カードローンとキャッシング(クレジットカード)の違いについてFPが解説
執筆者:佐藤名ゝ美(ファイナンシャルコーチ)
2024年1月11日
不意の支出に備え、普段から貯金しておくに越したことはありません。しかし、結婚式やお祝い事、思わぬケガや病気などどうしても急な出費が必要な場合もあります。そんなときに備え、カードローンやキャッシングのご利用を考えられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はカードローンとキャッシングの違いや、利用の際の注意点について解説します。
カードローンとキャッシング(クレジットカード)の違い
カードローンとキャッシング(クレジットカードのキャッシング枠)は、どちらもお金を借りる手段です。両者の違いを見る前に、まずは全体像を整理しておきましょう。お金を借りる手段にはどのようなものがあり、どのように分類されるのでしょうか。
お金を借りる手段には、「資金の使い道を限定したもの(目的別ローン)」「使い道が自由なもの」があります。また、借入れの際に「担保を必要とするもの」と「担保不要のもの」に分けられます。
資金の使い道を限定した目的別ローンには「住宅ローン」「リフォームローン」「教育ローン」「マイカーローン」などがあり、これらの資金は目的外に使えません。融資手続きの際には、目的となるものの契約書など、使途や金額を証明する書類が必要となります。手続きは煩雑ですが、そのかわりに金利は低く設定されています。対して、使い道が自由で手続きが簡素なものほど、設定されている金利は高い傾向にあります。
また、担保が必要なタイプのローンでは、不動産を担保とするのが一般的です。万が一返済不能となった場合には、担保物件を処分して返済することになります。借入れの際は担保評価や抵当権の設定が必要なため、手続きが煩雑かつ時間もかかりますが、無担保ローンよりも金利が低く設定されます。
以上のような分類の中で、カードローンやキャッシングは使い道が自由で担保不要のローンに区分されます。金利設定が高い分類に属していることを十分に理解した上で、節度を持った利用が大切です。
カードローンとキャッシングの具体的な違い
カードローンもキャッシングも現金を借りられるサービスですが、現金のお借入れ専用のカードローンに対して、クレジットカードの付帯サービスであるキャッシングはショッピングにも使えます。そのため、似ているようでさまざまな違いがあります。
カードローン | キャッシング | |
---|---|---|
金利 |
年1.0%~18.0%が目安で |
年15.0%~18.0%が目安で |
借入限度額 |
高め |
低め
|
借入方法 |
銀行振込み、提携銀行やコンビニのATM、インターネットバンキングなど |
|
返済方法 |
口座自動引落し、ATM利用、インターネットバンキングなどから選択 |
ショッピング枠の支払いに合わせた口座自動引落し、ATMの利用が一般的 |
融資までの時間 |
消費者金融系なら最短で即日融資も可能だが、銀行系は1週間~10日程度かかる場合もある |
クレジットカードを持っていない、キャッシング枠を付帯していない場合、申込みと審査が必要なため、当日~10日程度など、カードによって異なる |
年会費 |
利用がなくても不要 |
商品によっては必要 |
金利や借入限度額は金融機関ごとに設定が異なり、また申込者の返済能力などから個別に判断されるため、希望どおりになるとは限りません。しかし、キャッシングに比べると、カードローンの方が金利はやや低く、借入限度額はやや高くなる可能性が高いでしょう。
身近な銀行ATMを利用できるなど、お借入れの利便性は似ているカードローンとキャッシングですが、返済方法には違いがあります。
カードローンは毎月の支払期日に少額ずつを複数回にわたって返済(約定返済)します。余裕があるときには手数料なしに任意で返済することも可能です。
一方、キャッシングは一括返済かリボルビング払いのどちらかを選択します。ショッピングの利用代金と同じタイミングで口座引落される場合もあるので、返済のタイミングに注意が必要です。
