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東京オリンピックで景気はどうなる?過去開催国の傾向から考えてみた

執筆者:株式会社ZUU

2017年12月26日

一般的に、オリンピック開催国の景気は、オリンピックが近づくにつれて良くなる傾向にあるといわれています。では、「東京2020オリンピック・パラリンピック」に向けて、日本の経済も活性化していくのでしょうか。過去のオリンピック開催国や1964年に行われた東京オリンピックのGDP、株価などを参考にしながら、景気の行方を考えてみましょう。

オリンピック開催国のGDPは、開催後のほうがいい!?

図1:オリンピック開催国のGDP 開催年前後5年推移(開催年を1とした場合の指数推移)
  • 世界銀行(The World Bank)公開データを参照

過去のオリンピック開催国のGDP(国内総生産)について、開催年の前後5年の推移を調べた結果が図1です。1964年の東京オリンピックから、2016年のリオデジャネイロオリンピックまで、開催年を基準に前後5年分のGDPをプロットしています(ただし、1980年開催のモスクワオリンピックは除く)。

図内の赤い太めの線が平均値です。そして、平均線を見ると景気は右肩上がりになっているのがわかります。これによりオリンピック開催国のGDPは、おおむね上昇するといっても良さそうです。また、オリンピック開催後の5年間も上昇しているのがわかるでしょう。具体的にいうと、開催年前の5年間で約40%上昇していますが、開催後5年間では約60%上昇しています。むしろ開催後の5年間での上昇率が高くなっているのです。

1964年の東京オリンピック前後のGDPはどうだった?

図2:1964年東京オリンピック前後5年間のGDP(開催年を1とした場合の指数推移)
  • 世界銀行(The World Bank)公開データを参照

さて前回、1964年に行われた東京オリンピック開催前後の日本のGDP推移はどうでしょうか(図2)。東京オリンピック前後のGDPは薄いブルーの線で表しています。これを見ると、平均(赤の線)よりも上昇率が高くなっているのがわかります。特に、開催後の上昇率が、平均より優っているのが読み取れます。

図3:1964年東京オリンピック前後の日経平均株価推移 年足30年チャート
  • 日経の指数公式サイト「日経平均プロフィル」を参照

続いて、1964年東京オリンピック前後の日経平均株価の推移を確認してみましょう(図3)。株価もオリンピック開催年に向かって上昇する傾向にあるといわれています。ここでは、トレンドライン(株価の動きの傾向を示すためにチャート上に引いた補助線。ここではグリーンのライン)を大まかですが引いています。これを見ると、オリンピック開催に向けて上昇していますが、開催終了後のほうが上昇しているのがわかります。

東京2020オリンピック・パラリンピックの経済波及効果と景気の行方

2017年3月に東京都のオリンピック・パラリンピック準備局がまとめた資料によると、東京五輪の経済波及効果は、東京都で約20兆円、全国で約32兆円だと試算されています。分析対象期間は2013年(招致決定年)から2030年(大会10年後)までと長期にわたっていますが、それでも32兆円の効果といったら大変な額です。また、東京都で約130万人、全国で約194万人の雇用を創出すると試算されています。これにより経済的にもビッグイベントとなっていることがわかります。さらに、インバウンド(訪日外国人旅行者)需要の増大も見込めるため、日本の景気に大きな影響があることでしょう。

そして、経済的なビッグイベントとなればお金が必要です。日本国内での投資が増えるため、日本円が必要になります。これにより、外貨で保有している資産を円に換える動きが出てきます。外貨売りの円買いですから円高圧力になると考えられます。日本国内でお金がまわる=経済的に活性化することは確かだといえるでしょう。

逆に、海外投資家が日本株を買うときには、為替による変動リスクを抑えるため日本円を売ります(為替ヘッジ)。日本株が上昇すると、ヘッジ(損失が出ないように対策を講じるという意味)として日本円売りも増加するので、円安につながります。円安になれば輸出産業の利益が増加するため、ますます日本株の上昇につながるのです。

なお、1964年の東京オリンピック開催当時は、1ドル360円の固定相場制だったので前回の例は参考にできませんが、為替は円高圧力と円安圧力とのバランスで推移すると考えられます。

まとめ

以上の考察から、オリンピックが開催されると、開催国のGDPは上昇して、株価も上昇する可能性が高いといえます。また、オリンピック前だけではなくて、オリンピック終了後もこの状態が続く傾向にあります。

もちろん相場はそれほど単純ではありませんが、オリンピックは決して小さくはない経済波及効果をもたらすといえるでしょう。現在、景気の良さを肌で感じることは少ないですが、オリンピックが近づくにつれて大会ムードが盛り上がるとともに、今後はそれを感じることがあるかもしれません。

  • 日経平均株価は日本経済新聞社の著作物です。

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