「支持線」として期待されていた移動平均線を価格が割り込んでしまうと、「もっと下がるかもしれない」という不安感が強まり、一気に下がる可能性があります。
単純移動平均線
単純移動平均線(以下、移動平均線)とは、株式相場・外国為替相場・金相場など様々な金融商品の動きを一つの流れとして捉えることができる、もっともポピュラーなテクニカル分析の手法の1つです。
移動平均線は、一定期間の平均価格を日々計算して出した「答え」を線でつないだものです。
例えば5日移動平均値は5日分の平均価格となります。そして、日々の平均価格を線でつないだものが5日移動平均線となります。
平均価格(ここでは終値の平均)を使用することで日中の大きな変動に惑わされることなく、現在の相場の方向性(トレンド)がどちらを向いているのか(上がっているのか、下がっているのか)を見ることができます。
現在の米ドルの対円レートを1米ドル=100円、5日移動平均線の水準を80円、25日移動平均線の水準を120円とします。平均価格が80円ですので、過去5日以内に米ドルを買っている投資家はプラス(評価益がでている)となっていますが、過去25日間で米ドルを買った投資家はマイナスが出ているわけです(あくまでも平均で考えています)。例えば、過去25日間で米ドルを買った投資家は、損益トントンの水準つまり120円まで戻れば、損益を確定したい心理状態となりがちです。こうした心理状態の投資家が増えると1米ドルは25日移動平均線の水準である120円より米ドル高円安には向かいにくくなると考えることができます。
移動平均線の使い方
支持線(サポートライン)と抵抗線(レジスタンスライン)
移動平均線は、投資家の心理状態が秘められていますので、しばしば重要な節目となります。
例えば、強い上昇が続いている場合、投資家の心理状態としては「できれば安いところで買いたい」と考えている人がほとんどでしょう。そのような心理状態のなか、過去に5日移動平均線まで下げると、決まって上昇する動きが頻繁に見られていたとすると、5日移動平均線まで我慢し、この水準で買いに動く人が多くなる傾向があります。
支持線(サポートライン)
抵抗線(レジスタンスライン)
つまり、結果的に、5日移動平均線が心理的な重要な節目となるわけです。こうした効果を持った移動平均線を「支持線(サポートライン)」と言います。一方、この逆で、その水準に達すると上昇が止まる効果を持った移動平均線を「抵抗線(レジスタンスライン)」と言います。
支持線や抵抗線を突き抜けた場合
「抵抗線」として意識されていた移動平均線を価格が越えると、「視界良好」といった見方につながり、上げ幅を拡大する可能性があります。
このように移動平均線は投資家の心理状態が凝縮された使い勝手のいいテクニカル指標と言えるでしょう。
期間の異なる移動平均線による現象(シグナル)
移動平均線には複数の期間のものを組み合わせることにより、重要なシグナルを判断することができます。
その一つに“ゴールデンクロス(買いシグナル)”と“デッドクロス(売りシグナル)”があります。
見分け方は期間の短い移動平均線が、期間の長い移動平均線を上に越えるとゴールデンクロス。反対に期間の短い移動平均線が、期間の長い移動平均線を下に抜けるとデッドクロスというシグナルになります。
ゴールデンクロスは下落のあとに出る現象です。
期間の長い移動平均線は、下落する以前から買っていた人が多いため、売りたいという重りがあるといえ、期間の短い移動平均線が越えてくるということは、この重りが除かれたということで、上がりやすくなります。
反対に、デッドクロスは上昇のあとに出る現象です。
これまで安心して買っていた人の価格を、短期間で割り込むことにより、下がりやすくなります。
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