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FPが選ぶ!お金の使い方がうまい昔話3話(ためになる昔話し3話)

執筆者:篠岡わかな(ファイナンシャルプランナー)

2019年9月12日

昔話は小さい子どもにも分かるように作られていたり、深い道徳や教訓がさりげなく織り込まれていたりします。なかにはお金の使い方や考え方で大変参考になる昔話も少なくありません。今回はお金に関する教訓が得られる昔話のうち、FPが厳選した3つを紹介します。

昔話1 わらしべ長者

言わずと知れた『わらしべ長者』は、日本のおとぎ話の一つです。物々交換によって貧乏人が大金持ちになる経緯を記したもので、『今昔物語集』や『宇治拾遺物語』に原話が見られるほか、海外にも類似した物語もあります。日本版では原文に多少の違いは見られるものの、「わらしべ→アブを結び付けたわらしべ→ミカン→反物(布)→馬→屋敷」の順に持ち物が高価になっていく展開が定番です。

この昔話から得られる教訓は、「お金は使わないと価値を生まない」といったことではないでしょうか。収穫した後の稲の茎に過ぎないわらしべを、“わらしべ”として持っていただけなら男が裕福になることはありませんでした。しかし「わらしべにアブを結び付ける」という付加価値を加えて幼子に与えることで、ミカンと交換することができたのです。

ミカンは自分で食べることもできましたが、より必要とする人に与えることで反物(布)になりました。病気の馬は治療してあげることで屋敷の主人の目に留まり、馬を貸して留守を請け負うことで最終的に屋敷まで手に入ります。若干ラッキーな面があることは否めませんが、自分が持っているものを上手に使って豊かになっていくさまは、現代社会にも通じるところがあるのではないでしょうか。

貨幣経済も物々交換の一種と考えると、わらしべ長者から学べることはおおいにありそうです。

昔話2 さるかに合戦

『さるかに合戦』といえば、親を殺された小ガニたちが猿へ復讐することがクローズアップされがちです。しかしこの話の真髄は猿とカニがおにぎりと柿の種を交換した序盤にポイントがあるのではないでしょうか。猿はカニのおにぎりを欲しがり、「種はまけば木になって実がたくさんなる」と付加価値を教えられ物々交換にいたります。

この時点ではおにぎりのほうが柿の種よりもボリュームがあり、すぐに満足が得られる魅力的な財でした。しかしのちに柿の種は本当にたくさんの実を付けた木になります。時間の経過とともに価値が逆転したのです。(それが例の事件のきっかけとなってしまったわけですが)言うなればおにぎりは「消費」、柿の種は「投資」です。

目先のことだけを考えれば消費が優先されますが、将来のことを考えれば投資は欠かせません。先のことを考えれば長期的展望でものごとを俯瞰(ふかん)することも必要です。ただし、おにぎりを選ぶのがダメで柿の種を選ぶのが賢いとは言い切れません。なぜなら将来への投資は今が満たされていることが前提だからです。

例えば「貯金を優先しすぎて生活費を借金してしまう」といった矛盾した行為が本末転倒であることは言うまでもありません。猿は今日おにぎりを食べないと死んでしまう状況だったのかもしれません。消費と投資、どちらの視点も大事であることを思い出すきっかけにしたい物語です。

昔話3 ガチョウと金の卵(イソップ物語)

3つ目は海外の童話であるイソップ物語の『ガチョウと金の卵』です。イソップ物語にはなかなか辛らつなストーリーが含まれているため、お金の面でも大変参考になります。ストーリーのあらすじを改めて確認してみましょう。ある貧しい田舎者がガチョウを飼っていて、ある日ガチョウがキラキラと光る金の卵を産みました。男がその卵を市場に持っていくと高く売れ、だんだん金持ちになっていきます。

しかしガチョウは金の卵を1日1個しか産まないため、男はやがて待ちきれずガチョウの体にあるであろう大量の金を一度に手に入れようと考えるのです。しかし実際に腹を開いてみると金などどこにもなく、金の卵を産むガチョウは死に男はまた貧乏に逆戻りしてしまいました。この話の中の男は、せっかくの「お金がお金を生む」という仕組みを自ら壊してしまいます。

資産形成をするうえで必要不可欠な「タネ銭」に手を付けることは、タコが自分の足を食べるようなものです。これは個人だけでなく有名な経営者でもやってしまいがちな失敗なので、ぜひ読んで自分自身に戒めておきたい話の一つです。

昔話は子供の金融教育と大人の気付きに役立つ

昔話は子供に楽しく読み聞かせるだけでなく、金融リテラシーを高めることにも役立ちます。物語に乗せることで、お金の話はいっそう身近に感じられるものです。一方的に聞かせるだけでなく、「あなたはおにぎりと柿の種、どっちがいい?」などと問いかけてみても良いでしょう。

大人にも上記の3話のような昔話は役に立ちます。お金との付き合い方に明確な正解はなく、自分なりの哲学が必要です。「自分ならどうするか」「その選択肢から考えられる結末は」など想像することにより、さまざまな気付きを得ることができます。シンプルで示唆的な昔話は、そういった思考のトレーニングに最適なのです。

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