[米国雇用統計] なぜ動いた?変動理由を詳しく解説

なぜ動いた?変動理由を詳しく解説

6月1日発表「米国雇用統計」

変動結果

発表直後からの10分間は↑円安ドル高に変動!
  • じぶん銀行FX米ドル/円10分足のチャートより抜粋
発表直前 10分後 変動幅
米ドル/円
為替レート
109.368円 109.493円 +0.125円
  • じぶん銀行FXレート
失業率 非農業部門
雇用者数
予想 3.9% +19.0万人
結果 3.8% +22.3万人
乖離 -0.1% +3.3万人
  • 結果は速報値です。

詳しい解説

米国5月雇用統計発表(6月1日21:30)前後の為替動向について

1. 発表前

5月の米ドル/円相場は、2日に110円04銭まで上昇したが、実需筋の売りに110円台の滞空時間は短く、4日に発表された4月米雇用統計が不芳な結果となり、108円台後半へ反落。その後何度か下値を探る動きとなったが、108円半ばには大口の買い注文があったと見られ、同水準を割り込むことなく反発に転じた。15日には米長期金利(10年国債利回りが)が上昇し3%を上抜けると、米ドル/円は売り注文をこなしながら110円を明確に上抜け。グローバルな株価上昇、原油価格の上昇と相俟って、市場ではドル買いが優勢となり、21日の東京市場では一時111円30銭台まで上昇した。しかしながら、米長期金利の上昇がピークアウトするに連れて、米ドル/円も上昇力を失い、利益確定売りに押される展開となった。110円を割り込むと、短期的なドル買い持ちポジションの整理が一気に進み、29日には4月雇用統計後の安値を下回り、一時108円割れ目前まで下落となった。この間、①米朝首脳会談の中止発表や、②イタリアの政治混迷、さらには③トランプ大統領の自動車関税に関する発言が、ドル下げを加速させることとなったが、5月相場の上げ、下げともにその根本は、米長期金利動向によるものと考えている。
月末にかけては、上記①、②の懸念が和らいだことで、結局米ドル/円は109円前半まで買い戻され、指標の発表を迎えることとなった。
事前予想は、失業率が3.9%(前月3.9%)、非農業部門雇用者数が+190千人(前月+164千人)、平均時給が+0.2%(前月+0.1%)であった。

2. 発表直後

5月「失業率」は前月より0.1%低下して3.8%。「非農業部門雇用者数」は、「事前予想」を上回る前月比+223千人(3・4月分は合わせて15千人上方修正)。「平均時給」も、前月比+0.3%(前年比は+2.7%)と事前予想を上回る、強い内容であった。

指標発表約1時間前に、トランプ大統領が『雇用統計の数値を楽しみにしている』とTwitterに投稿したこと*1から、米ドル/円は109円50銭近辺まで上昇して発表を迎えた。各項目とも予想を上回る強い内容を受け、米ドル/円は109円70銭台へ上昇。しかし、前日の安値(108円39銭)から1円以上、値を上げたこともあり、109円台後半では上値が重くなり、その後は同水準で揉み合いとなった。

  1. *1雇用統計などの米国経済指標は、事前にホワイトハウスに内容が伝えられるが、市場に大きな影響を与えることなどから、情報の取扱いは厳しく管理されている。大統領が事前に言及することは極めて異例。

3. NYK Closeまで

日本時間午後11時に発表された、ISM(Institute for Supply Management:供給管理協会)製造業景況指数が事前予想を上回り、米ドル/円は再び109円70銭台へ上昇したが、2.9%台前半へ強含んでいた米長期金利(10年国債利回り)が伸び悩むと、ドル買いは一服。日付が変わると、米ドル/円はじわりと下落し、109円50銭を割り込む場面も見られた。ただ、週末を控えたポジション調整の域に留まり、その後は動意に乏しくなり、結局109円50銭前後でCloseとなった。米長期金利(10年国債利回り)は2.90%台を回復。NYKダウは24,635ドル(前日比+219ドル)と大幅に上昇した。

4. 「米ドル/円が上昇後、横這い推移となったのはなぜ」

  • 指標発表後の上昇は、注目度の高い非農業部門雇用者数だけでなく、「失業率」「平均時給」ともに事前予想を上回ったことに反応したものと思われる。
  • 直近高値の111円40銭(5月21日)と、安値108円11銭(5月29日)の半値戻し*2水準となる109円75銭に近づいたことで、利益確定の売り物があり、一段の上昇には繋がらなかったと考える。
  1. *2米ドル/円相場に限らず、一般的に相場が大きく下落(上昇)した際には、その後、下落(上昇)幅の半分程度までは回復する、という市場の経験則のこと。半値とは、「半分の値段(価格)」を指す。

