[米国雇用統計] なぜ動いた?変動理由を詳しく解説

なぜ動いた?変動理由を詳しく解説

2月1日発表「米国雇用統計」

変動結果

発表直後からの10分間は↑円安ドル高に変動!
  • じぶん銀行FX米ドル/円10分足のチャートより抜粋
発表直前 10分後 変動幅
米ドル/円
為替レート
108.829円 108.987円 +0.158円
  • じぶん銀行FXレート
失業率 非農業部門
雇用者数
予想 3.9% +16.5万人
結果 4.0% +30.4万人
乖離 +0.1% +13.9万人
  • 結果は速報値です。

詳しい解説

米国1月雇用統計発表(2月1日22:30)前後の為替動向について

1. 発表前

正月3が日で東京市場が休場となる中、一時104円台後半まで急落し、波乱の幕開けとなった1月の米ドル/円相場は、悪化した投資家マインドの好転に伴い、一時110円に迫るなど戻り歩調を辿った。
昨年末にかけて金融市場を揺るがす要因の一つとなった、米国の今後の利上げについて、パウエルFRB(連邦準備制度)議長は、「利上げを小休止することが選択肢に」と市場に救いの手を差出した(1/4)。FRBのハト派姿勢への転換を市場は好感し、米株価は急反発。米ドル/円もジワリと反転し、月央には110円近辺まで回復した(1/18)。しかし米長短金利の低下によりドルの上値は重く、その後は月末まで109円台を中心とした狭い範囲での小動きが続いた。1月FOMC(連邦公開市場委員会 1/29-30開催)で「利上げの一時停止」を明確に示唆したことで、為替市場はドル安で反応。米ドル/円はレンジ相場の下限を抜け、108円台半ばまで下落したが、結局108円90銭近辺まで戻して指標の発表を迎えることとなった。
事前予想は、「失業率」が3.9%(前月3.9%)、「非農業部門雇用者数」が+165千人(前月+312千人)、「平均時給」が+0.3%(前月+0.4%)であった。

2. 発表直後

1月「失業率」は、前月より0.1ポイント悪化の4.0%。「非農業部門雇用者数」は、事前予想を大きく上回る前月比+304千人(11・12月分は70千人の下方修正)。「平均時給」は、事前予想を下回る前月比+0.1%であったが、前年比は+3.2%と、総じて強い内容であった。

発表直後の米ドル/円は、強い「非農業部門雇用者数」に反応して109円台へ上昇。「失業率」が悪化したことと、「平均時給」が前月比で事前予想を下回ったことから、108円90銭台へ下落する場面も見られたが、その後は109円台で小動きとなった。

3. NYK Closeまで

雇用統計の強い結果を受けながら、米ドル/円は109円10銭台で上値の重い展開となった。しかし日本時間午前0時に発表された、1月ISM(全米供給管理協会)製造業景況指数が、事前予想を大幅に上回ったことで、米長期金利(10年国債利回り)の上昇と共にドルは強含みとなり、109円50銭台まで上昇。ニューヨーク時間午後には動意が乏しくなったが、結局108円50銭前後でのクローズとなった。米長期金利は2.68%へ上昇。ニューヨークダウは25,063ドル(前日比+64ドル)へ上昇した。

4.「米ドル/円が上昇したのは何故」

  • この日に発表された米国経済指標(雇用統計、ISM製造業景況指数、消費者信頼感指数)が、いずれも前月を上回るものであり、米国経済に対する安心感が広がり、ドル買いに繋がったものと思われる。
  • 一方で、前日に108円台半ばへ下落した際、109円より下で造られたドル売りポジションが、まだ市場参加者の間で残っていたと見られ、ドルの買戻しによる上昇となったものと考える。

5. 当面の見通し

  • (Ⅰ)雇用統計

    1月の「失業率」が上昇(3.9%→4.0%)したのは、12月22日からの米政府機関の一部閉鎖による影響とみられる。一方、「非農業部門雇用者数」(前月比+304千人)は、その影響がほとんどなかったことを示している。12月分は大幅に下方修正(+312千人 → +222千人)されたが、それでも堅調な内容である。「平均時給」の前月比での伸びは小幅な上昇(+0.1%)に留まったが、前年比(+.3.2%)では上昇トレンドが継続していると考えられる。

