為替には傾向がある?海外旅行へ行くなら何月がチャンスなのか調べてみた
執筆者:株式会社ZUU
2017年11月17日
1月の「1月効果」、3月の「3月決算」、5月の「Sell in May」など、為替には月ごとの傾向があると言われることがあります。今回は、海外旅行へ行くなら何月がチャンスなのか?という視点で為替の傾向を考えてみました。
過去20年の傾向から分かること
さて、ここで為替の値動きを調べてみましょう。為替は、毎年ある一定の時期に同じような傾向がみられる場合があります。このような経験則を「アノマリー」と呼びます。アノマリーは、米大統領選挙のような大きなイベントに関するものもありますが、カレンダーに連動しているものもあります。
上の図は、過去20年のドル・円相場を月ごとに集計したものです。上に向かうとドル高・円安、下に向かうとドル安・円高です。図1でみる限り、4月がドル高・円安で10月がドル安・円高となっていて、その差は3円程度あります。経験則なので確実ではありませんが、20年の傾向は決して無視できません。
月ごとにあるアノマリー
それでは、カレンダーに連動するアノマリーにはどのようなものがあるのでしょうか。
- 1月
- 個人や欧米企業にとっては1年の始まりです。心機一転、新たなトレード戦略で相場に取り組む投資家が多いと考えられます。そのため、1月はその年の最高値・最安値となる場合が多く、1月のトレンドがその年のトレンドとなる場合が多いと言われています。「1月効果」などと呼ばれるアノマリーです。
- 2月
- 2月に関連するアノマリーとして「節分天井、彼岸底」という言葉がありましたが、この20年では目立った傾向はありません。どうやら古いアノマリーのようです。今はむしろ、1月の動きを引き継ぐことが多いようです。
- 3月
- 東証に上場している会社のうち、7割近くの企業が3月決算となっています。決算に向けた外貨を円に換えるレパトリエーション(Repatriation)により、円高圧力が働きます。投資資産の手仕舞いや、輸出企業のドル売り・円買いが出やすくなります。
- 4月
- 4月は新年度として、新たな投資が生まれやすいと言えます。また、ゴールデンウィークで海外旅行用のドル需要もあります。年間でドルが高かった月なので、海外旅行には不利な月と言えるかもしれません。
- 5月
- 5月のアノマリーで有名なのは「Sell in May:5月に株を売れ」です。主に株の話ですが、株が売られて安くなるとドル安・円高圧力が強まります。
- この理由の一つが、米ヘッジファンドの「45日ルール」です。ヘッジファンドの解約は、決算日の45日前までに通知する必要があるため、それまでに解約が相次ぐことが考えられます。米ヘッジファンドは6月と12月決算が多くなっており、6月決算の45日前となる5月に「45日ルール」が高まるようです。
- 6月
- 3月決算企業の第1四半期決算です。3月ほどではありませんが、決算期の傾向がみられます。
- 7月
- アメリカでは、バカンスに入る前にボーナスで株を購入する投資家が多いことから、7月4日の独立記念日から9月第1月曜日のレイバー・デーまで、株が上昇しやすいと言われています。アメリカ株が買われて上昇すれば、日本株も上昇する傾向にあり、円安圧力が働きます。
- 8月
- 7月、8月はサマーバケーションを取る機関投資家が多いため、取引量が減少します。「夏枯れ相場」などと言われます。そして、取引量が減っている2月と8月に、アメリカでは国債大量償還の月を迎えます。受け取った利息や償還したアメリカ国債を日本円に換える動きがあるので、円高圧力になります。
- 9月
- 9月は、3月決算企業の中間決算です。3月ほどではありませんが、その他四半期に比べるとレパトリエーションの動きが大きくなります。
- 10月
- 10月は9月の流れが続きやすいと言われています。20年間の傾向としては、1年で最も円高になっているため、海外旅行に行くのなら10月がチャンスかもしれません。
- 11月
- 10月までの流れが終わって、一度ポジションを整理して、年末に向けての動きが始まります。5月同様に、12月決算ヘッジファンドの「45日ルール」による取引も起こります。
- 12月
- 12月は荒れやすいと言われています。欧米では長期のクリスマス休暇を取るので、市場参加者が減少します。また、アメリカでは12月決算企業が多くなるため、休暇前に利益を確定させて1年が終わったと考える投資家が多いようです。
- 閑散とした市場に手仕舞いの動きが入るわけですから、市場は荒れやすいと考えられます。アメリカの投資家は円などの外貨を売って米ドルを買いますので、ドル高要因となります。
アノマリーに頼りすぎるのは禁物だけど…
これらのアノマリーはあくまでも経験則なので、頼りすぎるのは禁物です。アノマリーの傾向が強い年もあれば、それとは全く別の動きをする年もあります。
ただ、20年間のデータでみる限り、1年間の中で円高になりやすい月と、円安になりやすい月があるというのは、知っておいたほうがいいでしょう。為替の動きとアノマリーを比較して、今年はアノマリーの動きにやや沿っていると思うなら、円高になりやすい時期に海外旅行の予定を立ててもいいでしょう。また、海外旅行に行けない場合は、円高の時期に外貨を購入するのも一案です。