また、状況によっては、どちらも即日融資が可能です。カードローンの場合、消費者金融系を選択すると多くの会社で申込み当日の審査と融資に対応しています。キャッシングの場合、すでにキャッシング枠の付帯するクレジットカードをお持ちであれば、提携ATMからいつでも融資を受けられます。
そして、とくにわかりやすい違いが年会費の有無です。カードローンは契約後にたとえ利用しなくても年会費はかかりません。しかし、クレジットカードには年会費のかかるものが多くあります。
これらの違いから、「少しでも低金利の借入れを実現したい」「少額からまとまった金額まで柔軟な対応が希望」の場合はカードローン、「海外でもお金を借りる手段を用意したい」「何度も繰り返して借りる予定がない」場合はキャッシングを選択するなどの使い分けがおすすめです。
カードローンの特徴・注意点
カードローンのもっとも便利なところは、利用限度の範囲内であれば使い道を問われることなく、いつでも何度でも借りられる点です。そうした気軽さからついつい借入額が膨らみやすく、返済も長期化しがちとなる傾向にあるため、注意が必要です。キャッシングと比べて低金利ではあるものの、融資商品全体の中では高金利に属します。使いすぎてしまった結果、住宅ローンやマイカーローンなど、他の借入れの妨げとなることもあり得ます。
キャッシングの特徴・注意点
キャッシングはクレジットカード発行時に設けられる枠を利用するため、担保や保証人、追加審査も必要のない手軽な融資です。また、海外でも利用できる点は最大のメリットでしょう。現地通貨で引き出し可能で、短期間で一括返済することで銀行や空港などで通貨交換を行うよりも手数料を安く抑えられる可能性が高いことも魅力です。
ところで、クレジットカードと言えば不正利用された場合の補償制度があることをご存知の方も多いでしょう。カード会社や警察への届け出など、必要な手続きを行った上で保険が適用されますが、カードの所有者に重大な落ち度があった場合など、補償の対象外となるケースもあります。
カードローンとキャッシングはどちらを利用すべきか
カードローンとキャッシングの使い分け方について、具体的に検討していきましょう。
キャッシングを利用した方がよい場合
「少額の資金をどうしても今すぐ借りたい、例外的に単発で調達したい場合」は、キャッシングの方が向いていると言えます。ただし、ご利用の際は後日一括返済することを前提にするのがおすすめです。先述の通り、一般的にキャッシングは融資商品の中で高金利のためです。
カードローンを利用した方がよい場合
借入額が大きい、または利用頻度が高い方は、カードローンの方が向いていると言えます。キャッシングと同じく、金利の問題が最大の理由です。借入金の利息は、常に残高に対して発生します。高額の借入金に対して高い金利が適用されては、返済が困難になりかねません。可能な限り低利の融資を利用できるよう、細心の注意を払うべきでしょう。
ご利用の前に…いくらの利息を負担するの?「%」は必ず「円」に換算して
カードローンとキャッシングの違いについて見てきました。お金を借りる際は、資金の目的別に可能な限り低金利で受けられる融資を選び、返済期間や返済額に無理が生じないよう綿密な計画を立てることが大前提です。どうしても必要な場合はできるだけ少ない金額に止め、短期間で完済するよう心がけましょう。返済計画を立てるためにも、月々返済額のうちどれぐらいの金額が利息の支払いに充てられているのかを明確に意識しておきたいものです。また、カードローンやキャッシングは月々の返済のみならず、臨時で返済できます。臨時で返済することで利息の低減が可能です。
なお、ひと月あたりの利息額の目安は「借入金残高(円)×年率(%)÷12(ヶ月)」の式で求められます。例えば、残高50万円で金利年15%の場合、1ヶ月分の利息は6,250円です。このとき、月々返済額が15,000円なら8,750円、月々返済額が10,000円なら3,750円が、元金の返済に回っていることになります。このように、「%」は必ず「円」に換算し、いつまで返済を続け、総額でいくらの利息を負担することになるのか、返済についての全体観を持つことが計画性の第一歩になります。