[米国雇用統計] なぜ動いた?変動理由を詳しく解説

なぜ動いた?変動理由を詳しく解説

7月7日発表「米国雇用統計」

変動結果

発表直後からの10分間は↑円安ドル高に変動!
  • じぶん銀行FX米ドル/円10分足のチャートより抜粋
発表直前 10分後 変動幅
米ドル/円
為替レート
113.552円 113.782円 +0.230円
  • じぶん銀行FXレート
失業率 非農業部門
雇用者数
予想 4.3% +17.2万人
結果 4.4% +22.2万人
乖離 +0.1% +5万人
  • 結果は速報値です。

詳しい解説

1. 発表前

低調な米5月雇用統計の発表(6月2日)を受け、110円台へと値を下げた米ドル/円は、米長期金利の低下や日経平均株価の下落もあり6日には109円台前半へと続落。13-14日に開催された米FOMCでの追加利上げ発表直後には108円台へ下落する局面も見られたが、翌15日の海外市場で低下していた米長期金利(10年国債利回り)が反発に転じると、米ドル/円は大きく上昇し110円台を回復。月末にかけてはECB(欧州中央銀行)がテーパリング*1の開始を示唆したことを契機に欧州の長期金利が上昇。米長期金利が連れ高となったことから、日米金利差拡大への思惑が強まり、米ドル/円は騰勢を強め112円台へ上昇。7月に入ってからも米ドル/円は底堅い動きが続き、113円台後半で指標の発表を迎えることとなった。
事前予想は、「失業率」が4.3%(前月4.3%)、「非農業部門雇用者数」が+172千人(前月+138千人)、「平均時給」が+0.3%(前月+0.2%)であった。

  • *1 「tapering」:金融政策において、量的金融緩和策を縮小していくこと。

2. 発表直後

6月「失業率」は4.4%へと小幅上昇。注目度が高い「非農業部門雇用者数」は、事前予想を大きく上回る前月比+222千人(4・5月も合わせて45千人上方修正)と良好な内容であった。しかしながら「平均時給」は、事前予想を下回る前月比+0.2%と伸び悩んだ。

今回の雇用統計では、6月FOMC議事要旨で「直近の物価上昇鈍化は一時的な要因」とされ、賃金動向が最も注目されていたが、「平均時給」が事前予想を下回ったことから、米ドル/円は発表直後に113円50銭まで下落した。しかし「非農業部門雇用者数」の増加は予想を大きく上回り、過去2ヶ月分も大きく上方修正されたことが好感され、すぐに113円台後半へ押し戻され、その後は同水準で一進一退となった。

3. NYK Closeまで

日付が変わると米ドル/円は騰勢を強め、5月上旬以来となる114円台へ上昇し、一時114円18銭をつけた。しかし連日上昇していた米長期金利(10年国債利回り)の伸び悩みもあり、その後は113円台に押し戻され、113円90銭前後でCloseとなった。米長期金利(10年国債利回り)は2.39%に上昇。ニューヨークダウは21,414ドル(前日比+94ドル)へと上昇して取引終了となった。

4. 「米ドル/円が強含み推移となったのはなぜ」

  • 雇用統計は強弱まちまちであったが、総じて好調な内容であり、米ドル/円は直近の高値圏ではあったが、ドル売りを促すような材料にはならなかった。
  • 東京時間午前に発表された日銀の指値オペ*2により、日米金利差拡大との思惑から、雇用統計でドルが下落した局面では押し目買い、との見方が広がっていたと思われる。
  • *2 指値オペ:長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を行うにあたって、日銀が導入した新型のオペレーションで、日銀が指定する利回りで国債を無制限に買い入れるオペ。

5. 当面の見通し

  • (Ⅰ)7月雇用統計

    「失業率」は4ヶ月連続で低下した後の小幅上昇。今月は「労働参加率」が改善しており、先月とは逆に内容は悪くはない。「平均時給」の伸びは今月も緩やかで、インフレ期待を高める状況ではない。

  • (Ⅱ)米ドル/円動向

    米ドル/円は、4月中旬にかけて地政学的リスクの高まる局面での108円台前半への下落を経て、5月中旬に114円台を回復。しかし6月中旬にかけて米長期金利と原油価格が急低下する局面で109円台前半へ下落し、「二番底」を形成して、再び114円台へ乗せてきた。2度のリスクオフ局面を経ての上昇は、昨年6月の英国民投票によりEU離脱が決定され100円割れとなった後、約4ヶ月間100円~103円で底練りし、その後トランプ大統領誕生という想定外の材料で上昇したのと同程度の、テクニカル面では強い上昇サインである。
    ただし、昨秋と同様に米ドル/円が急上昇となるかについては不安な点もある。まずは、需給面である。昨秋の米ドル/円上昇の始まりは11月であり、すでに本邦輸出企業のドル売り需要が一巡し、逆に輸入企業のドル買い需要が始まる局面であった。また投機的ポジションと見られる、シカゴ通貨先物市場での米ドル/円ポジションが大幅にドル売り・円買いに傾いていたことがドルの買戻しを誘い、大きな調整のないまま急上昇につながった。今回は7月であり、本邦輸出企業のドル売りはこれから本格化する。日銀短観で発表された、大企業の事業計画の前提となっている2017年度上半期想定為替レートは、6月調査時点で108円36銭となっており、現水準からは売り圧力が強まることが想定される。またシカゴ通貨先物市場での米ドル/円ポジションは昨秋とは逆に大幅にドル買い・円売りに傾いており、これも今後のドル上昇局面で売り圧力が強まる要因と考えられる。

