[米国雇用統計] なぜ動いた?変動理由を詳しく解説

なぜ動いた?変動理由を詳しく解説

7月6日発表「米国雇用統計」

変動結果

発表直後からの10分間は↓円高ドル安に変動!
  • じぶん銀行FX米ドル/円10分足のチャートより抜粋
発表直前 10分後 変動幅
米ドル/円
為替レート
110.613円 110.521円 -0.092円
  • じぶん銀行FXレート
失業率 非農業部門
雇用者数
予想 3.8% +19.5万人
結果 4.0% +21.3万人
乖離 +0.2% +1.8万人
  • 結果は速報値です。

詳しい解説

米国6月雇用統計発表(7月6日21:30)前後の為替動向について

1. 発表前

6月の米ドル/円相場は、5月に続いて小動きとなった。史上初となる、米朝首脳会談(12日)への期待から、ドルは月初めよりじり高となったが、月央に110円91銭をつけた後は、トランプ米大統領が「中国に対して一段の措置を取る必要がある*1」(19日)との声明を発表し、米中貿易戦争に発展する懸念が広がったことから、下落に転じた。下げ続ける新興国株価と、中国元安の動きが、下押し圧力となり、米ドル/円は25日に109円37銭まで下落。しかしながら、月末にかけては、主たる材料がない中でドルの買い戻しが強まり、29日には月間高値となる110円94銭まで上昇した。7月に入ってからも方向感なく110円台での揉み合いが続き、結局110円60銭近辺で、指標の発表を迎えることとなった。
事前予想は、「失業率」が3.8%(前月3.8%)、「非農業部門雇用者数」が+195千人(前月+223千人)、「平均時給」が+0.3%(前月+0.3%)であった。

  1. *1 USTR(米国通商代表部)に対して、「10%の追加関税を課すための、2,000億ドル相当の中国製品を特定するよう指示」

2. 発表直後

5月「失業率」は、前月より0.2%上昇した4.0%。「非農業部門雇用者数」は、事前予想を上回る前月比+213千人(4・5月分は合わせて37千人上方修正)。「平均時給」は、事前予想を下回る前月比+0.2%(前年比は+2.7%)と、強弱まちまちの内容ながら、おおむね良好であった。

「非農業部門雇用者数」は、事前予想を上回る堅調な内容であったが、再び4%台へ上昇した「失業率」と、前月比0.2%の伸びに留まった「平均時給」に反応し、米ドル/円は110円40銭台へ下落。しかし同時に発表された、米5月貿易収支が前月より改善されていたことが好感され、下げ幅は限定的なものとなった。その後も米ドル/円は、雇用統計発表後としては珍しく、110円40銭から60銭で極めて狭い範囲での小動きとなった。

3. NYK Closeまで

雇用統計はおおむね事前予想通りであったが、賃金の伸び悩みもあり、米ドル/円はじわりと軟化して、日付が変わる頃には一時110円40銭を割り込んだ。しかし賃金が加速せずに、米長期金利(10年国債利回り)が横ばい推移となったことを、米株式市場が好感し騰勢を強めると、110円55銭近辺まで押し戻された。ただその後は再び小動きとなり、結局110円45銭前後でクローズとなった。米長期金利(10年国債利回り)は2.82%台へ小幅に下落。ニューヨークダウは24,456ドル(前日比+99ドル)と反発した。

4.「米ドル/円が小動きとなったのはなぜ」

  • 雇用統計は事前予想の範囲内に留まり、驚きはなく、ポジションを一方向に傾ける材料にはならなかったと思われる。
  • また東京時間午後に、注目されていた「米中双方から追加関税の発動」が発表され、市場は次の一手を前に、様子見姿勢が強まったものと考える。

5. 当面の見通し

  • (Ⅰ)7月雇用統計

    6月の「失業率」は4.0%へ上昇したが、労働参加率が急上昇したことがその主因。前月急低下した反動ともいえ、「失業率」の低下トレンドが反転したとは考えづらい。一方で、最近のレンジ上限に近い水準で留まっている賃金データが、再び押し戻されるかは重要であり、来月以降の「平均時給」の伸びは注目される。

