる?確定申告は必要?
個人が株式投資を行って利益が出た場合、その利益の金額に応じて税金を納付する必要があります。株式投資で得られる主な利益は、株式の売却によって得られる譲渡益(値上がり益)と、企業から利益の一部として株主に分配される配当金の2つです。
譲渡益(値上がり益)、配当金の税率は共に20.315%(所得税15.315%、住民税5% ※復興特別所得税を含む)となっています。配当金については、確定申告で総合課税を選択した場合、累進課税(所得に応じた税率で課税)とすることもできます。
- ※復興特別所得税
東日本大震災の復興に必要な財源の確保に関する特別措置法に基づき、2037年まで特別復興所得税として各年分の所得税の額に2.1%を乗じた金額が追加で課税されます。
原則、確定申告は必要
会社員の場合、給与収入に対する納税は勤務先の会社が行います。そのため、給与収入以外の収入がなければ、原則として確定申告は不要となります。しかし、株式の売却によって得られる譲渡益(値上がり益)については年末調整の対象外となるため、確定申告が必要となります。後述しますが、証券会社で開設する口座が「特定口座(源泉徴収あり)」の場合は、原則として確定申告が不要となります。
配当金については税金が源泉徴収されるため、基本的には確定申告は不要です。ただし確定申告することも可能で、その場合は課税方式を総合課税、または申告分離課税から選択できます。
譲渡益にかかる税金の計算方法
株式の売却によって得られる譲渡益(値上がり益)は、年間(1月1日~12月31日)を通して損益を計算し、合算して年間の譲渡益(譲渡所得)を算出します。譲渡益(譲渡所得)の計算式は、以下の通りです。
譲渡益(譲渡所得)の金額=譲渡価額(売却金額)-取得価額(取得費)-売却手数料等
- 譲渡価額(売却金額): 売却単価×数量
- 取得価額(取得費): 株式の購入代金、購入時の委託手数料など
なお、株式の売却によって得られる譲渡益(値上がり益)は申告分離課税となっていますので、他の所得(給与所得や事業所得など)と合計せず、分離して税額を計算。確定申告によって税金を納付することになります。
【事例】譲渡所得金額が100万円の場合
譲渡益(譲渡所得)の金額が100万円の場合を例に、税額を計算してみましょう。
譲渡益(譲渡所得)の金額: 100万円
税率: 20.315%
譲渡益(譲渡所得)100万円に対する税額は、100万円×20.315%=203,150円となります。
確定申告で必要な書類
確定申告で必要となる主な書類は、以下の通りです。
1、確定申告書B(第一表)
2、確定申告書B(第二表)
3、確定申告書 第三表(分離課税用)
4、株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
5、所得税の確定申告書付表(譲渡損失があり、譲渡損失の繰越控除を適用する場合)
確定申告の手間を省くなら「特定口座」を利用する
株式投資を始めるには株を買うための資金のほか、買った株を預けておくための「証券口座」を証券会社に開設しなければなりません。証券口座は開設時に以下の3種類から選択します。
【一般口座】
確定申告:必要
譲渡損益の計算:自分で計算する
年間取引報告書の作成:なし
【特定口座(源泉徴収なし)】
確定申告:必要
譲渡損益の計算:証券会社が計算してくれる
年間取引報告書の作成:あり
【特定口座(源泉徴収あり)】
確定申告:不要
譲渡損益の計算:証券会社が計算し、税金を源泉徴収する
年間取引報告書の作成:あり
年間取引報告書は、証券会社が作成する株式等の取得価額や譲渡損益などの計算結果が記載された書類です。一般口座の場合は、株式等の取得価額や譲渡損益などの計算を自分で行う必要があります。
また、特定口座(源泉徴収あり)を選択した場合は証券会社が税金を源泉徴収して納税するため、特定口座内の譲渡益(値上がり益)に関して確定申告が不要となります。税金についての知識が少ない場合は、確定申告が不要な「特定口座(源泉徴収あり)」を選択するとよいでしょう。
節税する方法
株式投資における主な節税方法は以下の通りです。
1、NISA(少額投資非課税制度)を利用する
NISA(一般NISA)は毎年の非課税投資枠(120万円)を上限として、上場株式などの配当金、分配金、譲渡益を最長5年間非課税にする制度です。つみたてNISAは、一定の投資信託に積立投資をする場合に非課税の適用を受けられる制度となっています。なお、NISA口座は1人1口座のみ開設が可能です。
NISAでは譲渡益などが非課税になるというメリットがあります。一方で、NISA口座以外の口座(一般口座・特定口座)で保有する株式などの配当等や譲渡損益と損益通算ができなかったり、譲渡損失の繰越控除が適用できなかったりするデメリットもあります。
2、損益通算を利用する
損益通算では、利益と損失を相殺することで課税対象となる利益を減らせるため、納付する税額を低く抑えることができます。以下に、損益通算の例を挙げます。
【例】複数の証券会社に特定口座があり、証券会社Aでは20万円の黒字(利益)、証券会社Bでは20万円の赤字(損失)だった場合
- 損益通算なし
証券会社A(特定口座・源泉徴収あり):20万円の利益に対して、税金約4万円を納付
証券会社B(特定口座・源泉徴収あり):損失20万円(納付する税金はゼロ)
- 損益通算あり
証券会社Aの黒字(利益)と証券会社Bの赤字(損失)を相殺することができますので、20万円(利益)-20万円(損失)=0円となることから、納付する税金はゼロとなります。
上記のとおり、損益通算なしでは、約4万円の税金を納付することになりますが、損益通算ありでは納付する税金はゼロとなります。
3、譲渡損失の繰越控除を利用する
譲渡損失が発生した場合、翌年以降3年間にわたり上場株式等に係る譲渡所得等の金額からの繰越控除が認められています。譲渡損失の繰越控除では、翌年以降の譲渡益から繰り越した損失を控除できるため、課税対象となる利益を減らせることから納付する税額を低く抑えられます。なお、譲渡損失の繰越控除を利用するには確定申告が必要になります。
株式投資初心者は税金の基礎知識を押さえておこう
株式投資で利益を出すことを目指すのは当然ですが、その利益に対する税金の存在を覚えておきましょう。また株式投資で損失が発生した場合でも、損益通算や譲渡損失の繰越控除などを利用することで、納付する税額を低く抑えられる可能性があります。株式投資における税金や確定申告、節税などの基礎知識は、株式投資の利益(損失)に大きく関連します。株式投資初心者は知っておきたいところです。