    次に、足下の「円安」の要因といわれている、欧州発でのグローバルな長期金利上昇が、いつまで続くかということである。日銀が7日にオファーした指値オペにより、本邦長期金利上昇の抑制姿勢を明確にしたことで円が一段安となったが、材料として驚きはなく、むしろ今回の米雇用統計では、6月FOMCで示された「物価上昇鈍化は一時的」との見方が揺らいできており、米長期金利上昇がピークアウトする可能性に注意すべきであろう。

    本邦貿易収支は黒字ではあるがその勢いが昨年ほどではないことや、ここまでの為替推移から本邦企業業績が好調であると推測されることなど、年末に向けて米ドル/円および本邦株価が上昇する環境が整いつつあると考えられる。ただ短期的には上述の通り、115円を上回る場面ではドルの上値が重くなり、夏の間は保合い推移となるものと予想する。

    予想レンジ:
    112.50円~115.50円(向こう1ヶ月程度)
    108.50円~118.50円(向こう半年程度)
  • 当内容は2017年7月11日現在の見解です。
執筆者:
株式会社じぶん銀行 ALM部長 島本薫

本画面に掲載されている情報(以下、本情報)は、情報提供のみを目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資の最終決定はすべてお客さまご自身でご判断くださいますようお願いいたします。

本情報は信頼できる情報源から得た情報に基づき作成されていますが、auじぶん銀行(以下、当行)はその情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また、過去の結果が必ずしも将来の結果を暗示するものではありません。

本情報は執筆者の見解に基づき作成されたものであり、当行の統一された見解ではありません。本情報を使用することにより生ずるいかなる種類の損失についても当行は責任を負いません。

なお、当資料の無断複製、複写、転送はご遠慮ください。当行の都合により、本情報の全部または一部を予告なしに変更することがありますので、予めご了承ください。また、本情報は著作物であり、著作権法により保護されております。当行の書面による許可なく複製又は第三者への配布をすることはできません。

「外貨預金」「じぶん銀行FX」には元本割れや投資金額を超える損失が発生するリスクがあります。また、手数料がかかる場合があるため、各商品の重要事項を必ずご確認ください。

  • 外貨預金には為替変動リスクがあります。外貨預金の預入時(円→外貨)より払戻時(外貨→円)の為替相場が円高になる場合、または為替相場にまったく変動がない場合でも、往復の為替手数料(1米ドルあたり6銭、1ユーロまたは1ランドあたり16銭、1豪ドルあたり28銭、1中国元または100ウォンあたり20銭、1NZドルあたり26銭、1レアルあたり80銭)がかかるため、払戻時の円換算額が、預入時の円貨額を下回る(円貨ベースで元本割れとなる)可能性があります。
  • 外貨預金は預金保険制度の対象外です。
  • 中国元、レアル、ウォン、ランドは各政府の通貨政策や市場環境の変化などにより、流動性の低下、市場機能の低下および規模の縮小の可能性があり、為替レートが大幅に変動するリスクやお取引を停止する場合があります。中国元、レアル、ウォン、ランドのお取引にあたっては、これらのリスクがある点をご理解のうえ、お取引ください。
  • 詳しくは、外貨預金の詳細および契約締結前交付書面を必ずご確認いただき、お取引ください。

  • じぶん銀行FXは元本保証されたものではなく、「外国為替」を売買する取引であることから、外国為替相場(売買対象通貨の価格)の変動などにより損失が生じる可能性があります。また、投資金額を超える損失を被る可能性があります。
  • じぶん銀行FXとは、一定額の「証拠金」を預けて、投資金額に比べて大きな金額の「外国為替」を売買できる取引です(外貨預金とは異なります)。取引維持のために必要な証拠金額は、建玉の建値の4%です(新規注文時に必要な証拠金額は、新規建玉の建値の5%)。
  • じぶん銀行FXにおいて、当行が提示する売値と買値の間には差額(スプレッド)があります。流動性が著しく低下する時間帯や経済指標発表時など、相場状況によってはスプレッドが拡大する可能性があります。
  • スワップポイント(金利差調整額)をお受取りまたはお支払いいただきます。スワップポイントは、一定期間固定されたものではなく、取引対象通貨の金利情勢などに応じて変動し、受取りから支払いに転じることがあります。
  • 必ず重要事項をご確認いただき、十分にご理解のうえ、お取引ください。
商号等 auじぶん銀行株式会社
登録金融機関 関東財務局長(登金)第652号
加入協会 日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会
じぶん銀行FXにおける重要事項

auじぶん銀行株式会社