  • (Ⅱ)米ドル/円動向

    先月の本稿では1~3月のポイントを、「米国経済指標の見極めに主眼を置き、悪化した投資家マインドが好転するかを見ていく」としたが、1月相場を振り返ってみると、米国株の急反発に見られる通り、投資家マインドが好転し始めたことは間違いないが、米国経済指標の一部においても、それを確認することができた。

    昨秋に発生した世界的な株価急落、金融市場のリスクオフへの動きに対応し、FRBは、①12月FOMCで、四半期に一度の利上げ継続とする「自動運転」が終了、今後の利上げは「指標次第」と方向転換したことを示唆。②パウエル議長が年初、「利上げ小休止の可能性」に言及し、「(世界成長が一段と鈍化すれば)柔軟、迅速に政策を展開」と発言。③1月FOMCでは、「(さらなる金融引き締めに関して)辛抱強く待つ余裕がある」と「利上げ一時停止を明確に示唆」した。現時点においては、FOMCメンバー全員がハト派となったことで、投資家マインドは一気に好転。米長短金利は、政策金利の年内据え置きと、来年は若干の利下げを織り込む水準にまで低下。米株価は6週連続高を示現することとなった。また、昨年12月時点では(景気減速でなく)景気後退が懸念される状況であったが、今年に入って発表された米国経済指標は、強弱まちまちであり、1月ISM景況感製造業指数の事前予想比上振れは、センチメントが改善していることの表れであろう。

    米国の株価が急回復する一方で、欧州と日本の株価は冴えない動きが続いている。景気の先行き不安がある状況で、流出した株式市場への資金再流入が期待しづらいのは当然であるが、米国株の回復に伴う資金配分により、徐々に水準訂正がなされるものと考えている。

    一方、同じく上値の重い状況が続いている米ドル/円はどうであろうか。2018年と比べると、利上げ期待の剥落と、米国への資金還流減税の期限切れは、投資家のドル買い意欲を減退させるものとなる。打ち手のない日銀の金融緩和政策には円安を誘引する力はなく、逆にインフレ期待の低下(実質金利の上昇)と消費増税の実施(可処分所得の減少)は、円高を促すものとなる。従って副作用を恐れ、追加緩和を躊躇する日銀に対しては、2016年7月に決定した「金融緩和の強化(ETF買入れ額の増加)」を再び実施することで、日本株投資マインド好転に伴う、円安効果を期待したいものである。

    米金利の低下・安定で上昇したのは、米株価だけでなく原油相場も然りである。昨年末には高値の半値近くとなる、40ドル台前半まで下落していたが、足下では50ドル台半ばまで回復してきている。昨年の価格上昇は、イラン経済制裁を背景とした思惑的な上昇であったため、今年も同様な上昇を期待することはできないが、低インフレ下での緩やかな原油価格の上昇は、景気マインドの改善とリスクオンムードに繋がるものである。ここ数ヶ月の本邦貿易収支は、輸出が振るわず、想定以上に貿易赤字が減少しない状況となっているが、原油価格が60ドル台乗せとなれば、貿易収支を通じた需給面からの円安要因となってくるであろう。

    3月末に向けての米ドル/円の下支え要因として、国内機関投資家のオープン外債投資(為替ヘッジなし)を挙げたい。2018年度下期の運用計画においては、112円割れの段階で、ある程度の手当を行ったものと思われるが、FRBの金融政策修正を受け、米国債投資環境は改善しており、ここからは米ドル/円の買い場を虎視眈々と狙っているものと考える。

    先月と比べると、米ドル/円の下落リスクは幾分減少したと考えられるが、未だ110円を明確に超えておらず、保合相場の域を出ていない。2月末を期限とする米中貿易交渉、3月29日とする英国のEU離脱期限と、2つのイベントを通過するまではトレンド形成とはならないのかも知れない。ただ現水準は、悪材料として織り込まれた後の戻り局面であり、好転した場合の反応の方が、悪化した場合よりも大きくなるものと考えている。

    予想レンジ:
    108円00銭~112円00銭(向こう1ヶ月程度)
    106円00銭~114円00銭(向こう半年程度)
  • 当内容は2019年2月5日現在の見解です。
執筆者:
株式会社じぶん銀行 ALM部長 島本薫

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