5. 当面の見通し

  • (Ⅰ)6月雇用統計

    5月の失業率は3.8%と前月からさらに低下し、1969年12月以来の低水準となった。自然失業率*3の観点からは説明しづらい水準にまで低下している。一方、毎月焦点となる平均時給は、最近のレンジ上限に近い水準まで上昇したが、ここから上抜けて加速するか、来月以降の動きが注目される。

    1. *3景気やインフレ率の影響を受けない長期的な失業率のこと。その水準にあれば、インフレを進行させることのない失業率。
  • (Ⅱ)米ドル/円動向

    筆者は、「米ドル/円の需給は上下で綱引き*4となっており、レンジ相場入りする可能性が高い」と前稿で伝えたが、5月相場は終わってみれば、108円~111円前半での往来となった。もっとも、米ドル/円の高値、安値近辺まで相場を動かした材料は、一段の上昇、下落を想起させるものであり、高値買い・安値売りを強いられた投資家も多かったであろう。レンジ相場の難しいところである。

    1. *4110円超えでは本邦実需筋のドル売り意欲、105円割れでは本邦資本筋のドル買い意欲が強まる状況。

    紆余曲折を経て、米朝首脳会談が6月12日に再び開催される運びとなった。拉致問題を抱える日本にとっては、北朝鮮への経済支援を含め、米国頼みの感があり、米ドル/円相場に与える影響は計りがたいが、段階的な交渉であれ、無から始まった歴史的第一歩であり、今後のリスクオンに繋がるものと考える。5月中旬同様、株高と原油高、米長期金利高を促せば、円安・ドル高の動きは強まろう。

    米長期金利に影響を与える、FOMC(米連邦公開市場委員会)が6月12-13日に開催される。市場では0.25%の追加利上げが予想されているが、5月の米長期金利上昇局面では、景気低迷に苦しむブラジル、ロシアが、米国への資金還流に起因した自国通貨安を背景に、利下げ停止に追い込まれるなど、新興国市場にネガティブな影響が見え始めており、中立的水準に近付きつつある米国の今後の利上げペース(スケジュール)が注目される。市場参加者が考えるより緩やかなものとなれば、米ドル/円相場はレンジ感が一層強まるものと思われる。

    欧米の長期金利が乱高下する中で、本邦長期金利は穏やかな動きとなった。2月の本稿では、年央までの注目点の一つとして、安倍首相の「脱デフレ宣言」を挙げた。9月の自民党総裁選前に、政府として「脱デフレ宣言」を示し、3選を確実にしたいと思われたからである。ところが、森友学園、加計学園問題で内閣支持率は、第2次安倍政権が発足して以来、最も低い39.0%(6月4日調べ)へと低下し、状況は一変している。加えて、政府は2019年10月に予定されている消費増税の軽減策試算や、財政健全化計画で、基礎的財政収支を黒字化する目標時期を、従来の計画より5年先送りした2025年度とする検討に入るなど、日銀金融政策の出口に向けた道のりは、一層険しいものとなっている。一方で、現在のマイナス金利政策は、じわりと金融機関の収益への重石となっており、追加緩和も困難な状況が続くこととなる。現状、米ドル/円相場には中立な状況であるが、出口政策への思惑が高まった年初に比べれば、円高圧力は和らいでいるのかも知れない。

    日本時間6月2日にカナダで開かれた、主要7ヶ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、米国の輸入関税措置に対し、6ヶ国が「全員一致の懸念や失望」との議長声明を出し、G7の結束力に不安が高まることとなった。通商問題は8-9日にカナダで開かれる主要7ヶ国首脳会議(G7サミット)に引き継がれ協議されるが、各国が対抗関税で応じる報復措置とるなど、貿易戦争の色合いが強まれば、ドル安圧力が強まることとなる。

    上述の通り、米ドル/円を取り巻く強弱材料はあるものの、いずれも決定打とはならず、前月同様、レンジ相場となるものと予想する。意外と思われるが、6月14日-7月15日で開催される、2018 FIFAワールドカップロシア大会期間中は、投資家の関心も高く、相場は様子見となる傾向がある。ただ、日本の基本的な需給として、9月中旬までは、実需筋のドル売りが先行し易い環境であり、ドルの上値は重いものと見ている。

    予想レンジ:
    107円50銭~111円50銭(向こう1ヶ月程度)
    104円00銭~112円00銭(向こう半年程度)
  • 当内容は2018年6月5日現在の見解です。
執筆者:
株式会社じぶん銀行 ALM部長 島本薫

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