[米国雇用統計] なぜ動いた?変動理由を詳しく解説

なぜ動いた?変動理由を詳しく解説

4月7日発表「米国雇用統計」

変動結果

発表直後からの10分間は↓円高ドル安に変動!
  • じぶん銀行FX米ドル/円10分足のチャートより抜粋
発表直前 10分後 変動幅
米ドル/円
為替レート
110.614円 110.414円 -0.200円
  • じぶん銀行FXレート
失業率 非農業部門
雇用者数
予想 4.7% +18.0万人
結果 4.5% +9.8万人
乖離 -0.2% -8.2万人
  • 結果は速報値です。

詳しい解説

1. 発表前

3月FOMC(3月14-15日開催)での追加利上げを織り込む形で、米ドル/円は115円台半ばまで上昇したものの、利上げ発表後は米長期金利の低下と歩調を合わせ112円台へと下落し、FOMC前に上昇した分をすべて吐き出す形となった。3月17-18日に行われたG20*1の声明文では、従来と異なり為替に関する部分が第一段落に記載され、貿易についても『過度の世界的な不均衡を縮小』の文言が記された。これを受けて為替政策が再び注目されることとなり、21日の海外市場では年初来安値となる111円40銭台へと下落。さらに米上院が「医療保険制度改革法案(オバマケア)」の採決を行わず、代替法案を撤回し事実上廃案とすると、トランプ政権の財政政策への期待が揺らぎ、27日には110円台前半まで下落した。その後、月末にかけていったん112円台前半まで買い戻されるも、110円台後半で指標の発表を迎えることとなった。
事前予想は、「失業率」が4.7%(前月4.7%)、「非農業部門雇用者数」が+180千人(前月+235千人)、「平均時給」が+0.2%(前月+0.2%)であった。

  • *1G20財務大臣・中央銀行総裁会議。G20はG7(加、仏、独、伊、日、英、米)に、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行を加えた20ヶ国・地域。会議にはIMF(国際通貨基金)や世界銀行も加わる。

2. 発表直後

3月「失業率」は4.5%へと急低下。一方注目度が高い「非農業部門雇用者数」は、事前予想を大幅に下回る前月比+98千人、1・2月分も合わせて38千人下方修正される弱い結果となった。また「平均時給」は、前月比+0.2%と事前予想通りであった。

発表直後米ドル/円は、予想を大きく下回る「非農業部門雇用者数」に反応し、110円台前半へと下落。同日の東京時間の安値近辺での攻防となったが、下値を攻めきれずに反発し、発表前の水準を回復。110円台後半でしばし揉み合うも、いったん低下した米長期金利(10年国債利回り)が反転上昇すると、ドル買い戻しが優勢となり、111円近辺まで押し戻された。

3. NYK Closeまで

日付が変わっても、米ドル/円は111円を超えられず、110円台後半での揉み合いが続いた。しかし米長期金利がじわじわと上昇する中、ロンドン市場Close後に111円台に乗せると一段高となり、111円30銭台まで上昇。その後は取引閑散となり111円10銭前後でCloseとなった。米長期金利(10年国債利回り)は2.38%へと上昇。ニューヨークダウは小幅に下落(前日比▲6ドル)してCloseとなった。

4. 「米ドル/円が上昇したのはなぜ」

  • 「非農業部門雇用者数」は弱かったものの、1-2月の暖冬要因による増加の反動、との見方が広がったこと。また「失業率」が大幅に低下したことが注目され、米長期金利が発表直後の低下から上昇につながったことが考えられる。
  • 同日の東京時間帯に報じられた「米軍によるシリア空爆」により、市場参加者のポジションがややドル売りに傾いていたところに、雇用統計発表でドルの下値を攻めきれず、あらためて110円台前半の底堅さを確認することとなり、ドルの買い戻しを迫られたものと思われる。

5. 当面の見通し

  • (Ⅰ)4月雇用統計

    3月分の「非農業部門雇用者数」減少は、暖冬要因で1、2月大きく上昇した反動によるものと見られ、4月分でトレンドの変化なのかを確認することとなる。一方で、「失業率」の低下はFOMCの予測を上回るペースであり、こちらも反動となる可能性があろう。「平均時給」は予想通りの伸びが続いているが、緩やかであり過熱感はなく、インフレ期待を高める状況ではない。

  • (Ⅱ)米ドル/円動向

    2017年第1四半期の注目イベントであった、日米首脳会談(2月10-11日)、トランプ大統領議会演説(2月28日)、FOMC(3月14-15日)が終了した現在、市場の注目はシリア・北朝鮮といった地政学リスクと、仏大統領選に移っている。どちらも短期的な市場かく乱要因にとどまると考えており、中期的な米ドル/円相場を見る上でより大事なのは、①米国金融政策の行方と②本邦経常収支動向であろう。

