初心者がNISAで始めるカンタン分散投資
執筆者:冨士野喜子(ファイナンシャルプランナー)
2019年1月25日
「投資」と聞くと「資金がない」「何をどうしていいのか分からない」「ギャンブルのようで怖い」と思う人もいるでしょう。しかし投資はギャンブルではありませんし、少額で始められます。個人投資家への優遇税制として2014年に導入された「NISA(ニーサ)」を中心に、初心者でも検討しやすい投資方法を見ていきましょう。
「NISA」が注目されている理由
NISAがここまで注目されているのは、「税金の面でかなりお得だから」です。
通常、投資で得た利益には税金(20.315%)がかかります。10万円の利益が出ても約2万円の税金を支払い、手元に残るのは8万円弱になります。しかし「NISA口座」で取引した場合は、税金がかからず、丸々利益を手にすることができるのです。
NISA口座は20歳以上なら誰でも作れますが、2023年までに口座を開設して商品を購入しておかなければなりません。いくつかのルールもあります。「非課税期間は最長5年間」、「非課税となる年間の投資額120万円まで」、「1人1口座」です。途中で金融機関の変更は可能です。
NISA口座で購入できる商品は、株式や株式投資信託、ETF(上場投資信託)などです。債券は対象外ですが、初心者は投資信託やETFなどから購入を検討してみてはいかがでしょうか。それは投資の基本である「分散投資」がしやすいからです。
なぜ分散投資をしたほうがいいの?
分散投資とは、投資先を1つに集中させず、複数にバランス良く投資することです。投資において「1つのカゴに卵を盛るな」という格言があります。卵を入れたカゴを落としたときの損失に備えて、卵を入れるカゴを複数に分けて入れておくのです。
何を分散させるかというと、「資産」「地域」「時間」です。「資産」とは買う商品のことです。一つの会社の株式ばかり買わない、債券ばかり買わないことです。「地域」とは、日本だけ、米国だけではなく、アジアやヨーロッパなど投資先の地域を分けることです。そして「時間」の分散は、一度に商品を購入するのではなく、何度かに分けて購入してタイミングをずらすことです。
分散投資をするのは「リスク」を抑えるためです。リスクというと「危険性」と思われがちですが、そうではなく「投資で得られるリターン(運用益)の不確実性の度合い」のことです。つまり商品価格が値上がり・値下がりする幅のこと。この幅が大きい商品は「ハイリスクハイリターン」。商品価格が大きく値上がりするとリターンも大きくなりますが、その反面、値下がりした時は損失も大きくなる可能性があるのです。
「リスク」にもいろいろあり、投資先の会社や国の破たんしたときのリスク(信用リスク)や、外国のお金で取引される商品に投資した時の為替レートリスク(為替リスク)などいくつかに分類されます。こうしたリスクの影響を抑えるために分散投資が良いと考えられます。
初心者でも分散投資しやすい投資信託
株式や債券への投資では、これらの分散投資をしようと思うと、多くの投資資金や知識が必要です。そこで、「少額で」「手軽に」「分散投資」ができる商品としては、投資信託やETFが初心者向きの商品と言えます。
投資信託とは、複数の投資家から集めた資金を投資のプロが運用し、その利益を投資家に還元する商品です。1万円程度からも購入できますし、金融機関によっては月々1,000円から積み立てることもできます。投資信託には、国内株式や海外の債券に投資するもの、全世界の株式や債券を広く対象にしたもの、アジアに投資先を絞った商品など様々あります。
1つの商品で分散投資ができ、積み立てで購入する場合は「時間の分散」もできます。運用をプロに任せている分、手数料(信託報酬など)は購入時の手数料とは別に毎年かかりますが、簡単に分散投資ができ、プロに運用を任せられる点を考えると初心者にとってハードルは低いのではないでしょうか。
さらにETFは、投資信託でありながら上場しており、信託報酬という手数料が安いことが多いほか、売買しやすいメリットもあります。
つみたてNISAやジュニアNISAもスタート
こうした投資信託やETFをNISA口座で購入して投資するのが初心者の投資家にはおすすめといえます。
またNISAと類似する制度として「つみたてNISA」も2018年からスタートしました。投資できる商品が、NISAと比べて少なく、年間の投資額は40万円までと投資枠が少ないのですが、「非課税期間は最長20年」と長いメリットがあります。また19歳までの子供が利用できる「ジュニアNISA」では、毎年80万円まで、2023年まで投資できます。口座を運用管理するのは両親や祖父母などですから、お子さんがいる方は検討してもいいかもしれません。
「習うより慣れろ」といいます。あまり難しく考えず、NISA口座を活用しながら分散投資で将来のための資産形成を始めてはいかがでしょうか。