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所有から利用を重視へ「定額課金サービス」「フリマアプリ」人気が示す消費者の変化とは

執筆者:伊藤亮太(ファイナンシャルプランナー)

2018年11月22日

動画や音楽の配信、電子書籍をはじめとする月額課金サービスが、「サブスクリプション」(通称:サブスク)と呼ばれて注目されています。サービスの幅がコンテンツの購読・レンタル以外にも広がっており、以前は「借りる」ものではなかったファッションも対象になっています。その一方でフリマアプリが人気で、不要なモノは売却するのが珍しくなくなりつつあります。モノを持つということの意味が変わってきているようです。

カラオケの月額利用、ファッションレンタルサービスの登場

サブスクリプションモデルでは、利用者はそのモノを買うのではなく利用権を借りる形をとり、利用期間などに応じて料金を支払います。

もともとサブスクリプションには「予約購読」といった意味があり、音楽や映像、コンピュータなどのソフトウェアに対して利用されることが多かったようですが、最近ではこうしたデジタルコンテンツに限らなくなってきています。

たとえば、最近では「カラオケ」の月額利用も始まっています。あるカラオケチェーンが2018年5月から、毎月1,500円(税別)で部屋代が無料になるサービスを始めました。

「そんなにカラオケに行かないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、カラオケ好きな人は1人でも楽しみますし(1人カラオケ)、最近ではパソコンを持ち込んでカフェ代わりに使う人もいるようです。たしかに多くのカラオケ店では電源もWi-Fiもあり、個室で邪魔されずに仕事ができるため、はかどるのかもしません。お店側にしてみれば、来客の少ない時間帯をうまく利用できるメリットがあります。

カラオケ以外の最近注目のサブスクリプションには、ファッションレンタルサービスが挙げられます。各種サイトを見ると、主に20代から30代のOLをターゲットにしているようです。月額料金を支払うことで、スタイリストがコーディネートした洋服などをレンタルできるサービスです。

購入せずに借りるという仕組みを利用することで、様々なファッションを楽しめるほか、持ち物を増やさないこともメリットと考えられているようです。

モノを購入する前に「売却できるか」を考える

サブスクリプションモデルが支持されている背景には、モノを持つためにお金を払うよりも、出費を抑えて借りるという合理性を優先する傾向が強まっていることがあるのではないでしょうか。

それはフリマアプリの人気ぶりを見てもわかります。以前からネットオークションを利用して、不要になったモノを売るという人は少なからずいました。しかし最近では、スマホから簡単に出品ができるフリマアプリが支持されるようになり、不用品を売却するという人が増えていると思われます。

また最近のフリマアプリの調査では、「店頭で商品を買う前にフリマアプリで価格を確認するようになった」という人が増えているそうです。「もし使わなかったら売る」ことが当たり前になってきているのではないでしょうか。

実際、女性が海外通販サイトなどでブランド品を買う場合、割引率の高い定番商品を購入する人が多いそうです。なぜなら、定番品は後々フリマアプリなどで確実に売れるからです。

また各種シェアリングサービスが流行していることからも、所有よりも利用、つまり機能を重視する傾向が強まっていると言えます。たとえばマイカー。日本全体の乗用車保有台数は増えているものの、世帯のマイカー保有率は下がっています。以前からレンタカーサービスはありましたが、事前にネットで申し込んでおくだけで簡単に乗れるカーシェアリングサービスが、世帯のマイカー保有率の減少を後押ししていると考えられます。

将来への不安が背景にあるのかも?

所有より利用、新品より中古。使わないものは売却、売却を考えて購入。こうした姿勢が強まっている背景には、将来に対する漠然とした不安があるからかもしれません。

給料が上がらないかもしれない、年金がどうなるか分からない。だからこそ新品にこだわらず、中古品をうまく活用することで無駄なお金を使わない。必要なものを吟味して購入し、不要になれば売却する。

こうした考え方の変化について、ある著名な経済評論家は「欧米先進国型の価値観に進化しつつある」と指摘しています。

欧米に近づいているのか、進化なのかは別としても、「名を捨てて実を取る」という考え方は、「もったいない」ことを嫌う日本の国民性に合っているといえるのかもしれませんね。

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