    • 米国金融政策の行方
      3月FOMCで注目された、金利の先行きを示すドット・チャート*2が、追加利上げ実施にもかかわらず、昨年12月時点と変更がなかったことは、市場参加者が考える以上にハト派である印象を与えた。米長期金利(10年国債利回り)がFOMC後わずか2週間で30bp近く低下したことは、その証左であろう。もっともその後に発表されたFOMC議事要旨では、バランスシート政策*3に関し、再投資の停止*4(資産規模の縮小)は今年終盤に開始、停止の対象には米国債を含める、とするタカ派な内容も見られた。
      バランスシート政策への着手が今年12月とすれば、2017年に3回(あと2回)とされる追加利上げが行われるのは6月と9月と考えるのが順当であろう。年初からここまでの動きで、米長期金利が再投資停止前に急騰する可能性は低いが、一段と急低下することも考えにくく、今回と同様FOMC前にやや強含み、その後軟化する展開が繰り返すと思われる。しかし再投資停止後(12月以降)は、過剰流動性相場*5で史上最高値を更新してきた米株価の下落と米長期金利上昇が同時進行する、教科書的な金利引き締め局面の動きになるであろうと考えている。ちなみに3月FOMC議事要旨では、「一部メンバーは株価が非常に高いと判断」と将来の株価下落を和らげるための警報、とも思える議論がなされていることが示された。
    • 本邦経常収支動向
      財務省が4月10日発表した本邦2月経常収支(速報)は、32ヶ月連続での黒字となり、黒字額は2月としては過去最大となった。東日本大震災による原発停止でエネルギー輸入が急拡大し、2011年から5年間続いた貿易赤字が、原発再稼働や原油価格低下等により2016年から黒字に転換しており、経常収支は今後さらに拡大していくであろう。実需を背景としたドル売り・円買い需給は中期的なドル安・円高を示唆している。マイナス金利政策が継続している本邦では、依然として長期金利がゼロ%近辺であり、生命保険会社や年金(GPIF)からの外債投資は高水準が維持されよう。これ自体はドルの下支え要因ではあるが、一度ドル安・円高に振れればヘッジのドル売り・円買いが一気に出回り、さらなるドル安・円高を呼ぶ可能性を秘めたものであることには注意が必要である。また、4月日銀短観で示された大企業製造業の2017年上半期想定為替レートは108円45銭であり、この水準であればそれほど警戒すべきものではなかろう。
      • *2FOMCメンバーによる政策金利予測。メンバーが適切と考えるFF(フェデラル・ファンド)金利誘導目標の水準を、「点(ドット)」の分布で示したもの。ドット分布の中央値で、今後の利上げ回数を推測する。
      • *3これまでの金融緩和・量的緩和局面では、FRBが市場から債券を買い入れる(対価として資金を供給)ことでFRBのバランスシート【貸借対照表:資産、負債、純資産の状態を表した計表】規模が膨らんだ。2014年10月末の量的緩和政策の終了とともに、新規の債券買い入れは停止されたが、市場に出回る資金が急激に減少して、市場が混乱するのを回避するため、FRBは保有している債券が満期償還した際には、再投資(同額の債券を市場から購入し資金供給を続ける)を行い、バランスシートの規模を維持してきた。今後政策金利が正常化するとともに再投資を停止することで、市場に出回る資金を徐々に回収(結果としてFRBのバランスシート規模は縮小)し、引き締め効果を浸透させていく。
      • *4これまでは再投資の停止開始時期は2018年3月、再投資が停止となる対象債券はMBS【Mortgage Backed Security:住宅ローンなどの不動産担保融資の債権を裏付け(担保)として発行される証券。米国では大部分が政府系機関により発行されており、米国債と並ぶ高い信用力がある】 のみ、と見られていた。
      • *5金融緩和・量的緩和で貸出需要以上の大量のお金(流動性)が市場に供給され、行き場のない資金が株式や商品などの投資・投機市場に流れ込んで、資産価格を上昇させること。バブルの要因ともいわれている。

    北朝鮮リスクという想定できない事象や、フランス大統領選の結果いかんでEU離脱の可能性が高まることに対して、市場参加者がリスク回避(株売りや円買い)という反応になっていることを説明することは易しい。安全資産である債券の価格がグローバルに上昇していることも米ドル/円の上値を重くしている要因であろう。特に前者の事象は過去の経験が参考にならず、市場の雰囲気を悪くしている感がある。短期的には米ドル/円は110円を割れる可能性が相応に高いこともあり、予想レンジは下げることとするが、6月FOMCを前にして、一方的なドル安・円高にはならずに保合いの展開を予想している。

    予想レンジ:
    107.80円~112.80円(向こう1ヶ月程度)
    105.00円~115.00円(向こう半年程度)
  • 当内容は2017年4月11日現在の見解です。
執筆者:
株式会社じぶん銀行 ALM部長 島本薫

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