なぜ動いた?変動理由を詳しく解説
1月6日発表「米国雇用統計」
失業率 | 非農業部門 雇用者数 |
|
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予想 | 4.7% | +17.8万人 |
結果 | 4.7% | +15.6万人 |
乖離 | 0% | -2.2万人 |
- 結果は速報値です。
詳しい解説
1. 発表前
12月14日に開催された米FOMC(連邦公開市場委員会)では、1年振りに追加利上げを決定。利上げ自体は市場予想通りであり、直後に発表された声明文での景況感やインフレ見通しも前回と大きな変更はなかった。しかしFOMCメンバーの2017年政策金利予測の中央値が3回の利上げ(9月時点では2回)へと上方修正されたことから、米長期金利が急上昇し、米ドル/円は翌15日に118円台半ばへと上昇した。
11月9日の米大統領選後から上昇に転じた米ドル/円は、わずか1ヶ月強で13円以上急騰したこともあり、その後は上昇が一服し、月末にかけてはドル高値圏で揉み合いとなった。ただしその間の『シカゴ先物市場』の円・ドル通貨先物の建玉を見ると、12月13日に63,429枚であった円売り・ドル買いポジション(1枚は12.5百万円)が、12月27日には87,009枚へと一段と拡大し、市場ではやや過熱感が漂い始めた。年明け最初の取引となった1月4日の東京市場で、米ドル/円は再び118円台半ばまで上昇したものの、海外市場で米長期金利が大幅に低下したことを受け、6日早朝には115円台前半へと反落。結局116円近辺で指標の発表を迎えることとなった。
事前予想は、「失業率」が4.7%(前月4.6%)、「非農業部門雇用者数」が+178千人(前月+178千人)、「平均時給」が+0.3%(前月▲0.1%)であった。
2. 発表直後
12月「失業率」は小幅に上昇し4.7%。「非農業部門雇用者数」は、事前予想を下回る前月比+156千人であったが、10・11月分が合わせて19千人上方修正されたため、おおむね事前予想通りの結果となった。一方、前月に鈍化した「平均時給」は、前月比+0.4%と事前予想を上回る大幅な上昇となった。総じてみると、年内に複数回の利上げを見込んでいる市場期待に沿った、堅調な内容であった。
「非農業部門雇用者数」が予想より弱かったことに反応し、発表直後米ドル/円は115円台後半に下落したが、過去分の上方修正や「平均時給」の伸びを受けて米長期金利(10年国債利回り)が上昇し、すぐに116円台を回復。その後116円台後半へとじり高に推移することとなった。
3. NYK Closeまで
当日のアジア時間早朝に115円台前半まで下落していた反動もあり、米ドル/円は日付が変わっても堅調な動きとなった。雇用統計の内容を好感し、米株市場が堅調推移となったこともあり、NYK時間午後には117円30銭台に上昇し、117円丁度近辺でCloseとなった。米長期金利(10年債利回り)は、2.42%へ上昇。NYKダウは一時2万ドル目前まで上昇し、19,963ドル(前日比+64ドル)でCloseとなった。
4. 「米ドル/円が強含みに推移したのはなぜ」
- 発表された雇用統計の内容が、年内複数回の利上げを支持するものであり、賃金データを受け米長期金利が上昇したことからUSDが主要通貨に対して買われる展開となった。
- 前日5日に117円台から115円台へと急落し、市場ではにわかショートポジション(USDの売り持ち)があったと見られ、買戻しが相場を押し上げたと考えられる。
5. 当面の見通し
- ①1月雇用統計
2016年の雇用者数は年間平均で+180千人/月となり、2015年(+229千人)より鈍化したが、現在のペースであれば心配する必要はないと思われる。一方、「平均時給」が大幅に上昇し注目されたが、賃金の上昇は労働時間の減少(平均時給=平均賃金÷労働時間)によるものであり、過大評価すべきでないと考える。
- ②米ドル/円動向
2017年の米ドル/円相場を見通すにあたり、20円幅での往復となった昨年(2016年)前半の動きを振り返ってみたい。
「オイルマネーの逆流」により年初から世界の株価が急落。中国経済への懸念に原油安が加わり、米ドル/円はいきなり4円程下落した。さらに1月末に日銀が「マイナス金利政策」を導入したことから、銀行減益と消費手控えが懸念され、わずか1ヶ月強で10円程度の下落となった。新年度入りした4月以降は、経常黒字を背景とした本邦輸出企業のドル売りが、計画為替レートの引下げにつながり、「英国民投票でEU離脱決定」というサプライズがあったものの、6月下旬に100円を割り込むこととなった。2017年の年初、今のところ市場は落ち着いた動きとなっている。米ドル/円と米国長期金利にはそれまでのやや過熱した動きの反動が見られるものの、急落にはつながっておらず、世界の株式市場は引続き堅調推移となっている。原油相場は昨年11月のOPEC減産合意により50ドル台で安定推移しており、日銀の「イールドカーブ・コントロール」により、本邦長期金利も落ち着いた動きとなっている。
いよいよ1月20日にトランプ米大統領が就任する。本稿執筆時点では、新大統領が打ち出す政策に関しては何も発表されていない。期待先行で上昇した相場が、梯子をはずされるようなことはないと考えるが、ここからトランプ相場第2幕が始まるというよりは、短期的には昨秋からのドル買い持ちポジションの利固めもしくはドル売り持ちポジション新規造成のタイミング待ちと考える。高値圏での揉み合いの時間が長引き、徐々に上値が重くなり、新年度入り辺りから、貿易の需給が効いて下落し始めるのではないだろうか。
昨秋以降のトランプ相場の転換となる場合にポイントとなるのは、①米当局からのドル高懸念(ドル安志向)発言、②株式需給に影響を与える原油価格動向、③(中国人民元相場の変調を含む)中国景気動向への懸念、④本邦経常黒字と米国貿易赤字、と考えている。①に関しては、12月FOMC議事要旨で、景気のダウンサイドリスクとしてドル高を挙げるなど、複数箇所でドル高への懸念を示しているが、トランプ大統領自らのドル安志向発言や、中国に対して為替操作国と認定する意向が示されるかが焦点。④は中期的な為替トレンドを探る上で、従来から筆者が最も注目しているものである。
一方、トランプ相場第2幕が始まる可能性は否定できないが、その場合は米株市場が減税政策を好感して上昇トレンドを維持するのに加え、2009年から始まった米景気拡張局面がイレギュラーに延長され、利上げペースが加速するような状況であろうが、現時点でその可能性はさほど高くはないと考える。- 予想レンジ:
- 113円50銭~118円50銭(向こう1ヶ月程度)
107円~120円(向こう半年程度)
- ※当内容は2017年1月11日現在の見解です。
- 執筆者:
- 株式会社じぶん銀行 ALM部長 島本薫
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