  • (Ⅱ)米ドル/円動向

    米国と中国は、北朝鮮情勢を巡っては良好な関係を保つ一方、通商政策では今月6日、米国が中国に対して25%の追加関税を発動すると、中国もすぐさま報復関税の発動を発表するなど、ヒートアップしている。こうした保護主義政策が、貿易取引を抑制し、「世界経済の成長の妨げとなる」との見方は徐々に強まっており、今月発表されるIMF(国際通貨基金)世界経済見通しでは、経済成長率が下方修正となる可能性が高い。6月FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨でも、景気判断に関する見方の中で、貿易摩擦を懸念する文言が記載されている。為替市場でも当然、円高・ドル安要因として捉えられているのだが、そのインパクトは徐々に和らいでいるようにうかがわれる。就任以来、貿易不均衡是正のためドル安を志向してきたトランプ政権が、鉄鋼とアルミニウムに輸入関税を課すことを決定した3月は、ドル下げ相場に勢いがあったが、その後、米中間での関税の掛け合いに発展した足下では、ドルはむしろ底堅い動きとなっている。筆者にはその明確な理由がわからないが、11月に中間選挙を控えるトランプ政権の支持率が全く下がっておらず、逆に上昇していることから、市場は秋に向けて一段のリスクオン相場(株高、ドル高、金利高)となることを意識し始めているのかもしれない。

    リスクオン相場につながるかの鍵を握るのが、中国市場の動きであろう。「米中貿易戦争」への漠然とした懸念は、6月に入ってからの大幅な中国元安と上海総合株価指数の急落に表れている。景気の方向性が逆向きの米中間では、その金利差縮小を背景に、ドル高・中国元安が進みやすいが、2015年8月のように「意図しない中国元安」が、最終的に『中国元切下げ』につながることが、最大のリスクであろう。中国人民銀行の易綱総裁は、3日に口先介入で中国元安をけん制したが、市場の思惑は収まっておらず、中国市場の動きには注意を払う必要があろう。

    こうした中で、本邦指標に気になるものがある。一つは、2日に発表された日銀短観(6月調査)で、大企業製造業の業況判断が、2四半期連続で悪化したこと。これは2012年12月以来、5年振りのことであり、アベノミクス政策下で初めてである。もっとも、同短観では、2018年度の設備投資計画が大幅上方修正され、ここ数年の中で最も高い計画となるなど、明るい面も見られた。二つ目は、個人消費の低迷が目立ってきたことで、総務省が発表する「家計調査(実質消費支出・前年比)」に続いて、日銀が発表する「消費活動指数(前月比)」もマイナスに転じた。10月の消費増税判断を前に、安倍政権としては、厳しい状況となっている。日銀は、7月の金融政策決定会合後に発表される「展望レポート」で、物価判断見通しを再点検する予定だが、追加緩和の思惑が高まるとは考えにくいが、少なくとも年初に盛り上がった出口政策論は、大幅に後退したと言わざるを得ない。これも足元で米ドル/円が底堅い動きをしている一つの理由であろう。

    トランプ大統領のツイート次第で、状況が一変することは難儀であるが、上述の通り、リスクオン相場となる兆候は、ユーロ/円や豪ドル/円といった、クロス/円相場にも見え始めている。今月は2ヶ月続いたレンジ相場が、上放れするかが焦点であろう。ただし、少し長い目で見れば、指標に表れ始めた本邦消費の減退は、マイナス金利政策導入時に学習した通り、輸入の減少につながり、それは将来の円高要因となるものでもある。したがって、秋に向けてドル上昇局面があれば、そこは戻り売りの好機となるのでは、と筆者は考えている。

    予想レンジ:
    108円00銭~113円00銭(向こう1ヶ月程度)
    105円00銭~113円00銭(向こう半年程度)
  • 当内容は2018年7月10日現在の見解です。
執筆者:
株式会社じぶん銀行 ALM部長 島本薫

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