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故人の預金引き出し、義理の親の介護……改正相続法の4つのポイント

執筆者:鈴木まゆ子(税理士)

2019年6月28日

昨今の社会の高齢化や家族形態の多様化に対応すべく、昨年2018年7月6日に改正民法(相続法)が成立、2019年1月13日以降、順次施行されています。今回は、改正相続法の主なポイントを4つに分けて解説します。

改正のポイント1 預貯金の払い戻しがしやすくなる

相続財産である預貯金債権は、遺産分割の対象です。

通常、遺産分割完了前は相続人全員の同意がない限り、預貯金の払い戻しができません。しかし現実には、被相続人の葬儀費用や生前の生活費、借金や税金債務などを被相続人の預貯金から支払う必要があります。

今回の改正(19年7月1日施行)では、遺産分割完了前でも、次のいずれかの方法で、相続人全員の同意がなくても預貯金を払い戻せるようになりました。

方法1 金融機関の窓口で直接払い戻し請求

この方法では、家庭裁判所での手続きが不要であり、時間的・金銭的コストを抑えることができます。ただし払い戻し額に上限(※)があるので注意が必要です。緊急性の高い支払いがあるときの活用が見込まれます。

※単独での払い戻し額の上限:相続開始時の預貯金債権の額(口座基準)×1/3×当該払い戻しを行う共同相続人の法定相続分、かつ、一金融機関の上限150万円

方法2 家庭裁判所に仮払いの申立てを行う

もう一つは、家庭裁判所に法定相続分の仮払いを請求して払い戻しを受ける方法です。この方法では、払い戻し額に上限はありません。預貯金債権の法定相続分の全額の仮払いを受けることも可能です。ただし、手続きに時間的・金銭的コストがかかり、仮払いの理由も求められます。緊急度が低く、かつ遺産分割協議が長引きそうなときに活用されることになるでしょう。

改正のポイント2 配偶者居住権ができ、相続後の生活が安定化

今回の改正で配偶者居住権が創設され、以下のように変わります。

配偶者の自宅相続後の生活が安定化する(20年4月1日施行)

現行の民法では、配偶者の法定相続分は相続財産全体の2分の1とされています。一見、優遇されているように見えますが、実際には被相続人所有だった自宅を相続するのに法定相続分のほとんどを使ってしまい、相続後の生活費が不十分となるケースがありました。

改正により、配偶者は配偶者居住権を相続することで自宅に住み続けられるだけでなく、相続後の生活費も十分に得られるようになりました。

20年以上婚姻期間のある配偶者への「自宅」の生前贈与が優遇(19年7月1日施行)

配偶者居住権は、生前贈与にも影響します。配偶者への「自宅」の生前贈与は、遺産の先渡し(特別受益)とされ、配偶者の相続分が減らされていました。

しかし、配偶者居住権の創設により、20年以上連れ添った配偶者への自宅の生前贈与は特別受益の対象外となります。

つまり配偶者はより多くの財産を相続し、生活を安定させやすくなるのです。

改正のポイント3 「自筆証書遺言」のパソコンでの作成や法務局での保管が可能に

遺言の作り方は2種類あり、自作する「自筆証書遺言」と、公証人の関与を受ける「公正証書遺言」です。今回、「自筆証書遺言」の方式に関して改正が行われました。具体的に仕組みが変わるのは以下の2点です。

自筆証書遺言が手書きでなくてもよくなる(19年1月13日施行)

これまで自筆証書遺言は、財産を遺す人自らが手書きで遺言を全文書く必要がありました。また、添付する財産目録もすべて手書きでした。

今回の改正では、その手書きの負担を軽減すべく、財産目録についてはパソコンでの作成や通帳のコピー、登記簿謄本などの添付が認められます。ただし自署押印は必要なので、従前どおり偽造は防止できるとされています。

法務局で遺言を保管する制度ができた(20年7月10日施行)

多くの自筆証書遺言は自宅で保管されます。自宅での保管には、紛失や書き換えのリスクが伴います。今回の改正では自宅保管の他、法務局で自筆証書遺言の原本保管ができるようになります。法務局で保管された自筆証書遺言に関しては、家庭裁判所による検認は不要です。これによって、自筆証書遺言は法的効力をより発揮しやすくなるのです。

改正のポイント4 特別の寄与料制度ができ、介護に尽力した家族が報われるように

被相続人の生前の介護に、長男の妻(嫁)など“相続人以外”の親族が尽力するケースが多くあります。

しかし、現行法では、これら親族が尽力しても遺産を相続することはできません。一方、介護にかかわっていない相続人は遺産を相続することができます。

この不公平を解消すべく、無償の介護や看護などにより被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人以外の親族は、相続人に対して特別の寄与料として金銭を請求できるようになりました(19年7月1日施行)。

今回挙げた4つのポイント以外にも、遺留分制度の見直し(2019年7月1日施行)などが行われています。2019年から20年にかけて、改正民法の施行が相次ぎます。相続が発生した際は、その時点でどの改正項目が施行されているかを確認するようにしましょう。