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余剰資金ができたら住宅ローン繰り上げすべき?投資すべき?

執筆者:三原由紀(ファイナンシャルプランナー)

2019年6月6日

住宅ローンの返済中に余剰資金ができた場合、ローンの繰り上げ返済に充てたほうがいいのでしょうか。それとも、投資に回したほうがいいのでしょうか。ローンは早く返済したいと誰もが思うものですが、住宅ローン控除を利用している場合、「繰り上げ返済しないほうがいいのでは?」と悩むかもしれません。具体例を挙げて、検証してみましょう。

繰り上げ返済と住宅ローン控除で家計全体のプラス効果を考える

まず、「余剰資金」とはどういうお金のことなのでしょうか。手元にあるお金を3つのグループに分けて考えてみましょう。

1つ目は「日常の生活費」で、6ヵ月~1年分の生活費を手元に置いておきたいところです。2つ目は「5年以内に使い道が決まっているお金」で、子供の教育費や住宅のリフォーム費用などがこれにあたります。「日常の生活費」と「5年以内に使い道が決まっているお金」については、元本確保と自由に引き出せることを最優先に考えて、普通預金や定期預金などにプールしておくといいでしょう。

3つ目が、上記2つ以外のお金である「余剰資金」です。

ここでは、100万円の余剰資金ができたケースについて具体的に見ていきましょう。借り入れ中の住宅ローンは、残債が3,000万円、金利は10年固定型の変動タイプで0.59%、住宅ローン控除は残り9年とします。

この条件で1年後に100万円を繰り上げ返済すると、利息軽減効果は約22万円です。繰り上げ返済を行なうと残債が減りますが、住宅ローン控除の適用を受けている場合は控除される税金も減ることになります。住宅ローン控除は年末時の残債に控除率1%を乗じた金額(最大40万円)が所得税から控除される制度です。

つまり100万円を繰り上げ返済すると、控除される税金は1万円減ることになります。家計全体で考えると、100万円の繰り上げ返済で約21万円(約22万円-1万円)のプラスとなります。

投資をする際は長期の積立で

前提として、住宅ローンで変動金利を利用している場合、将来金利上昇によって総返済額が増え、負担が大きくなる可能性があります。ただし、今回のケースでは、10年間は固定金利0.59%なので、住宅ローンの金利以上で運用できる可能性は高いでしょう。

投資は資産を増やすことが目的ですが、資産を減らすリスクもあります。リスクを減らすために押さえておきたい投資の基本は「長期・積立・分散」です。投資期間は、少なくとも10年以上を考えたいところです。100万円が手元にある場合でも、毎月数万円を積立する方法を検討しましょう。

その際、利用したいのが「つみたてNISA」です。つみたてNISAは、毎年40万円を上限として最長20年間投資で得た利益が非課税となる制度です。運用商品は金融庁が資産運用に適するとお墨付きを与えた投資信託のみなので、投資初心者でも始めやすいでしょう。例えば、毎月1万円を100ヵ月(8年4ヵ月)に渡って合計100万円を積立投資した場合、年利3%だと利益は約13万5,000円になります。

繰り上げ返済と積立投資の両方を行うことも考えてみよう

積立投資ならまとまった資金が不要なので、余剰資金100万円で繰り上げ返済と積立投資の両方を行うこともできます。例えば60万円で繰り上げ返済を行い、残りの40万円をつみたてNISAで運用することを考えてみましょう。60万円の繰り上げ返済を行うと、約13万円の利息軽減効果があります。

つみたてNISAの上限額は年間40万円なので、毎月3万3,000円ずつ積立投資を行います。長期・積立が基本なので、2年目以降も継続することが前提です。その積立額が厳しい場合は、減額してでも積立を継続したいところです。

また、住宅ローン控除で還付される税金を投資に回すことも考えてみましょう。なお、金融機関によって最低積立金額は異なるので、積立額を減額する可能性がある場合は、つみたてNISAを始める前に確認しておきましょう。

繰り上げ返済を行なうことで本来支払うべき利息が軽減されることは、家計にとって大きなメリットです。しかし、これだけで資産を増やすことは難しいでしょう。適切に投資を行うことも必要と言えます。家計における「繰り上げ返済と投資のベストバランス」を考えてみてはいかがでしょうか。

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